参院本会議で12月24日、政治改革関連3法案に関し、討論・採決が行われ、賛成多数で可決・成立しました。小西洋之議員が、賛成討論を行いました。討論原稿案は以下の通りです。

政治改革三法案賛成討論

2024年12月24日
立憲民主・社民・無所属 小西洋之

 会派を代表し、議案の三法案に賛成の立場から討論をいたします。

 この度の改革は、自民党の裏金パーティー事件に怒り、大きな不信を抱く、国民の皆さんの総選挙の投票の力によって実現されたものです。

 衆院における歴史的な与党過半数割れと我々参議院での論戦によって、自民党が野党7党案を丸のみし、政策活動費の全面廃止に至ったことは、議会政治の進展としても誠に画期的なことであります。

 また、政治資金監視委員会、両院合同協議会は、総務省の形式審査権のみの制度に実質調査権を導入する、大改革というべきものです。

 一方で、時の国会多数派による政治活動の自由への侵害を絶対に排除する必要があり、参議院の審議において、合同協議会の国政調査の権能の範囲、監視委員会の実質調査権の目的等が確認されたことは極めて重要です。
 
 その他、立憲法案にも盛り込まれていた、収支報告書のオンライン提出、データベース化等々の措置も画期的な改革であります。
 これらが3案に賛成する主な理由です
 
 しかし、総選挙の民意を裏切り、大きく取り残された抜本改革があります。企業団体献金の廃止であります。

 石破総理は、裏金パーティー事件は収支の不記載の問題であり、企業団体献金の問題ではないと繰り返していますが、反省ゼロの国民を馬鹿にした詭弁と言わなければなりません。

 企業団体の莫大な資金力なくして一晩で億円単位のパーティー券を売り上げることも、派閥内あるいは派閥間でその営業合戦を行うこともできません。
 企業団体献金の廃止こそ、自民党の裏金パーティー事件に対する政治改革の本丸中の本丸と言わなければなりません。

 そもそも、企業団体献金は、リクルート事件後の平成6年政治改革の中で廃止と決まっていました。
 このことは、当時の細川首相が、規正法附則10条の趣旨について、「全面禁止は法律の付則で『5年後に見直す』とした。『激変緩和』の意味」と報道インタビューに答え、更に、当時の河野自民党総裁においても、「公費助成が実現したら企業献金は本当は廃止しなきゃ絶対におかしい。しかも、激変緩和のため5年後に見直すと法律の附則に書いた」と衆議院の議長オーラルヒストリー事業において同様の趣旨説明をしていることからも明らかです。

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 石破首相はこの間、附則10条の条文を棒読みし企業団体献金の廃止と日本語で書いてないと強弁していますが、戦後最大の政治改革を担った細川首相と河野総裁の条文解釈を石破総理が否定することは、議会政治と法の支配への冒涜であり、歴史の改ざんと言わなければなりません。

 そもそも、「企業団体献金が悪で個人献金が善であるという立場には立っておりません」などととんちんかんな石破構文に終始する石破総理は、平成6年改革の本旨を全く理解できていません。選挙と政治資金の両輪の大改革の目的は「政策本位、政党本位の政治の実現」です。
 にもかかわらず、政策を歪めるが故に廃止とされた企業団体献金を、派閥に代わる政治の担い手とされた政党が政党支部を含め大量に受領できる現行制度は、平成6年改革の本旨に真っ向から反することは明々白々です。

 だからこそ、平成6年の政治改革関連法案の基盤となった第8次選挙制度審議会答申においては、「相当規模の公的助成」とともに「政党の政治資金も個人の拠出により支えられるようになることが望ましい」と明記され、その趣旨が、附則10条の「政治資金の個人による拠出」の文言に結実していたのであります。

 実は、こうした平成6年改革の方針を体現し、個人献金の税額控除の拡充とセットで企業団体献金の廃止に真剣に取り組んだ責任政党があります。かつての民主党です。
 民主党政治改革本部は 2011年3月10日の総会で企業団体献金禁止法案等の骨子を了承し、当時、事務局次長として法案の立案等を担っていた私が、予算成立後の国会提出に向けて、翌3月11日、参議院決算委員会の第一委員会室を離れ衆議院の院内で長妻昭事務総長に条文案等を説明していた正にその時に、東日本大震災が発災したのであります。もし、未曾有の国難がなければ、企業団体献金の廃止等の実現によって日本の政治は根本的な変容を遂げていたはずなのであります。

 こうした歴史的な使命感に加え、裏金パーティー事件に対する我々立憲会派の国民への責任感からすれば、石破総理の政治改革への姿勢は情けないの一言に尽きるのであります。

 衆院で、企業団体献金の禁止は憲法21条に抵触すると発言した石破総理は、杉尾秀哉議員の予算委質疑であっという間に答弁修正に追い込まれました。
 しかし、実は、そもそも、平成22年の参議院の枝野官房長官答弁において、企業・団体献金の全面禁止は「現行憲法に照らして許されないものでは必ずしもない」と明言されています。特別委員会では、この官房長官答弁とこの度衆院で提出された政府統一見解が法的に同じ内容であること、さらに、これらは共に 1970年大法廷判決の法理と整合するものと答弁されました。
 要するに、「公共の福祉による制約として、必要性や合理性が認められれば企業団体献金の全面禁止は憲法上可能」というのが一貫した政府見解なのであります。

 さらに、石破総理は、二言目には「禁止よりも公開と述べ、その根拠として、規正法1条、2条の目的、基本理念で「国民の批判と監視のための収支の公開」が謳われていると述べています。しかし、これも言語道断の詭弁です。
 規正法1条の目的規定の定めは、「政治資金の収支の公開並びに政治資金の授受の規正を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保する」であり、総務省選挙部長はこれらを「大きな二本の柱」と答弁しました。

 皆さま、お分かりでしょうか。石破総理は、この臨時国会を通じて一貫して、規正法の目的の一つだけをもっともらしく述べて、「企業団体献金の廃止という政治資金の授受の規正による政治活動の公正の確保」という規正法のもう一つの柱の議論から逃げ回っていたのです。

 もはや、ここに至っては、石破総理こそが「改革の抵抗勢力」、派閥の裏金パーティー事件に対する政治改革における最大の「抵抗勢力」と言わなければなりません。

 いずれにしても、参議院の審議によって、石破構文の詭弁は全て論破され、企業団体献金の廃止に当たっての憲法上、法律上の問題は何もないことを申し上げさせて頂きます。

 あるのは、この議場に集う、我々政治家の歴史的な使命、重大な責任のみであります。

 平成6年政治改革は1994年、本年は2024年、ちょうど30年であります。
 思うに、この間のまさに「失われた30年」を日本にもたらした政治面の最大の原因こそが自民党型 派閥政治の弊害であります。利権、世襲、政務三役の派閥人事といったあからさまな弊害が支配する愚かな政治は先進国で日本だけです。しかし、これらの弊害は、派閥の政治資金パーティーの開催も含め、法律上は全く手つかずで残っています。

 「失われた30年」の間に日本は国際競争力が38位に、昨日も1人当たり名目GDPが韓国に初めて抜かれ22位となりました。世界最大の高齢化、人口減などの国難に直面する日本において、われわれ政治家は、まだ「経済一流、政治三流」と言えた平成の政治改革を超越し、せめて政治が一流となって欲しい、政治の力で生活、人生、社会の困難を救って欲しいと切望する国民の願いに応える真の政治改革を実現しなければなりません。

 真の「政策本位、政党本位の政治」を実現するためには、利権政治を根絶する企業団体献金の廃止に加え、政党助成法を改正し、選挙区を含めた世襲を禁止し、国会議員の立法、行政監督、行政経営(政務三役)の専門能力を錬成する政党システム等を導入する必要があります。

 新年のわが参議院が、「企業団体献金禁止法案について、精力的に議論を行い、令和6年度末までに結論を得る」との申合せを行った衆議院の取組を指をくわえて眺めていることは断じて許されません。

 特別委員会では、衆院と同様の企業団体献金の廃止の議論と自民党型派閥政治などの「失われた30年」の弊害を打破する真の政治改革の議論の実行について、懸命に委員長にお願いさせていただきました。

 良識の府の真価を、党派を超えて国民国家のために体現し、真の政治改革を来年の通常国会で実現する決意を、議場の先生方に心よりお願い申し上げて私の討論とさせて頂きます。