参院本会議で5月15日、政府提出の「出入国管理及び難民認定法及び出入国管理及び難民認定法案」(入管法等の一部を改正する法律案)に対し、立憲民主・無所属の会派を代表して打越さく良議員が質問しました。本法案は、在留許可手数料の大幅な引き上げ(永住許可で30万円等) や、日本版電子渡航認証(JESTA)の導入 、入管行政のDX推進などが盛り込まれています。

 打越議員は(1)政策理念と基本法の必要性(2)在留許可手数料の大幅引き上げ(3) 社会的・経済的影響(4)人権保護と国際義務(5)JESTAの運用--などの論点を取り上げ、「必要なのは排除ではなく包摂」だと訴えました。

 打越議員の質問原稿は以下の通りです。

令和8年5月15日

「出入国管理及び難民認定法及び出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律の一部を改正する法律案」に対する質問

立憲民主・無所属 打越さく良


 立憲民主・無所属の打越さく良です。
 私は、会派を代表し、ただいま議題となりました「出入国管理及び難民認定法及び出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律の一部を改正する法律案」について、質問を行います。

 歴代自民党政権は必要な時は外国人労働者を受け入れて「労働力」として使いまわし、都合が悪くなると規制を厳しくして追い返したりしてきました。こうした「ご都合主義」が在留資格を極めて複雑怪奇なものにしてしまい、自治体や企業、学校などの現場に混乱を来してきたのです。

 その上で人手不足がすでに深刻化しつつあったにも関わらず、「人手は足りているが国際貢献策」と誤魔化して、外国人労働者技能実習制度等が導入されました。その結果、制度的な欠陥から人権侵害や労働法制違反が繰り返され、国際社会から「現代の奴隷制度」との批判を受けてきました。

 昨年全国知事会は「地方における人材不足は深刻」であるとして、外国人受入れ環境の整備等を実現するため、多文化共生施策実施の根幹となる基本法の策定を求めています。ところが、本法案は、そうした方向に逆行し、日本を「選ばれない国」にし、人手不足の地方の持続可能性をさらに危うくするのではありませんか。
 立ち止まって、まず増加する在留外国人と日本人が対等な構成員として人権を尊重し合い、地域社会で共生する環境を整備するため、国や自治体の責務・基本的理念を定めるため、立憲民主党が提案した多文化共生社会基本法を策定すべきではないですか。
 法務大臣の見解を求めます。

 そもそも、政府が外国人労働者の受入れのためのきちんとした法整備を怠ってきたため、専門職在留資格の技術・人文知識・国際や、経営管理等に混乱を来していることへの反省はないのでしょうか、法務大臣、如何ですか。

 本法案は、現行法で定められている在留許可手数料の上限である1万円に段階を設け、在留資格の変更許可と在留期間の更新許可で10倍の10万円、永住許可では30倍の30万円と大幅に引き上げ、在留資格の変更・更新や永住許可にかかる手数料を大幅に引き上げるものです。

 いまやおよそ413万人もの在留外国人は、地域を共に支える生活者であり、納税者であり、社会の構成員です。にもかかわらず、合法的に日本で暮らし、納税し、地域を支えている人々に、外国籍であるという理由で、不法残留者対策のコストまで負担させる。
 共に社会を支える存在としてではなく、「外部の存在」と決めつける、偏見と分断に基づく制度設計なのではありませんか。法務大臣の見解を求めます。

 手数料の「応益的要素・政策的要素」が極めて曖昧になっている背景に、昨年末に財務省が作成した「令和8年度予算のポイント」における「外国人関連手数料等の引き上げと関連施策の充実」があります。
 そこには、法務省の在留関係手数料が「他施策の財源確保にも寄与」と明記されています。報道によれば、財務省は増収分の一部を、高校無償化やガソリン税旧暫定税率廃止の財源に充てる考えとされています。また高校授業料無償化の拡大に必要な4,000億円のうち、3,000億円程度を外国人負担増で手当するという構想があるとも報道されています。
財務大臣、そのようにお考えなのですか。

 「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」の総合的対応策には、「受益者負担の観点から、外国人に相応の負担を求める」とあります。ところが、財務省幹部は「外国人の負担増ならやりやすい」と述べたと報じられています。財務大臣、排外主義的な空気に乗じて負担増を行おうとしているのではありませんか。

 今回の手数料引上げについては、外国人本人だけでなく、受け入れ企業等への影響も深刻です。
 在留資格更新などの費用を、企業や団体が負担しているケースは少なくありません。しかも、外国人材を必要としているのは、人手不足に直面する地方の中小企業です。
 外国人材によって事業継続に活路を見出してきた地域企業にさらなる負担を課すことにどのような影響分析を行ったのか、法務大臣、お答えください。

 入管庁が今回の引上げ理由として挙げる施策には、「難民等の適切かつ迅速な保護」も含まれるのですか。
 しかし、難民認定と保護は、日本が難民条約批准国として果たすべき国際法上の義務です。法務大臣、それを「外国人管理に要する費用」として在留外国人に転嫁するのは、不合理ではありませんか。

 在留手数料の引上げで最も深刻な影響を受けるのは、在留資格更新の頻度が高い難民申請者です。
 難民認定審査には平均2年10カ月を要し、5年、10年近く待たされている例もあります。迫害から逃れてきた人たちにとって、在留手数料はすでに重い負担です。
 現在でも支払い困難な難民申請者がいる中、さらに手数料を引き上げれば、本人の意思に反して非正規滞在に追い込まれかねません。政府は「不法滞在者ゼロプラン」を掲げていますが、逆に非正規滞在者を増やす結果になります。法務大臣、本末転倒ではありませんか。

 そもそも「不法滞在者ゼロプラン」そのものが、現在の在留外国人に対する排外主義的な風潮を蔓延・拡大させた安倍政権以降の「官製ヘイト」政策によるものであり、本法案がそれを更に助長するものであることは論を俟ちません。

 さらに、生活が立ち行かず帰国を余儀なくされるならば、迫害の危険がある国へ難民を送還してはならないというノン・ルフールマン原則との関係でも重大な問題が生じます。外務大臣の見解を伺います。

 その上で法務大臣、難民申請者及び難民については、「諸外国と同種の手数料」というのであれば、手数料を課すべきではないのではありませんか。

 衆議院法務委員会において入管庁は、「国民の税金で主として賄われている外国人施策」について、「今回の増収があった場合、日本人の負担と入れ替え、外国人に負担していただく」と驚きの答弁をしました。
 しかし、在留外国人もまた、所得税、住民税、消費税、年金、健康保険料等を支払い、地域社会を支えています。在留外国人を負担を担う生活者としてではなく、もっぱら「受益者」としてのみ扱うのであれば、それは事実認識として誤っているだけでなく、共生社会に逆行する発想ではありませんか。
 法務大臣の認識を伺います。

 本法案について入管庁は、「在留許可手数料の額が無限定とならないようにするため、実費のほか、応益的要素・政策的要素を勘案する」と説明します。
 しかし、曖昧な勘案要素により逆に恣意的で「無限定」な積算が可能になってしまいます。1981年改正で現在の上限額1万円が規定された際には「実費を中心に勘案して定められたもの」とされていました。
 法務大臣、手数料は本来「対価的負担」として考えるべきであり、「応益的要素・政策的要素」を持ち込むべきではないのではありませんか。

 入管庁は、「諸外国の同種の手数料」に比べ日本は低いため「欧米並み」に引き上げると説明します。しかし、滞在許可に要する費用について入管庁が作成した資料を見ても、実際に高額なのは英米の専門的就労資格であり、韓国、フランス、イタリア、ドイツなどは、専門的就労資格でも今回改正水準より低い。さらに、私の調査では、なんと英米では本人ではなく事業主負担です。全く同種ではないものを引き合いにした、悪質な印象操作です。

 しかも、難民申請中の方が滞在許可を受けるために要する費用等については資料が示されていませんでした。私の求めに応じて、入管庁はようやく5月12日付で資料を出しました。その資料にはなんと欧州においては難民申請者の在留期間の更新手数料も難民認定申請にかかる手数料の納付も必要ないと記載されていました。「諸外国との比較」を根拠にするとしながら、都合の悪いものは隠していたのです。
 法務大臣、不十分な比較を根拠として法改正を進めることは拙速ではありませんか。

 ところで、短期滞在で日本を訪れる観光客と、日本で働き、学び、家庭を築き、地域社会の一員として暮らしている在留外国人とは、まったく異なる存在です。
 しかし入管庁が今回の引上げ理由として挙げる施策には、「デジタル技術の活用による出入国在留管理行政のDX推進」や、「不法滞在者ゼロプランの強力な推進」などが含まれています。

 政府はこれまで「観光立国」を掲げ、ビザ免除対象国・地域を拡大してきました。その結果、一部地域でオーバーツーリズムなどの問題も生じています。
 しかし、その負担やコストを、日本で日々暮らしている在留外国人に転嫁するのは不合理ではありませんか。法務大臣、如何ですか。

 JESTAについても伺います。衆議院での質疑では「虚偽の事実を申し立てたりする人はなかなか入りにくくなる」との答弁がありました。しかし、例えば、本国で不当な迫害を受けた人が、本名では出国ができないため他人名義でJESTAを利用したという場合は、そもそも「受け入れない」という判断をする制度になるのでしょうか。その場合、難民条約批准国としての責任は果たせなくなるのではないでしょうか。外務大臣に伺います。

 近年、不当な差別に苦しめられているクルド人の多くは査証免除国であるトルコ国籍です。例えば仮にJESTA制度によってクルド人というだけで入国が難しくなる事態になれば、まさに国連人種差別撤廃委員会が一般的勧告36で危惧したAIによるレイシャルプロファイリングが現実化することになります。万が一にもこのような誤った運用になってはなりません。法務大臣、私たち立憲民主党などが提出した難民等保護法案のように、独立性専門性を持つ第三者委員会を設置して難民認定の判断を任せるとともに、JESTA制度の運用についても第三者機関による検証を可能にすべきではありませんか。

 そもそも外国人の受け入れによって利益を得ているのは、日本社会全体です。

 介護、物流、建設、農業、大学教育など、多くの分野が外国人の存在によって支えられています。
 在留管理費用を「受益者負担」の名のもとに外国人へ集中的に転嫁することは、本当に適切なのでしょうか。

 DV被害を受けながらも、日本で子どもを育てるために在留資格の維持に必死だった外国籍女性の相談を、私自身弁護士として受けてきました。
 また、迫害から逃れて日本に助けを求め、難民申請を続けながら、不安定な在留資格更新を繰り返さざるを得ない方々とも向き合ってきました。
 そうした方々にとって大変なダメージとなる法案です。

 在留資格の更新とは、その人が日本で安全に暮らし続けられるか、家族と共に生きられるかという、生活そのものに関わる問題です。
 そもそも本法案は、DV被害者、難民申請者、外国人労働者、低所得世帯、雇用主など、当事者の声を十分に聴かずに提出されたのではありませんか。
 法務大臣、この法案は手続的正当性を欠いているのではありませんか。

 必要なのは排除ではなく包摂です。
 冒頭申し上げた多文化共生社会基本法のほか、差別禁止法制、難民認定の第三者機関化など、国際水準に沿った制度改革こそ必要です。

 ところが、本法案は、そうした方向に逆行する重大な問題を抱えています。
 これらの疑問に具体的かつ検証可能な形で真摯に答えられないのであれば、本法案はいったん撤回すべきであり、当事者の声に基づき根本から策定し直すべきことを強く求めて質問を終わります。

20260515参院本会議入管法改正案代表質問・打越さく良議員

【参院本会議】入管法改正案に対する質問原稿 打越さく良議員(2026年5月15日).pdf