参院本会議で国家情報会議設置法案に対する代表質問が行われ、立憲民主・無所属の会派から、小島とも子議員が登壇。高市政権が目指す「インテリジェンス体制」の危うさを指摘し、個人のプライバシー保護と人権保障の観点から政府の姿勢を厳しくただしました。予定原稿は以下のとおりです。
国家情報会議設置法案(全文)
2026年5月8日
立憲民主・無所属 小島とも子
立憲民主・無所属の小島とも子です。会派を代表し、ただいま議題となりました国家情報会議設置法案について質問いたします。
本法律案は、形式的に本則14条・附則5条と比較的短く、中身については内閣官房にある内閣情報会議を国家情報会議として内閣に置く、また内閣情報調査室を国家情報局に格上げするという一見シンプルな内容です。しかしながら昨年10月、高市政権発足時の『自由民主党・日本維新の会 連立政権合意書』によると、本法律案の後ろには、いわゆる「スパイ防止法」や「対外情報庁」といった、我が国の戦後安全保障のあり方を変容させうる極めて重要な政策テーマが続きます。その皮切りとなる本法律案について、果たして広く国民の間で共通の理解や納得が得られるのか。人権保障の観点から、どこまで安心感をもてるのか。こうした点が真の意味で賛否の分かれ目になると考え、以下、全ての質問を高市総理に伺います。
まず、本法律案の必要性と効果についてお尋ねします。
冷戦終結後の我が国を取り巻く国際安全保障の環境は、北朝鮮による核・弾道ミサイルの開発、米国における同時多発テロ、隣国中国の経済力・軍事力の著しい増強、また、昨今のロシアによるウクライナ侵攻、イランを中心に緊迫する中東情勢など、極めて厳しくなる一方です。そうした中、日本のインテリジェンス能力、すなわち、国家としての情報収集や分析能力の強化は、常に重要な政策課題であり続けてきました。とはいえ、今回の国家情報会議・国家情報局の設置案は、高市政権の誕生により急きょ浮上したように見え、唐突感をぬぐえません。
政府として、どのような背景の中、いかなる必要性から、そしてなぜ今、本法律案を提出したのでしょうか。
また、本法律案が成立すると、具体的にどのような効果が期待できるとお考えでしょうか。丁寧かつ具体的な説明を求めます。
次に、高市政権の目指すインテリジェンス体制の理念について伺います。
政府のインテリジェンス機能とは、国の進む先に、リスクの芽があればそれを摘み取り、落とし穴があればそれを回避する、また、相互不信や利益衝突による対立の深刻化を避け、対話による外交努力を下支えするための道具であるべきです。
総理もご存じのように、日本国憲法の三大原則とは、①国民主権、②基本的人権の尊重、そして③平和主義であります。本法律案で設置される国家情報会議とは、日本国憲法の三大原則の一つ、平和主義の精神に則った、我が国がこれまで貫いてきた専守防衛の基本方針と整合性のある安全保障政策を支える組織、と考えてよいのでしょうか。明確な答弁を求めます。
続きまして、本法律案によって、国の情報機関に新たな調査権限や捜査権限などが与えられるか、について質問します。
本法律案は、内閣に閣僚級の司令塔組織を置くことによって、政府内部の情報の集約や、総合的な分析及び評価、また、内閣の立場から行う企画立案・総合調整のための体制を整備するものと伺っております。つまり、インテリジェンスの領域にも存在するタテ割り行政の弊害を正し、情報の一元化・集約化を通して、誤差の少ない情報を効果的につなぐことで、より有益な分析、いわば解像度の高いビッグピクチャーを捉えようとするもの、と私なりに解釈しています。今回はそれが狙いであり、調査や捜査の権限は新たに付与しない。例えば、警察庁や公安調査庁、防衛省や外務省、また現在、内閣官房に置かれている内閣情報調査室の後継として新設予定の国家情報局には、現在与えられている情報収集の権限に追加・拡大されるものは何もない、そのように考えてよろしいでしょうか。
また仮に、新しい調査権限や捜査権限が付与されなくても、政府がインテリジェンス全般を活発化させようとしていることに違いはなく、そうである以上は、「杞憂だ」=心配する必要のないことを心配しているだけ、と切り捨てるのではなく、政府の秘密の活動によって、人権が侵害されるかもしれない、侵害されても気づくことすらできないのでは、という国民の深刻な懸念や不安に、政府はしっかりとこたえる責務があります。
本法律案の運用にあたっては、個人情報やプライバシーの保護などの人権保障について、政府として原理原則の明確化、情報機関に対する監査・監督の枠組構築、また記録保存など事後検証を可能とする仕組みの設置などを検討するお考えはあるのでしょうか。
衆議院内閣委員会において、木原官房長官は「プライバシーの権利は不当に侵害してはならない。これは憲法に規定されている大前提」と答弁しています。官房長官の答弁同様、総理もそれが「大前提」と本気で考えるのならば、個人情報やプライバシーの保護など人権保障の仕組みや、政府の説明責任として、例えば、定期的な国会報告、情報監視審査会の権限強化など、本法律案に追加・修正を行うべきではないでしょうか。
少なくとも、情報活動の中長期方針を記載する文書、仮称「国家情報戦略」の中に、人権保障の仕組みや政府の説明責任を盛り込むことは最低限必要と考えますが、総理はどのようにお考えか。その理由もあわせてご説明ください。
続いて、本法律案の条文から読み取れる、ある懸念についてお尋ねします。
本法律案第2条の「テロリズム」は、同条「重要情報活動」に関連する「重要な国政」例示であるとの位置づけであり、もう一つの調査審議事項である「外国情報活動への対処」には「外国の利益を図る目的で行われるもの」という限定が付されています。これらのことから「テロリズム」には他国のテロ組織によるものだけでなく、日本人テロリストや日本のテロ組織によるものも含まれると読み取れます。従って、テロを行う疑いのある、日本人や日本人により構成される団体は、国家情報会議や国家情報局に関心を寄せられ、監視対象とされる可能性がある、との理解で間違いないでしょうか。
また、総理は衆議院において「外国勢力によるものでない、我が国の市民団体等の活動については、調査審議事項にはなりません」と答弁する一方、別の答弁で「デモが過激化して一般の方々への危害が及ぶ事態に発展するかどうか、また、ある主張をするデモ隊とその反対の主張をするデモ隊が衝突して危険な状態が生じる可能性があるかどうかといった観点から関心を寄せることはあり得る」としています。先ほどの質問の「テロ」と、この「デモ」とでは、音声こそ似ていますが内容は全く別物です。しかし、総理の答弁も併せて考えると、結論として、テロでもデモでも政府当局が懸念や疑念を抱けば、それを行う日本人に関心を寄せ、監視対象とすることはあり得る、との理解で正しいでしょうか。
さらに、当局が関心を寄せる・監視対象とする判断基準や、そうした行動を起こすための手順や手続きは一体どのようになっているのでしょうか。例えば、任意捜査を除き、警察や検察の捜査では、捜査機関から令状請求を裁判官が受け、審査の上、相当な理由があると認めれば許可し、書面を発付してから捜査機関の捜査が始まります。これは憲法の基本原理である「基本的人権の尊重」に則って、不当な人権侵害を防ぐために、事前に裁判官のチェックを受ける「令状主義」に基づくものです。これと比べると、インテリジェンス活動の判断基準や、その活動の手順・手続きについては、当局が恣意的に行っている疑いがぬぐえません。その合理性や適法性、客観性などは、どう担保されているのでしょうか。具体的かつ論理的な答弁を求めます。
世界では今、SNSやAIを悪用した世論操作などの影響工作は、単なるフェイク情報の拡散にとどまらず、民主主義の中核的プロセス、すなわち意思の形成や、国内の選挙など統治の正当性そのものを侵食する、安全保障上、最も深刻なリスクの一つといわれています。この10年、主だった事例を振り返るだけでも、2016年のアメリカ大統領選挙におけるロシア系組織の介入、2020年・2024年の台湾総統選挙における中国系とされる工作活動など、枚挙にいとまがありません。我が国もこれまで、他国同様、外国からの影響工作、例えば、SNSなどを通じた選挙への介入や社会の分断をねらった工作などを受けたことがあるのでしょうか。
また政府として、国外からの世論操作など影響工作について、どの程度深刻な安全保障上の脅威として認識しているのでしょうか。
さらにこうした影響工作を実際に受けた場合、本法律案の「外国情報活動への対処」として、どのような対処を行う考えなのか。基本的・概略的な説明を求めます。
ここまでは、影響工作を受けた場合についてお尋ねしましたが、今度は、影響工作を行うことについてお尋ねします。
こうした「影響工作」は、何も外国からに限っている訳ではありません。昨今の国内の選挙においても、特定の勢力を勝たせようとしたり、あるいは対抗する勢力を不利な状況に導くために、SNSやAIなどを悪用して世論を誘導する行為が行われている疑いが指摘されています。
このようなSNSなどを使って政治に影響力を与えるとか、選挙結果を歪めようとする行為は本法案に明記されている「重要情報活動」と言えるのでしょうか?また、国内で行われているこうした行為は国家情報会議、あるいは国家情報局での調査審議の対象となるのでしょうか。
そうした中で、高市総理周辺が関わったとされる、ある重大な疑惑が浮上しています。一部メディアの報道によると、先の自民党総裁選や衆議院議員総選挙において、高市総理陣営が総裁選の他の候補や、総選挙の野党候補を誹謗中傷する動画を大量に作成し、SNSに大量に投稿・拡散していたのではないか、との疑いです。
事実だとすれば選挙の正当性が疑われ、民主政治の根幹をも揺るがしかねない重大な問題と考えますが、本件で関与が指摘される地元の公設第一秘書ら関係者に確認した上で、こうした事実があったのか否か。正確なところをしっかりとご答弁下さい。
また、高市総理は衆議院の審議において「現役の総理大臣を勝たせる目的として情勢等を調査するようなことは、これまでも行っていないと聞いていますし、今後も行うことはありません」とか、「スキャンダルについて、専らマスコミや野党の追及をかわすといった目的だけで情報活動をおこなうということは、現在も想定されませんし、今後も行われることはない、それはあってはならないと考えております」など、選挙や政治一般について、立派で潔癖な、あるべき姿勢を貫く答弁を繰り返されてきました。
ならば、政権の維持や党派的利益のために情報機関を利用すること。例えば、選挙で総理・与党側を勝たせる目的で情勢を調査するとか、政権内に発生したスキャンダルの追及に関して、野党やマスコミの動向を探るなど、いわば時の政権によるインテリジェンスの政治化は許されないのではないですか。この点についても明確な答弁を求めます。
最後になりますが、本法律案のテーマはインテリジェンス機能の強化です。そして、その上位にあるテーマが「平和」です。「平和」と対になる言葉は「戦争」。命を理不尽に奪う戦争は、疑いもなく究極の人権侵害です。しかし究極の人権侵害を防ぐために、個人情報やプライバシー保護の人権保障を犠牲にしてよいという立場に私は立ちません。「命が大切にされると同時に、一人ひとりの人権がしっかりと守られる社会の実現」、ここにいらっしゃるすべての方々と、この目標を共有することができると信じ、私の質問を終わります。
ご清聴、ありがとうございました。

