新立憲民主党として臨んだ第203臨時国会。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策をはじめ日本学術会議の会員任命拒否問題や、「桜を見る会」前夜祭をめぐる費用の安倍前総理後援会による補填疑惑の再燃など課題が山積するなか、菅政権との論戦の最前線に立った、衆参予算委員会筆頭理事を務めた辻元清美、森ゆうこ両副代表に国会を振り返っていただきました。(12月3日取材)

国民の疑問を総理に聞けるのが予算委員会

辻元)今回、衆参両院で予算委員会の野党筆頭理事を女性が務めました。参院では森さんが以前にも経験され、蓮舫代表代行も前国会まで筆頭理事を務めていましたが、衆院では与野党ともに女性が務めるのは初めてとのことです。

森)私は2010年、民主党政権のときに与党の筆頭理事も経験しましたが、予算委員会というのは国会の中でも特別な委員会ですよね。野党の立場から言えば、予算の審議はもちろん、その時々の政治的な課題を、いかにクローズアップして問題化できるかなど、国会が活性化するかどうかは予算委員会にかかっていると言っても過言ではありません。
 理事は、与野党それぞれの立場がありますが、与党側は、期間内になるべく早く政府の提出した予算案を可決、成立させること。いかに内閣にとって答弁しやすい環境を作るかも大事です。野党側は、どうやったら野党の質問時間をより多く獲得できるのか。そして、国民が納得できる、きちんとした資料をいかに政府から引き出すか。交渉事ですから、そのときの力関係によっても違いますが、その交渉がうまくいくかどうか、ものすごく重い責任があります。

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質問に対する閣僚の答弁が不十分だと、与野党の理事が委員長席に集まり時計を止め協議。その時間は質疑時間には含まれない。手前中央が森ゆうこ議員

 さらに、参院の予算委員会では、参院独自の「片道方式」(※1)を取ります。「国会は野党のためにある」という考え方です。衆院と同様に「往復方式」(※2)もありますが、閣僚が自分に対する追及をさせないため、べらべらと余計なことを喋って時間を空費しないようにと、答弁する側には厳しいルールになっています。
 だからといってうまくいくわけではなく、よく委員長席に出ていくのは、政府の答弁が不十分、あるいは聞かれたことに答えないときです。安倍政権や、いまの菅政権でも、いわゆる「ご飯論法」(※3)が際立っています。なので、本当の答えにたどり着くまで質問者は同じ質問を繰り返さざるを得ず、理事が出ていき「おかしいじゃないか」「きちんと答えさせてくれ」と詰め寄る。ですから、質問者1人で質問しているのではないんですね。いかに質問者の意図した答弁を引き出させるかは、理事が相当に力を発揮しないとできませんし、あとはやっぱり周りの声援も必要です。淡々とやっているだけでは、答えさせるべき答弁が出てこない。それで、時々出ていって的確な答弁が返ってくるように説得する。厳しくお説教する感じですね(笑)。それに比べて辻元さんは上品ですよ。

辻元)いや、どうだろう?(笑)
 通常国会と臨時国会、通常年2回国会が開かれますが、それぞれの冒頭で議論していく、スタートを切るのが予算委員会です。そして、予算委員会のもう1つの特徴は、総理大臣が出席し、総理に対して一問一答形式で質問できること。これは他の委員会でも、重要広範議案(※4)の審議には出てきますが、連続して総理大臣が出席して審議できる重たい場です。予算の執行は森羅万象、全ての案件に予算がつきますから、予算の審議だけではなく、時々に起こった事件や疑惑などを含めて国民が疑問に思っていることを直接総理に聞くことができる特別な委員会です。

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臨時国会では「桜を見る会・前夜祭」疑惑が再燃。代金支払いや領収書をめぐり「政治資金規正法違反の疑いが濃厚ではないか」と迫る辻元議員(2020年2月17日衆院予算委)

辻元)予算の審議は衆院から始まって参院に移っていきますので、衆院では論点出しを意識してやります。この国会でどういうことが論点になるのだろうと切り込み隊のようにいろいろな質問をしながら論点をつくっていく。ですから宇宙に放り出されたような感じで論点をつかみにいかなければいけません。参院では、さらに議論を深めてもらう、あるいは衆院で出てこなかった資料を出してもらうといった連携をしていきます。
 例えば、森友学園問題で安倍総理が「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」と答弁したのも予算委員会(2017年2月17日)ですし、2018年に働き方改革関連法案をめぐり裁量労働制に関する厚生労働省のデータのねつ造が明らかになったのも予算委員会です。そこで出てきた論点が国会の会期を通しての大きなテーマになりますから、そういう意味でも非常に重要な委員会なのです。

幅広い人材が集まり、政権与党に向けて第一歩

辻元)今回野党が結集したことで、何よりも森ゆうこさんと一緒に働けて、衆参で一緒に力を合わせて戦うことができる、これはすごく良かったなと思います。私たちがそれぞれ違う党で力を発揮するよりも、森・辻元でタッグを組んで一緒に与党に立ち向かって力を発揮できることが目に見える。そういう現象があちこちで起きています。

森)議員が増えて層が厚くなった、専門性が幅広くなったという曖昧な言い方ではなく、森と辻元が一緒にやっているんだよってね。政権与党というのは国民全員に対してしっかり責任を果たすわけですから、政権を託して大丈夫だと支持されるためには、やっぱり政党の中に幅広い人材が重要ですし、そのためにはやっぱり数も必要です。そういう意味では、第一歩ですね。

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自らも質疑に立ち、日本学術会議の任命拒否問題や経済と規制改革の方向性、原発再稼働問題などの問題をただした森議員(2020年11月5日参院予算委)

森)国会がないがしろにされて、政権が独裁色を強めていく今の政治に、半ば皆さんもうんざり、絶望している状況だと思います。それは私も同じで、「もうこんなのやってられるか」って思う毎日ですが、でも諦めたら終わりですから。香港では(民主活動家)周庭さんが禁固刑で収監されてしまいましたが、恐ろしいことですよね。自由を求める民主主義のための活動がいとも簡単に弾圧されてしまう。それは対岸の火事ではなくて、われわれもこの国の今、未来を左右しかねない状況にあるという意識をもって、励まし合いながらやっていきましょう。

辻元)そう。お互いに電話をかけて、「そっちはどう?」「自民党は何か言ってきた?」「こっちはこういう感じ」とか、本当に励まし合いながらやっています。

森)これだけ経験が豊富だから、「大丈夫でしょ」って言われるけど、予算委員会ってやっぱり……

森・辻元)プレッシャーだよね。

辻元)だからやっぱり筆頭理事として、お互いに仕切りもやらなきゃいけないし、誰にどんな質問をしてもらうかというようなことも決めなきゃいけない。それと同時に、自分が前線に立って、自ら質問して戦うって、歌って踊れる筆頭って言っているんだけど(笑)。監督もするし、かつ自分も主演女優張らなきゃいけないっていう2人です。

森)プレイングマネージャー。

辻元)はい、がんばります。

森)がんばります。

※1 質問時間のみが割り振られ、答弁の時間は含まれない。閣僚がどんなに長い答弁をしたとしても、それはカウントされないというルール。
※2 決められた時間の枠内で質問者に、質問とそれに対する答弁の時間が割り振られる。
※3 質問に真正面から答えず、論点をずらして逃げるという論法。 「朝ご飯は食べたか」という質問を受けた際、「ご飯」を故意に狭い意味にとらえ、(パンを食べたにもかかわらず)「ご飯(白米)は食べていない」と答えるように、質問側の意図をあえて曲解し、論点をずらし回答をはぐらかす手法。
※4 特に慎重な議論が必要だと判断した場合に指定するもの。

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機関紙「立憲民主」vol.3(12月18日号)では、2人がさらに菅政権との初論戦を振り返り、いまの国会の状況などについて語っています。