名古屋出入国在留管理局の施設で収容中だったスリランカ人女性のウイシュマ・サンダマリさんが死亡した問題で、出入国在留管理庁は10日、最終報告書を公表しました。法務部会はこれを受け11日夕、国会内で会議を開き、この最終報告書について法務省出入国在留管理庁よりヒアリングをおこないました。

 安住淳国会対策委員長は同日自民党の森山国対委員長と会談し、最終報告書公表に伴う質疑と監視カメラ映像の開示について、衆参法務委員会の筆頭理事間で協議することを確認、衆院では16日午後、参院では17日午後にそれぞれ理事懇談会を開くことで合意しました。

 冒頭のあいさつで法務部会長の真山勇一参院議員は、「死因が分かっていないのはどういうことか」と述べ、最終報告書と言いながら、肝心な死因を特定していないことを問題視。真相解明のためには監視ビデオ映像の開示が必要だとあらためて強調しました。

 出入国在留管理庁は、2020年8月20日の収容開始から2021年3月6日に搬送先病院で死亡が確認されるまでの健康状態・医療的対応等の事実経過や、調査により判明した死因に関する見解等、本件における名古屋局の対応についての検討結果等を説明。死因等については「病死ではあるが、複数の要因が影響した可能性があり、具体的機序の特定は困難」と位置付けています。

 質疑応答では、参加議員から「死因が特定できていない」との理由で報告書の提出が大幅に遅れたにもかかわらず、結局「特定できていない」との結論に終始していること、3月4日の外部の病院受診(精神科)で抗精神病薬、睡眠誘発剤を処方され、服用を開始した翌日から脱力した状態が多くなっていることから、この処方が適切だったのか、加えて報告書でその点について「落ち度はない」と断言していることの根拠等について説明を求めましたが、明確な説明はありませんでした。報告書ではウイシュマさんの体重が激減していること、食事もほとんど摂っていないことも明らかになっており、そうした中でなぜ適切な対応がとられず、十分な医療を受けられなかったのか、死亡確認当日、朝から血圧・脈拍を測定できない状態であったなか午後3時過ぎに搬送先病院で確認される約1時間前まで救急搬送を要請しなかった職員の対応に問題はなかったのか等、さまざまな意見が上がりましたが、法務省の説明は名古屋局に常勤の医師がいなかったことなど医療体制の不備を挙げるにとどまりました。会議内で収まらなかった質問については取りまとめ、後日法務省に回答を求めていくこととしました。

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 会議後に記者団の取材に応じた真山部会長は、最終報告書について「納得しきれないものが多すぎる。死に至るという危機感がなく、誰がどういう責任をもって対応していたのかが明確でない。最終報告書と言いながら問題が残っている。具体的な改善策を求める」などと指摘。衆参両院で法務委員会理事懇を開いたのち、なるべく早く閉会中審査を開くよう求めていく考えを示しました。また、出入国在留管理庁が遺族に対し開示するとしているビデオの映像については、全体で300時間程度(2月22日から3月6日)のうち編集した2時間(字幕ではなく、解説書付き)であることが明らかになったことから、「遺族だけでは内容が適正かどうかの判別も難しい。弁護士ら代理人の立ち合いが必要ではないか」と主張。国会への映像開示については、体調が変化した前後など大事なところを指定した上で、ノーカット、ノー編集のものを求めていく考えを示しました。