高額療養費の自己負担限度額の引き上げ額の公表について(コメント)

立憲民主党 ネクスト厚生労働大臣 小西洋之
      社会保障改革総合調査会長 長妻昭



 政府は高額療養費の自己負担限度額の引き上げについて、具体的な引き上げ額を公表した。最大で38%の引き上げである。

 今回の高額療養費制度の見直しにおいては、年間上限の導入など、長期にわたり療養が必要な方への配慮がなされた。また、負担増の額は前回の決定よりも一定程度抑制されている。しかし、政府が経済対策で21兆円の大盤振る舞いをする一方、物価高騰の中で自己負担限度額を引き上げ、がんや難病等の患者さん達に負担増を強いることは理解できない。

 全国がん患者団体連合会、日本難病・疾病団体協議会は共同声明で「月毎の限度額については十分に抑制されていないと言わざるを得ません」と表明している。今回の引き上げが実行されれば、患者さんの治療や暮らしに大きな影響が出ることが危惧される。前回決定の引き上げ率と比べて低所得者層の引き上げ率が高いことや年間上限の金額設定についても、その妥当性を検証しなければならない。また、70歳以上が対象の外来特例についても負担上限額が引き上げられることになったが、がんなどの重い病気で通院する高齢者の実態を詳細に分析して、慎重に結論を出すべきであった。

 今回の検討プロセスにも重大な問題があった。政府は患者団体もメンバーとなっている「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」で基本的な考え方を取りまとめたが、方針を盛り込んだだけで、引き上げ額は盛り込まなかった。引き上げ額は政府のお手盛りであり、患者団体の意向に沿ったものとは言えない。

 高額療養費制度は国民皆保険制度の根幹の仕組みであり、自己負担限度額の引き上げによって、治療断念や生活破綻に追い込まれるがんや難病等の患者さんを生じさせるようなことがあってはならない。立憲民主党は次期通常国会において、治療断念や生活破綻につながることがないように、引き上げの更なる抑制を求めていく所存である。

以上

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