参院本会議で下水道法等の一部を改正する法律案に対する代表質問が行われ、立憲民主・無所属の会派から、羽田次郎議員が登壇しました。予定原稿は以下の通りです。
2026年7月8日
下水道法等の一部を改正する法律案
立憲民主・無所属 羽田 次郎
立憲民主・無所属の羽田次郎です。ただ今議題となりました下水道法等の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。
我が国の下水道は、高度経済成長期以降、累次の計画等に基づき整備が進められてきましたが、老朽化が進行し、耐用年数である50年を超える施設は、今後、加速度的に増加すると見込まれています。さらには、激甚化する災害に備え、下水道施設の耐震化等の推進も喫緊の課題です。
そのような中、昨年1月28日、埼玉県八潮市で、下水道管路の破損に起因する大規模な道路陥没事故が発生し、巻き込まれたトラック運転手一人がお亡くなりになるという痛ましい事故が発生いたしました。改めてお悔やみ申し上げます。老朽化するインフラ対策、適切な維持管理の実施、それらに携わる地方公共団体の財政・組織体制強化に一刻の猶予もないことを私たちは認識せねばなりません。
本法律案はこうした課題に対応するため、安全性確保を最優先する下水道マネジメントの確立、道路地下空間の安全性確保、下水道マネジメントを支える基盤強化等を内容として提出されたものと承知しております。
この法律案が、下水道を取り巻く諸課題に対応し、国民の命と安全を守り、現場で下水道を支えて働く方々の声を反映した内容になっているのか。以下、全て金子国土交通大臣に質問させていただきます。
下水道の基盤強化
まず、政府が目指す将来の下水道事業の姿について伺います。 本法律案は、目的に、下水道の基盤強化を図ることを盛り込むとしていますが、「基盤の強化」の趣旨と、地方公共団体の厳しい財政・組織体制を踏まえた基盤強化実現のための具体的な施策を伺います。
広域連携がもたらす効果
本法律案により、下水道事業者間の広域連携推進に向けた諸規定が整備され、広域化による事業執行体制の強化を目指すとされています。広域連携の効果として、スケールメリットによる経営効率化、施設当たりの技術系職員数の充実によるメンテナンスの高度化などが考えられます。但し、広域化によって技術系職員の充実を図ろうにも、そもそも地方公共団体の現場では、長年にわたる行政改革のもとで技術系職員が大幅に削減され、人を集めるにも、その母数自体が枯渇しているのが実態です。現場の人員不足という根本的な課題を残したまま広域化が進めば、メンテナンスの高度化という効果も画餅に帰しかねません。現場の状況を踏まえ、広
広域化の目安
また、広域化で目指す事業体規模の目安、圏域にあるべき事業体数の目安をお示し下さい。
広域化の手法
広域化は手段であって目的ではありません。地形、施設配置、人口動態、災害リスクなど、地域ごとに事情は異なります。効率性を鑑みて、水道と連携した運営や事業展開も重要となっています。国が規模等の目安を示すとしても、画一的な再編の押し付けとなってはなりません。更には、広域化を選ばない自治体が財政支援上不利に扱われることがあってはならないと考えます。金子大臣のご見解を伺います。
改正水道法との類似性
平成30年の水道法改正の際にも、広域連携推進の規定整備が行われています。国が、広域連携の推進を含む基本方針を定めること、基本方針に基づき都道府県が「水道基盤強化計画」を定めること、そして都道府県が広域連携を推進するため関係市町村及び水道事業者等を構成員とする協議会を設けること等の規定は、下水道法改正案と同様です。改正水道法と類似した建て付けとした理由をご説明ください。
改正水道法の効果検証による実効性担保
昨年12月時点で、水道基盤強化計画を策定・公表しているのは3県、法定協議会を設置した団体は10団体であると承知しております。果たして、改正水道法は水道の広域化を進めるに当たり、実効性のあるものとなっているのか。同様のやり方で下水道の広域化が進むのか。こうした点について「上下水道政策の基本的なあり方検討会」でも疑義が呈されています。下水道法に「広域連携の推進に係る規定」を位置付けるに当たり、改正水道法による効果を検証した上で、下水道法における計画・協議会の実効性を担保する必要性について、金子大臣のご見解を伺います。
官民連携推進と広域連携推進の整合性
政府は、PPP/PFI推進アクションプラン」で、ウォーターPPPの導入推進を掲げています。令和8年度予算の編成等に関する建議では、ウォーターPPPの導入について、「単一市町村ごとの委託による小規模案件の乱立は非効率であり、事業の広域化を妨げてしまう可能性にも留意しなければならない」、「経営の広域化など、効率化を前提とした制度設計を促すべき」としています。「上下水道政策のあり方検討会」でも、まず、官民連携に先行して広域化の議論を進め、設備の標準化等を進めるべきとの意見が示されています。そもそもウォーターPPPをはじめとする官民連携は、地域の実情に応じて検討されるべき選択肢の一つに過ぎず、唯一の解決策ではありません。しかし、本年改訂された下水道分野のウォーターPPPガイドラインでは、対象施設や業務範囲を説明する「客観的な情報」から『首長や議会の意向』や『職員の雇用を守り、職員削減を回避する』といった、地域社会や現場に直結する要素が除外されました。住民や議会、現場で奮闘して働く方々の意見を軽視する姿勢が、官民連携をめぐる議論の根底にないか、私は強く危惧しております。政府は今後、広域連携推進とウォーターPPPの導入推進という2つの施策について、どのような優先順位を付けて取り組むのか伺います。
また、法施行後、都道府県協議会等において圏域の広域化について議論がなされると思われますが、一定の結論を導き出すまで期間を要すると見込まれます。政府は来年度からウォーターPPP導入を社会資本整備総合交付金の交付要件とするとのことですが、広域化についての圏域の議論を待たず、こうした措置を講ずるのは適切でしょうか。老朽化対策や耐震化は、住民の命と暮らしを守るための公的責任であり、特定の事業手法の採用を補助条件とすることは、地域の主体的な判断や地方自治の原則を損なうものです。財政的に厳しい自治体ほど、国の補助に依存せざるを得ず、『導入しなければ財源を確保しにくい』と受け取られる制度は、形式は選択であっても、実態としては主体的選択にはなりません。要件化まで期間を置くか、要件化そのものを撤回すべきと考えますが、ご見解を伺います。
本法律案では、下水道の診断基準の法定化や災害時の関係者の連携協力等が盛り込まれており、現場を担う建設業者に期待される役割は益々大きくなります。一方、上下水道業界を目指す学生求職者は少なく、更に、中小規模の事業者においては、個別の人材育成を行うことが困難です。加えて、下水道維持管理の現場では、元請から下請、孫請へと業務が再委託される多重下請け構造のもと、実際に作業を担う労働者の賃金や労働条件が押し下げられ、安全教育や装備の確保が十分に行き届かない実態が指摘されています。人材確保には、処遇改善が不可欠です。国や県では、資材高騰を踏まえた適正な賃金支払いの取組が進む一方、下水道の運営主体である市町村では、こうした動きが浸透していない、と云われています。日常のメンテナンス作業を担う地元企業の存続・育成のためには、下水道事業を運営する市町村に対して国から適正賃金の支払いを促すほか、財政支援等に取り組む必要があります。適正な処遇確保は、現場の安全確保とも一体不可分です。この点も踏まえ、ご見解を伺います。
点検・調査技術の高度化・実用化への取組と安全確保
点検頻度等の強化に当たっては、現場の負担を軽減し、点検作業に従事する職員の安全を確保することが最も重要です。八潮市の事故を受けた全国特別重点調査の実施過程で、昨年8月、埼玉県行田市で調査を受託した会社の作業員4名がマンホール内に転落し、お亡くなりになるという、極めて痛ましい事故が発生しました。改めて、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表します。この事故は、点検・調査の頻度や対象の増加が、直ちに現場の負担と危険の増大に直結することを示しています。
国として、点検等を容易かつ安全に行うことができるよう、DX化支援や技術開発の促進など、作業の無人化・省力化に向けた取組を進める必要があります。但し、DXや機械化は現場を支える重要な手段ではありますが、異常の兆候を察知し、危険な局面で作業を止める最終的な判断を担うのは、あくまで経験を積んだ『人』です。技術による省力化と並行して、現場の経験知の継承と、直営・委託を問わず、作業員一人一人の安全を、制度として確保する仕組み作りが不可欠です。点検技術の高度化・実用化に向け、国としてどのように取り組むのか、現場で働く方の安全確保にどう責任を持つのか、ご見解を伺います。
下水道施設の維持管理等の費用見込み
「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」の提言を受け、本法律案では、構造の原則に係る規定が改められたほか、計画的な改築等を公共下水道管理者の努力義務とする規定が創設されます。国交省の試算によれば、2048年の下水道の維持管理・更新費は、2018年の0.8兆円の約1.6倍となる1.3兆円に増大するとされています。これに、リダンダンシー及びメンテナビリティに要する費用を加えると、今後必要となる下水道の維持管理・更新費はどの程度になると見込まれているか伺います。
予算確保とその財源
全国の下水道事業の約4分の3が、使用料で汚水処理費用を回収できない『原価割れ』の状態にあり、使用料による住民負担にはすでに限界が見えています。老朽化対策、耐震化、リダンダンシーの確保は、国民の命と衛生を守るための公共的責任であり、国による安定的な財源確保が不可欠です。財源を使用料による負担強化によるのか、それとも、国費支援を強化するのか、現時点での検討状況を伺います。
処遇改善への支出
また、確保した予算は、施設の更新のみならず、対策を担う現場の人員確保と労働者の処遇改善にも充てられるべきと考えますが、ご見解を伺います。
柔軟な予算配分と公共投資の抜本的拡充の必要性
計画的な改築等を着実に実施するためには、これまで以上に予算を確保する必要があります。1930年代に集中的なインフラ投資を行った米国は、その後、公共事業予算を削減し、十分な維持管理・更新を実施しなかった結果、1980年代にインフラの老朽化問題が深刻化し「荒廃するアメリカ」と呼ばれる事態に直面しました。官民両部門における新規設備及び既存設備に対する資本投下の不十分さは、米国経済の生産性・国際競争力の低下を招いたとされています。 我が国を顧みれば、維持管理・更新費用を含む日本の公共事業費は、平成26年度以降6兆円程度で推移しており、これは下水道が建設ピークを迎えた平成10年度の9兆円に対して6割程度の低水準です。
改正案は、第一条に「改築、修繕、維持」を含め、「下水道の基盤の強化」を明示しました。そうであるなら、下水道の基盤強化のための財政負担のあり方についても、より深い議論が行われるべきです。
今般の中東情勢の影響を受け、管路更新等に係る資材・燃料価格の高騰も見込まれます。これまでと同等では実施可能な事業量が減少し、計画通りの改築実施が困難となる可能性もあることから、物価上昇局面における柔軟な予算配分を検討する必要があると考えます。また、我が国を「荒廃する日本」にしないためにも、公共投資を抜本的に拡充する必要があります。金子大臣のご見解を伺いし、質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。

