18歳選挙権の導入以降、主権者教育の重要性は語られる一方で、継続的な仕組みづくりには課題があります。日本若者協議会の宇惠野珠美さん、若者と政治をつなぐ活動に取り組んできた原田謙介さんに、政治を「自分ごと」と体感できる社会について、広報委員会 委員長補佐の山内佳菜子参院議員が聞きました。(2026年6月26日取材)

原田謙介(はらだ・けんすけ)さん
元・主権者教育アドバイザー
高校生向け主権者教育副教材「私たちが拓く日本の未来」(総務省・文部科学省)執筆者

宇惠野珠美(うえの・たまみ)さん
日本若者協議会・民主主義教育プロジェクト
白梅学園大学のこども学研究所で嘱託研究員として主権者教育などをテーマに研究、来年から大学院に進学

山内佳菜子(やまうち・かなこ)参院議員
宮崎県選挙区/1期
主権者教育に取り組む原点
山内佳菜子参院議員(以下、山内) 今日は、主権者教育を組織的に続けていく仕組みや国内外の事例をお伺いし、日本で取り組めることを考え、形にするきっかけにしたいと思っています。今後の行動につなげていきたいと思います。
宇惠野珠美さん(以下、宇惠野) 主権者教育に関心を持ったきっかけは、高校時代にあります。1日一つ、黒板の隅に新聞記事を要約する、私の名前の珠美から取った「たま時事」という活動をしていました。若者は時事問題に関心がないと言われていますが、知る機会があれば関心を持つようになると実感し、学校で具体的な時事問題が扱われにくい現状に疑問を持つようになりました。
原田謙介さん(以下、原田) 大学卒業後にNPO法人を立ち上げ、若者と政治をつなぐというテーマで活動してきました。18歳選挙権が導入される前には学校現場を含め、選挙や政治の制度を学ぶだけではなく、選挙や政治の制度を使い、実際に関わるような教育をしないと、民主主義社会で一人ひとりが持つ力が全く生かされないとの問題意識から、主権者教育に関わりました。
18歳選挙権が導入された後、高校生向けの副教材の執筆にも関わり、全国の学校で主権者教育に取り組んできました。
その後、政治の世界に入り、2019年に地元の岡山に戻って国政選挙に挑戦しました。
政治的中立性を支える基盤づくり
山内 宇惠野さんはヨーロッパに留学されていましたよね。
宇惠野 2024年8月から2025年6月までスウェーデンに交換留学をしていて、翌7月から3カ月間はドイツの政治教育センターに関連するNGOでインターンをしていました。
山内 日本では、政治的中立性がネックになって、なかなか学校でも授業が難しいということをよく聞きますが、日本で取り組むとすればどうすればいいと思いますか。
宇惠野 ドイツの政治教育センターは、ナチス時代の反省から作られた政治教育機関です。時事問題を分かりやすく発信したり、学校向けに教材を発信したり、論文をまとめたりしています。さらに、学校で使える、民主主義とは何かを伝えるポスターや、毎日一つの時事問題を掲載した手帳を作ったりします。政治教育センターの大きな役割の一つとして、民主主義社会を維持する上で価値のある絵本を安く販売し、幼稚園児向けの絵本を安価に入手できるようにする取り組みがあります。
政治的中立性を維持しながら、教材を発信するということで、具体的には政治家とアカデミアによる委員会が監査をしており、政治的中立性が確保され、先生たちが安心して教材を使えることがポイントだと思います。
山内 国家機関ですか。日本で取り組むとすれば、どうすればいいと思いますか。
宇惠野 そうです。連邦内務省に属する国家機関です。日本でも政治的中立性を保つことが鍵だと思うので、難しいかもしれませんが、ドイツと同様に政治家やアカデミアが監査に入る形が大切かと思います。政府などのお墨付きがあると先生方も教材として扱いやすいかと思います。
原田 政治家とアカデミアが加わった主権者教育の組織をつくることが学校現場にも大事で、社会的なメッセージになると改めて思いました。アカデミアや政治家だけではなく、さまざまな形で政治に関わっている人たちが、社会全体で広く取り組めるように、みんなに関わってもらう教育をしないといけないのではないかと思いました。
山内 主権者教育を学校の中だけではなく、政治や職場も含め、広く社会全体で取り組めないかと思います。
宇惠野 主権者教育は、理想的な市民を育む教育だと思います。理想的な市民とは何か、私たちはどのような民主主義社会に生きたいのかを、超党派で考える必要があると思います。政治教育センターが、教材を提供するだけではなく、どういうシチズンシップがあるべきかを考える場所としても機能すればいいなと思います。
山内 素晴らしいですね。日本でも主権者教育の組織のような動きを意識できればいいと思います。
政治参加の入り口を広げる
山内 原田さんは大学時代から、主権者教育や若者と政治をつなぐ活動をされてこられた中で、さまざまなことを感じられ、政治家の立場も経験し、その後は皆さんとつながる活動をされてきました。立場が変わったことで視点も変わり、見えてきたことはありますか。
原田 プラスと、マイナスと両面が見えました。政治活動を始めて驚いたことは、政治や社会に対して熱い思いを持つ人たちがいたことです。候補者になると、さまざまな方が世代を超えてボランティアで応援してくださいました。政治に直接関わっていなくても、地域や社会の課題に対して情熱を持って活動されている人や、政治や選挙に熱い思いを持っている人がいることに驚きました。
その一方で、主権者教育やNPO活動をしていた時には、なかなかそういう方と出会えませんでした。政治や選挙への関心が強い人と、関心のない人に二極化しているジレンマも抱えていました。
日頃の発信に関して、国会の状況など政治にアンテナを張っている人向けに発信するのか、または、政治にさほど関心を持っていない人に向けて発信するのか。どのような情報を発信するかが非常に難しいと思っています。
日本の場合は、政治参加といえば「選挙」という印象があまりにも強いと感じます。選挙も大事ですが、選挙以外でもフラットに政治家と会うことができる、地域の課題をみんなで話し合うことができる、そうした政治参加の場が広がれば、政治に関わる最初の一歩のハードルが低くなるのではないかと思います。
山内 私は新聞記者から政治家になりましたが、選挙の際、候補者以上に熱く動いてくださる支援者の方がたくさんいらっしゃいました。その反面、政党を支持している方々と無党派層の方とでは、フラットにつながるためのアプローチの方法が違うと感じました。原田さんの「政治は選挙だけではない」という言葉が非常に響きました。特に国会議員になると、日頃から本当に多くの方が、要望活動に一生懸命取り組み、政治を動かそうとしていらっしゃると感じます。普段からフラットに意見を言い合えて、政治家が意見を受け取って政策につなげる流れになればと思いました。
原田 候補者であった私のところにも声が届きました。政治に声を届ければ変わるという体験をもっと積み重ねていければいいと思っています。その一方で、世の中では、政治家に直接連絡してよいと思っている人は、ほとんどいないと思います。民主主義の力として、政治を使ってよい、思いを伝えてよいという認識が広がり、多くの人が政治家に対して思いを伝えられるようになればと思っています。
山内 ありがとうございます。宇惠野さんから何か聞きたいことはありますか。
宇惠野 私がスウェーデンに留学していた際、政党青年部で活動していました。本当に魅力的な組織で、13歳から30歳くらいまでの若者が所属しています。学校では1クラスに1、2人、政党青年部に所属している学生がいて、普段から政治の話もしますし、触発されて関心を持つ学生もいます。例えば、選挙の前には政党青年部が学校に来て、先生の代わりに政党の説明を行います。政治家本人が学校に来ることができなかったとしても、政党青年部の学生が政策を説明でき、政治家に要望を届けることもできるため、政治に声が反映される仕組みが整っていました。同じ授業を受けていた学生に「アルバイトは何をしているの?」と何気なく聞いたら、「地方議員だよ」と答えられることもあり、政治や政治家が身近だと感じました。
山内 私自身も、日本で若者と政党がつながる難しさを、青年局長として感じています。原田さん、何か良いお知恵はありませんか。
原田 2018年ごろにドイツに行ったことがあります。スウェーデンは完全比例代表で、自治体レベル、国レベルで選挙が4年に1回と決まっており、選挙ではない期間が長くなります。このため政党や政党青年部が次の選挙までに、政党に自分たちの世代の声をしっかり伝える、あるいは、自分たちが支持している政党の考えを、次の選挙までの数年間で伝えていく目標が立てやすくなります。日本の場合は衆院議員選挙がいつあるか分からず、参院議員選挙は3年に1回、県議選も異なるタイミングで行われる構造です。例えばですが、各政党の青年部が合同で説明会をしてみたら面白いのではないでしょうか。
山内 立憲民主党には「立憲ユース」という16歳から25歳の若者でつくるグループがあり、その皆さんからも他の政党と交流してみたいという意見を頂いています。もちろん、立憲に興味を持ってもらえることも嬉しいですが、他の政党と比較をすることで、他の党の良いところや、立憲でより頑張れる点も見つかると思うので、他党との交流はいいと思います。今日の宿題として受け取ります。
後編では、政治を「自分ごと」として捉えるために必要な機会や、主権者教育を社会全体の取り組みへと広げる方策について、さらに議論します。

後編はこちら⇒ https://cdp-japan.jp/news/20260810_0514?preview=8103847d8b4a55c55e8d90e8885a52a9d023fd58
