立憲民主党は4月24日、水俣病に関する健康調査の見直しを求め、環境大臣に申し入れ(下記PDF参照)を行いました。環境省は中田宏副大臣が対応しました。

 環境省は2024年末に「メチル水銀による健康影響にかかる疫学調査の在り方に関する検討会」を設置し、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」第37条に規定されている健康調査について、専門的見地から検討を行うとしています。

 しかし、検討会の開催は3回にとどまった上、これまで被害者団体が「検査に時間がかかり大規模な調査に適さない」と繰り返し指摘してきた脳磁計等での調査に了承を与えただけのものになりました。脳磁計等での調査は、すでに実施可能な医療機関が限られており、調査精度が必ずしも高くないなどの問題が指摘されています。

 また、2024年5月1日の水俣病・慰霊の日に開催された被害者との意見交換の場でのマイク切り以降、国会審議において被害者との真摯(しんし)な対話の必要性を繰り返し指摘してきたにもかかわらず、この検討会では被害者の声を聴く機会が設けられませんでした。

 以上の問題意識から、立憲民主党は健康調査の見直しを求め、具体的に以下の2点を環境大臣に要請しました。

(1)これ以上被害者の声を無視することなく、検討会を改めて設置し、被害者が求める健康調査について、十分に被害者から聞き取り、意見交換をすること
(2)真に被害者救済につながる健康調査を実施するため、これまでの公健法に係る認定及び特措法に係る給付等に関する情報を分析し、健康調査に活用すること

 また、要請に出席した議員からは以下の発言がありました。

〇篠原孝衆院議員(環境部門長)
 かつて水俣周辺に居住し汚染された魚を食べた人が、大阪や東京などに移住した後にさまざまな症状を訴えるというケースがある。これは被害者本人が気付きにくいという特徴もあるので、しっかり調査していただきたい。

〇野間健衆院議員(環境部門長代理)
 脳磁計やMRIを使用した健康調査は、機器が水俣で1台しかなく何万人という対象者の調査をするにはあまりに時間がかかりすぎる。被害者の声を反映した調査方法にしていただきたい。
 また、5月31日に実施される予定の新潟水俣病の記念式典について、毎年政務官に出席いただいているが、ぜひ環境大臣の出席をお願いしたい。

〇川田龍平参院議員(環境部門長代理)
 健康調査では、既に何らかの救済を受けた被害者は対象に入らないということになっているが、それでは被害の実態が解明されないままだ。大臣・副大臣の政治的決断の下、決着をつけていただきたい。

〇川内博史衆院議員
 脳磁計やMRIを使用した健康調査は、一見科学的に聞こえるがそうではない。水俣病が発見されて以来、これまで現地の医師たちが積み上げてきた手法を重んじ、耳を傾けていただきたい。

〇米山隆一衆院議員
 科学的な調査をすることが、さまざまな疑念を払拭することにつながる。科学的な調査をしっかり前に進めていただきたい。

〇打越さく良参院議員
 地元の新潟でも、被害者が差別や偏見のお恐れから声を上げづらいという問題がある。そのような被害者のことも考えて、しっかりした調査に取り組んでいただきたい。

〇村田きょうこ参院議員
 地元の鹿児島県では、汚染された魚を山間部の住人が食べ被害に遭ったが、補償から外れてしまうという問題を抱えている。ぜひこの問題に、きちんと取り組んでいただきたい。

 要請に対し、中田宏副大臣からは「いただいた要請をしっかり大臣に報告したい。関係団体から意見を伺いながら調査の準備をしていきたい」との発言がありました。

 要請後、記者団からの取材に応じた篠原議員は「脳磁計やMRIを使用した健康調査では不十分で、より網羅的な調査をする必要がある。水俣病は解決済みだという態度の自民党・公明党に対抗したい」と述べました。

 また、野間議員は「環境省はこれまで救済された7万2300人の居住地を把握している。これを個人情報を伏せた適切な方法で公表してもらえれば、被害の分布状況が十分わかり被害実態の解明につながる。これまで何度も要請してきたが、今度こそ前向きに検討してもらいたい」と記者からの質問に応答しました。

 20250424健康調査要請.pdf