女性が動いて政治を変える! 日本同様、コロナ禍に見舞われた国際社会を見渡すと、台湾をはじめ、ドイツやデンマークなどで女性首脳が感染症対策で成果をあげています。こうした海外での女性政治家の活躍の背景や日本への示唆について、辻元清美副代表に解説してもらうとともに、数カ月以内にある衆院総選挙に向けて、候補予定者にメッセージを聞きました。

女性の共感力はアドバンテージ

 女性には、危機の時代を乗り切るアドバンテージがあると思います。危機の中には、少子高齢化や地球温暖化、温暖化に起因する自然災害、そして感染症などさまざまあります。こうした時代を乗り切るには、「共感と参画の政治」が必要だとかねてから言ってきました。これは時代の危機感を共有し、また危機で苦しむ人たちとともに歩み、幅広く市民に参画してもらう政治スタイルです。

 高度成長期は、トップダウンで意思決定し、男性が働き女性が家族を守るというモデルが広く採用されてきました。しかし危機の時代では、それでは上手くいかないだろうと考えていた矢先、新型コロナウイルス感染症が発生しました。

 この危機に際してニュージーランドのアーダーン首相や台湾の蔡英文総統らの言動に注目し、感染症対策にとどまらず、彼女たちの自伝なども読みました。そうすると、私と共通するのですが、NPOで市民とともにさまざまな活動に取り組んでいたことを知りました。その素地の上に彼女たちの現在の政治スタイルが形成されているのです。私が訴えてきた「共感と参画の政治」と相通じ、同じような方向性を持っています。

 一方、「俺についてこい」式のリーダーシップを強調する政治は、新型コロナ感染症対策で十分に成果をあげていません。米国のトランプ前大統領やブラジルのボルソナロ大統領、インドのモディ首相らの政治スタイルでは、今の危機を乗り切ることが難しいのです。必要なのは、市民とともに一緒に考えて、皆の力を借りて乗り切る政治だと思います。

 では女性の共感力は本当に高いのでしょうか。男性に比べると、はるかに割合が高いと思います。例えば、結婚して氏が変わることは、本当に不自由です。私の母校の同窓会名簿を見ても、旧姓も書かれていないと、誰だか分かりません。こうした不自由さを大半の男性は、生まれてから感じてこなかったのではないでしょうか。ところが多くの女性は、差別を受けたり、不利益をこうむったり、悔しい思いをしています。危機の時代では、格差が広がったり、危機によって傷つけられたり、弱い立場に追いやられたりする人たちが出てきます。こうした境遇に置かれている人たちに共感できるのは女性の方が当然多くなります。

男女共同参画は経済にもプラスと立証

 女性が元首や首相に選ばれる国々には、総じて2つの特徴があります。1つは政治への信頼が高く、投票率が高いこと。もう1つは、社会保障制度が非常に進んでいること。社会保障の制度が進むと、子育てをしながら女性が働き続けやすいので、ダブルインカムになります。例えば、一家の片方が働くよりも、低成長時代で給与が低くなったとしても、男性25万円、女性25万円の収入があれば、合計で50万円になります。

 2つの収入源があり、年金制度に信頼性が持てて将来の安心が得られれば、「旅行に行こう」「おいしいものを食べよう」となり、消費が回るわけです。それで経済が活性化し、かつ税収増につながります。社会で男女が平等に扱われ、子育てと仕事の両立ができる制度を整えることは経済にもプラスであることが立証されています。こうした国へと転換することは、今の日本の閉塞感や経済停滞を打破していく大きな起爆剤になると思います。

 そのためには、意思決定の場に女性を増やさなければいけません。国会、例えば衆院では、女性議員が1割しかいません。3割を超えれば、ずいぶん風景が変わってくるだろうと思います。私の取り組みを紹介します。選挙区内に2つの自治体があります。そのうちの1つ、大阪府の島本町で4月18日、町議会議員選挙がありました。その結果、同議会は男女同数を達成しました。こうしたチャレンジを全国各地で見せていくことが大事だと思います。

 この島本町には子育て中の人たちが住みやすいからと、たくさん転居してきています。税収も増えていると聞きます。これは女性議員が多いことが関係していると思います。先の東京都議選でも変化がありました。都議会の3分の1が女性議員になったのです。これからの都議会、そして東京がどう変わるかに期待しています。

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やっとインターナショナル・スタンダードの入り口へ

 実は東京五輪・パラリンピックによる前向きな変化もありました。組織委員会会長だった森喜朗元総理の発言によって、日本で今も横行する女性蔑視や女性差別が国際水準からみて許されるものではないことがはっきりしたことです。そして障がい者へのいじめや差別も許されない。歴史認識では戦争被害者に対して、いかなる理由があろうとも揶揄してはならない。LGBTへの差別も駄目だと。国際社会では当たり前だったことが、日本では曖昧のままきていたわけですが、五輪によって醜い実情が露呈しました。これによって、女性差別や障がい者差別について、これまで口をつぐんでいた人たちや当事者が発言をし始めました。日本で五輪開催とならなければ、もっと遅れていたかもしれないので、思わぬ変化をもたらしました。

 女性のあらゆる権利を保障して、女性が自分らしく生きられる社会をつくることは多様性の尊重と軌を一にします。オリンピックの聖火リレーの最終ランナーがテニス女子の大坂なおみさんでした。彼女のお母さんは日本人、お父さんはハイチ系米国人で多様性を象徴しています。つい最近まで、大阪さんのようなダブルの人ではなくて、日本の代表なのだから「純粋な日本人を」という発想でしたが、今回はそうなりませんでした。日本を支配してきた男性優位のピラミッド型社会から多様な人たちが活躍できる社会へと変革が始まっています。

 「オリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」と規定されています。五輪を東京に誘致したことによって、ジェンダー平等が大きく前に進んだという成果があったと思います。これでやっとインターナショナル・スタンダードの入り口に立てたという状況ではないでしょうか。

女性政治家を増やし日本社会を変えていく

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 現在の日本政治を変革していく上で立憲民主党が果たすべき役割は、女性の候補者を増やし、政治理念を見える形で具体化することだと思います。これによって、多くの女性たちに政治への門を開いていきます。先の東京都議選で初当選した武蔵野市選挙区の五十嵐えりさんは、中学卒業後に働きだし、その後ロースクールに通い弁護士になり、女性やしんどい人たちを応援したいと立候補しました。大田区で戦い当選した斉藤りえさんは、聴覚障がいを持ち、シングルマザーで子どもを育てています。こうした多様なバックグランドの持ち主を擁立し、政治の場に送り込んでいくことを私たちは実践しています。それと同時に、あらゆる女性たちが自分らしく生きられる政策を政治の場で実現していくことも大切です。立憲民主党はこの両輪が重要だと考えます。

選挙運動も共感と参画で進める

 選挙に当たって、3つの鍵があります。1つ目は、自分の言葉で思いを伝えることです。誰かが書いた原稿を読んだり、党の政策を覚え込んで話したりするのではなく、自分の言葉で表現する。ビラなども誰かに作ってもらったり、党の政策を貼り付けたりするだけではなく自分の言葉で書く。自分の言葉で書いたビラや自分の言葉で訴える演説は、必ず伝わると思います。私も毎週ビラを作っていますが、今も自分で文章を書き、全部作っています。枝野幸男代表も「自分でビラを作れない人は、当選しない」と同じことを言っています。

 2つ目は、一見これは何の意味があるのだろうと思うことをやり続けることです。今でも私は、誰も聞いていないようなところで街頭演説をしていますが、たまたま見た人が広げてくれたりします。その積み重ねが当選への道だと思います。

 3つ目は、仲間を大事にするということです。事務所のスタッフやボランティア、党職員は部下ではなく、仲間です。国民の命と暮らしを守ると決めたら、その目的を達成するために一緒に歩む同志ですから上下関係はありません。

 私の選挙では、極力みんなが対等に話をする場をつくり選挙運動を進めています。自ら共感と参画の選挙をできなくて、「共感と参画の政治」をどう実現できるでしょうか。労力をかけても、その方がみんなが力を発揮し、勝利につながると思うのです。

 以上の3つです。「自分の言葉で話す」「無駄だと思うこともやり続ける」「共感と参画の選挙をする。議員、秘書やスタッフ、職員は、部下ではなく対等」ということです。さらに女性で政治家を目指す人には、「小さな勇気を出そう」と伝えたい。私もそうでしたが、いきなり大きな勇気を出せませんから、「小さな勇気を出してみよう」「一歩踏み出そう」というメッセージを送ります。