衆院予算委員会で17日、集中審議がおこなわれ、立憲民主党から尾辻かな子議員が質問に立ちました。尾辻議員は政府の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策におけるデジタル施策の失敗、東京オリパラ大会を契機としたLGBTQへの差別解消等を取り上げました。

 尾辻議員は、COVID-19の新規感染確認者数、死亡者数等の集計方法を厚生労働省にただし、各都道府県のウェブサイトから手作業で集計していることを確認しました。「いまだに手作業ということは衝撃。総理はこのことをいつからご存じか」と聞くと、菅総理は「発生してからずっとそのような手法だと承知している」と答えました。いまだに手作業の集計をしなくてはいけないのは、昨年5月から12月までに12億円もかけているHER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)が、東京都の感染者を800人漏らすなどの不備があって機能していないからだと指摘しました。

 また、3億9000万円をかけて開発した新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)が770万人のユーザーに情報が届いていなかった問題について、いつ正常化するのかただしました。田村厚生労働大臣は、「委託事業者になるべく早く修正するよう要請しているところで近く修正システムを配付できる見通し」と答弁しましたが、時期については回答しませんでした。厚生労働省では、雇用調整助成金申請のサーバーが不具合も発生しており、新型コロナウイルスワクチン接種を管理するV-SYSが正常に機能するのか、さらにマイナバーと紐づける計画について強い危惧を示しました。

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 続いて、東京オリパラ大会に向け政府が73億円をかけて投入する観客等の健康管理アプリを取り上げました。アプリ開発の契約では、海外からの観客80万人と選手と関係者40万人の合計120万人を対象としているが、それだけの人数を海外から受け入れることを想定しているのかただしました。橋本オリパラ担当大臣は「選手団は1万5000人程度。海外からの観客については、大会実行委員会の調整会議で本年春までに決めることになっている」と答弁。尾辻議員は「無観客でおこなうことになった場合は無駄遣いになるのではないか」と指摘しました。また、このアプリを使用すれば14日間の待機の免除、ワクチン接種が必要ないことを前提にしていることを問題点として挙げ、感染防止の有効性に疑問を投げかけました。そして「アプリの導入に前のめりになるのは危険で、無駄遣いになりかねない」と忠告しました。

 次に、尾辻議員は東京オリパラ大会の理念である「多様性と調和」を取り上げ、「大会を契機に日本が本当に多様性を認める国になってほしい」と表明しました。同性愛者の当事者として、自らが、また家族が経験した生きづらさについて語りました。また、社会から否定されることをおそれてLGBTQの方がなかなかカミングアウトできない実態、自殺を考えるほど追いつめられることなどを紹介し、同性婚の法制化、LGBTQの差別解消法が必要だと訴えました。

 菅総理に「自分の子どもが同性のパートナーと一緒になりたいと言われたら何て答えるか」と尋ねると、「仮に自分の家族がそういう状況にあったとしても、当事者双方の性別が同一である婚姻の成立を認めることは、まだわが国では憲法上想定されていない」と従来の答弁を繰り返しました。また、子どもが同性愛者であることを受け止めるか否かを問うと「仮のことにお答えするのは控える。非常に複雑な心境の中で、検討に検討を重ねる立場になるだろうと思う」と同性婚の可否については明言を避けました。

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 次に、介護従事者へのワクチン接種について、特別養護老人ホーム等の介護施設に勤務する従事者は優先接種の対象なのに訪問介護の従事者が対象外であることを取り上げ、勤務先によらずすべての介護従事者を優先接種の対象とするよう求めました。

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