憲法改正の手続きを定める改正国民投票法が6月11日に成立しました。これにより改憲論議が進むのではないかと懸念する声もありますが、投票のルールの公正さが担保されていない状態で、改憲論議、ましてや発議などという話にはなりません。皆さんから寄せられるよくある疑問をQ&Aでまとめました。

質問)そもそも与党案のどこが問題なの?

 今回の改正法原案は、2016年に改正された公職選挙法の規定にある、「共通投票所制度」の創設や「洋上投票」の対象拡大など7項目を、憲法改正の手続きに関する国民投票にも適用するものです。参加しやすい環境を整えるのを目的とするものであり、その「中身」自体は改正すべきものです。
 一方で、有料広告規制、テレビCMやネットCMなどについての規制が全くなく、本当に公平公正な国民投票につながるのかという問題がありました。現在の国民投票法が作られた当時も有料広告規制の議論はありましたが、当時の国会では日本民間放送連盟(民放連)が量的なものも含め自主規制をすると答弁したことから、現行法には含まれませんでした。
 しかしながら、民放連は2019年、CM量の自主規制に反対する立場を表明。(CM放映に関する)自主規制を前提とした法律だったのにもかかわらず、その規制がなくなった国民投票法は欠陥法であると言わざるを得ません。私たちは、まずはこの欠陥を補わなければいけないと3年間主張し続けてきましたが、自民党はこれに応じませんでした。

質問)立憲民主党の修正案はどんな内容?

 立憲民主党の修正案は、2019年の改正公職選挙法により追加された投票環境の向上に関する(1)商業施設や駅などで投票できる「共通投票所」の創設(2)期日前投票の宣誓書にある事由(理由)の中に学業や旅行、病気の他に「天災または悪天候により投票所に到達することが困難である」ことの追加適――の2項目を適用することや、公平公正な国民投票を実施するための広告規制や、外国人による寄付の規制を求めています。今回の修正案は、スポットCMの煽情的な影響力や、インターネット広告も含めCMに投じる資金の多少が投票結果に与える影響等を踏まえ、「法律の施行後3年を目途に、国民投票運動等のための広告放送やインターネット有料広告の制限、運動資金規正、インターネットの適正利用の確保を図るための方策その他の国民投票の公平及び公正を確保するための事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるもの」としています。

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質問)国民投票法の改正に賛成したのはなぜ?

 立憲民主党はこれまで、資金力のある政党や団体がCMを大量に流せば、情報量の面で公平さを欠くとして、CMの総量規制などを主張してきました。今回、立憲民主党の修正案に基づき、国民投票運動中のCMやインターネット広告、運動資金の規制をめぐり「法施行後3年をめどに検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」と付則に明記しました。この「附則」は、「附帯決議(※)」とは異なり、3年以内にこのCM規制などについて議論し、結論を得て法的な措置を取ることを明記している法的な拘束力がある規定です。今後与野党で具体的な規制の在り方を検討することになります。
 一方で、衆院の任期を前にこのまま放っておけば、原案のまま強行採決され、CM規制等についての議論は全くされずに、今後の検討や法制上の措置も何ら担保されずに改憲論議が進んでいくという恐れがありました。今回修正案を盛りこみ、与党も賛成したことで一定の歯止めをかけることができました。
法律の規定のなかにCM規制が必要だとしっかり明記させ、自民党もこれに賛成した意義は大きいと考えています。

質問)国民投票法改正によって憲法改正の議論が進むことになるのでは?

 今回の改正法成立を受け、今後は附則にあるCMをどのように規制するかが優先課題となります。重要なのは、できるだけ多くの人が投票できるようにする利便性の向上と、投票の歪みをなくす質の担保です。これでようやく投票の公正さについての議論がむしろ進む。ルールの公正性に関しての結論が出ない以上、憲法改正の発議はさせません。

※法律の規定は「本則」と「附則」から構成され、附則は法律の一部。