統計とは、気温の変化や天気、植物の成長などの自然現象の仕組みや地域・社会の特徴などを知るために観察、調査、実験等によりデータを集め、整理・分析したもののことです。この統計を基に、さまざまな疑問や課題を解決したり、対策を考えたりするのも、政府の重要な役割の一つです。ところが、2019年頃から相次いで統計不正問題が発覚しました。
まず、厚生労働省が所管する毎月勤労統計調査。これは本来、500人以上の従業員を雇用する全ての事業所に対して行うべき調査ですが、厚労省は「負担を減らしてほしい」という都道府県からの要望に配慮して3分の1を抽出し、調査する事業所数を減らしていました。
厚労省は不正を認識してからも、「全数調査をしている」と嘘の説明をしたり、全数調査ではなく抽出調査も認められるよう密かに総務省へ働きかけをするなど、隠蔽工作と受け取られかねない対応をしていたことも分かっています。この結果、統計に基づいて支払われる雇用保険や労災保険の支給額が変わってしまい、10年以上にわたり本来支払われるべきなのに支払われなかった額は総額5百億円以上、本来受け取れる額よりも少ない額しか受け取れなかった人はおよそ2千万人にのぼるとも言われています。
厚労省は賃金の調査結果のかさ上げも密かに行っており、政府は賃金水準が改善したかのように見せて、消費税を増税するための根拠の1つにもしていました。
同様の不正は国土交通省が所管する建設工事受注動態統計調査でも起きています。国内総生産(GDP)の算出にも使われ、国が特に重要と位置づける基幹統計の1つだったこの調査では、建設業者が提出したデータを無断で書き換えるよう、国交省がデータの回収を担う都道府県に指示していたことが2021年に発覚しました。
業者が本来の提出期限より遅れて、複数月の分の受注実績をまとめて提出した場合、これをひと月分に合算し、手書きで改ざんする不正が年間1万件も行われていました。この不正により二重計上が生じたりして、GDPの算出にも使われる基幹統計の数字にも誤りが出ていたのです。
これらの統計不正の問題から見えてくるのは、国家予算や政策決定の重要な指標になる統計が不正確ならば、国の針路も大きく誤りかねないという認識がないまま、ルールに反した処理やデータの改ざんが行われ、政府内でそれが発覚してもなお不正を続けたり、隠蔽工作が行われたりしていたという、極めて深刻な状況です。
不正に気づいた職員がいても、組織全体が隠蔽に走れば声を上げにくくなります。こうした組織の閉鎖性が最悪の事態につながりかねないことは、2018年に財務省近畿財務局の職員が、国有地の売却をめぐって書類の改ざんを強要された後、自殺に追い込まれた件からも明らかです。
立憲民主党は、公的統計を「行政利用だけではなく、社会全体で利用される情報基盤」であり、不正はあってはならないことだと位置づけています。その上で、統計業務におけるルールの強化・徹底や予算の充実、専門人材の育成・確保をはじめ、統計を担う体制の抜本改革を進めていくこととしています。
統計不正が行われても自浄作用が働かず、不正を発見した人の肩身が狭くなるばかりか、改ざんや隠蔽が組織的に繰り返されてきた体制を抜本的に改革するためにも、私たち立憲民主党は政権交代を実現し、不正や隠蔽のないクリーンでオープンな行政を目指します。