衆院予算委員会で9日、2021年度本予算に関する一般質疑が行われ、立憲民主党から亀井亜紀子、金子恵美、山本和嘉子各議員が質疑に立ちました。

 同日は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に抗議の意を表すため、女性有志議員が米国等での女性参政権運動のシンボル「白」のジャケットを着て出席。亀井、金子、山本各議員は森会長の発言を受け、「国際社会や五輪開催への影響に対する認識」「復興五輪と位置付けられるなか、被災地への影響」「辞任すべきとの声が国内外で大きくなっているが、会長続投と考えるか」などこの問題を追及しました。

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 亀井議員は、「この問題の深刻さは、いくら謝罪、撤回をしても、森会長がこうした女性蔑視の考え方を持っている人だということが世界に発信され、知られてしまったこと。それを知った上で辞任を求めていないことは、国際社会の常識から外れている。だから今、こういう形で運動が広がっていることをご認識いただきたい」と指摘。五輪はさまざまな社会的、先進的な取り組みが求められるものだとして、「受動喫煙や、アニマルウェルフェア(動物福祉)問題などは比較的新しいが、男女平等というのは1世紀以上歴史がある。森会長の発言は、裏を返せば『女性は黙っていろ』と世界に向けて発信したに等しい。森会長が組織委員会のトップに収まったまま、オリンピックだけ招致するのは厳しいのではないか」と述べました。

 亀井議員は、冬季長野オリンピック大会で通訳を務めた経験も踏まえ、あらためて、誰のためのオリンピック開催かと質問。橋本五輪担当大臣は、「大会の主役はアスリート。安心と安全をしっかり作ってあげていく環境を整備しないと主役であるアスリートが東京大会に本気で向かっていくことができないのではないかと考えた時に、まずはコロナ対策。専門的な知見、科学、医学を結集して開催できるように全力を尽くさないといけない。アスリートファーストの本来の姿を発揮することができる大会にする」と答え、亀井議員は「アスリートファーストで取り組んでほしい」と重ねて求めました。

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 金子議員は冒頭、21年前自治体議員になったとき、地元の町での女性初の議員だったと振り返り、「いま国政の方が若干居心地がいいと感じるのは、地方ではまだまだ議会のなかでの男女平等が難しいから。女性がゼロの議会もあり、女性の政治参画をしっかりと進めていかなければいけない」と発言。その上で、森会長に限らず、これまで多くの自民党の閣僚、議員らが女性蔑視の発言を繰り返してきたことに言及。「女性は家庭に入り子どもを産んでいればいいというような考えの方が、御党(自民党)に多いということであれば世の中が変わらないなと思う」と述べ、その一つ例が、昨年12月25日にまとまった第5次男女共同参画基本計画で、選択的夫婦別姓の削除や、「指導的地位」における女性の割合を「2020年までに30%程度にする」という従来の目標の最長10年先送りなど、内容が後退してしまったことだと指摘しました。

 男女共同参画政策が進まなかった理由として、「この言葉がいいかは別にして」と前置きした上で、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を挙げ、社会全体で男女を問わずすべての人が意識改革をしていく必要があると強調。昨年1月に発表された、大学教授らで作る市民団体「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」が、「政治家による性差別発言のワースト投票」での1位が麻生財務大臣(副総理)の発言『(日本人の平均寿命が延びたのは)いいことじゃないですか。すばらしいことですよ。いかにも年寄りが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるけど間違ってますよ。子どもを産まなかったほうが問題なんだから』、だったことも紹介、「撤回した、謝罪したというのは関係ない。言葉のなかに本意がある。森会長も同じで、日頃から思っていることがぽんと出てしまう。それが分かっているから国際社会からもこれだけの抗議が来ているのだと思う。男女共同参画社会をつくるために頑張られている方もいるが、どこかで変えていくためには問題を改善するために本気で考えていかないと進まない」などと訴えました。

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 山本議員は、森会長の発言をめぐっては、その後の謝罪会見により問題がさらに大きくなっているとして、「反省しているのであれば会見をもう一回開かなければ納得しない」と指摘。森会長の発言をめぐっては、各国の在日大使館や、フランスの元閣僚、カナダのIOC委員をはじめ世界中から多くの抗議の声が上がっているとして、橋本五輪担当大臣に対し「(発言は)国益にそぐわないと考えるか。森会長続投でいいと考えるか。アスリートとしてSpeak upして(声を上げて)ほしい」と求めました。しかしながら橋本大臣はこれには答えず、「あってはならないこと。説明責任を果たし、信頼される大会になるよう努力をしていってほしい」と述べるにとどまりました。

 山本議員は麻生財務大臣に対しても、「国益にそぐわない」と考えるか、さらに森会長の発言を受け、大会を支えるボランティアの辞退が390人にも上っていることをめぐり、自民党の二階幹事長が8日、「落ち着いて静かになったら考えもまた変わるだろう。どうしても辞めたいということであれば、新たなボランティアを募集するということにならざるを得ない」などと発言したことへの受け止めを尋ねました。麻生大臣は、森会長の発言については「不適切。国益にそぐわないことははっきりしている」、二階幹事長の発言についても「ボランティアへの敬意を欠く発言」との認識を示しました。