衆院予算委員会で16日、2021年度総予算に関する参考人質疑が行われ、東邦大学医学部教授の舘田一博さん、日本労働組合総連合会(連合)総合政策推進局長(ジェンダー平等・多様性推進担当)の井上久美枝さん、練馬区長の前川耀男さん、全国保険医団体組合会会長の住江憲勇さん、一般社団法人キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁さんがそれぞれ参考人として意見を陳述。その後の質疑で、立憲民主党からは逢坂誠二議員が質問に立ちました。

 『緊急事態宣言の解除の時―新型コロナウイルス感染症(COVID-19)制圧に向けた戦略的活動―』として、(1)「再増加(リバウンド)」の阻止(2)「まん延防止等重点措置」の活用(3)「急所」に対する持続的・積極的対策の実施(4)「攻めの検査」によるクラスター早期発見(5)「文化」としての感染対策の徹底・定着――を挙げた舘田さん。

 逢坂議員はまず検査のあり方について、「無症状の感染者を割り出すことが重要な局面に来ていると理解している」との認識を示した上で、同じ無症状の感染者のなかにも感染力の強い人と弱い人がいるとされていることから、そうした点を留意したやり方があるのかと質問。館田さんは、「無症状でも感染を広げやすい人、広げにくい人、ウイルスの多い人、少ない人、ゼロの人がいる。その判別ができないのがこの感染症の難しさであり、大事なのがユニバーサル・プレコーション(標準予防策)という考え方。症状がなくても濃厚接触のリスクがあるときにはみんなが対策を取ること」だと述べました。

 次に、逢坂議員は「コロナ禍のなかで社会の弱いとされているところに一気にしわ寄せが来たと感じている。特に非正規雇用の方は苦境に陥っているが、非正規雇用解消、特に女性の非正規雇用解消のために取るべき政策とは何か」「国の統計だけでは雇用の実態が分からないとの指摘があったが、雇用の実態の調査・分析をさらに深めるためにどのようなことをやるべきか、どういうことを知るためにやるべきか」と質問。

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 井上さんは、「女性活躍推進法の施行により働く女性は増えたが、その多くは非正規。日本の社会はまだまだ労働時間が長い、固定的性別役割分担意識が強いなど男性中心型雇用慣行で、女性が仕事と育児や家事を両立して働くことが難しい」として、まずは、女性に限らず、非正規雇用労働者の処遇の改善が必要だと主張。「4月から中小企業でも同一労働同一賃金が強制となる。コロナ禍だからできないということではなく、しっかり遵守するように国の方で指導していただきたい。エッセンシャルワーカーと、言葉では称賛されるが、そこで働く人たちの賃金は非常に低い。同一労働同一賃金ではなく、同一価値労働同一賃金の手法を活用して処遇を高めることが必要。そういう課題を政治のメインストリームにするためには、女性の議員がしっかりと増えてこの政策課題をやっていくことが重要」だと述べました。

 調査の手法については、有識者の方からの指摘を受けている観点からということで、「モニター調査と無作為抽出標本調査では属性の違いと、意識差が大きい。性や年齢、職業など属性によってモニター調査の結果を補正する試みがあまり成功していないことが労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査でも明らかになっているとのこと。そうした意味で、モニター調査とその補正だけでは十分ではないことを押さえておかなければいけない」と指摘。意見陳述の際に言及した、労働力調査については、「女性の、特に非正規の場合は再就職を断念し、非労働化すると発言したが、失業者の数字が統計に表れていないという実態がある。そもそも労働力調査は、都道府県別に集計して、一定の正確さが保たれる標本設計になっていない。そうすると緊急事態宣言はもちろん、特措法のまん延措置など重点措置による雇用への影響が分からない。大規な無作為抽出調査を国でしっかりやる。全国を網羅する偏りのないデータを収集すべきとの指摘を受けている」と答えました。

 ワクチン接種をめぐって逢坂議員は、「私自身、個別接種と集団接種はそれぞれの自治体が組み合わせて行うのが良いことだと思っている」と述べ、東京都の練馬区モデルを評価。そのなかで、政府がマイナンバーを使って新たなシステムを作ろうとしていることについて、全国の自治体からは「すでに予防接種台帳がある。平時ではない状況のなかで新たなシステムを作ることには対応できない。何のためにやるのか分からない」との声があると紹介し、前川区長の所見を尋ねました。前川区長は、「マイナンバーを云々する前に、現在のシステム管理そのものが必ずしも上手くいっていないのではないか。自治体によって管理システムが違う、そこに(ワクチンの流通を効率化するために構築した流通管理システム)V-SYS(ブイシス)の問題もある。理想としてはマイナンバーで一本化するのがいいのだろうが、現実的には難しいだろう」との見解を示しました。

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