衆議院予算委員会は18日、「社会経済情勢・外交等内外の諸課題」に関する集中審議を開き、立憲民主・無所属のトップバッターとして野田佳彦衆院議員が質問に立ちました。野田議員は、(1)経済外交(2)皇位継承有識者会議報告書(3)国境離島――について取り上げ、岸田総理らの見解をただしました。

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■経済外交について

 野田議員は冒頭、17、18日とインドネシアで開かれている20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議について、その重要性を指摘した上で、鈴木財務大臣が欠席し、その代理として財務官が出席したことに言及。「インフレ懸念が高まり、アメリカは3月から利上げする観測が高まっている。どうやってインフレを退治するか各国が身構えて、日本だけはデフレ懸念が残っているから利上げはできず、むしろ金利抑制という独自の動きになっている。まさに崖っぷちの状況になっている重大な局面。しかも、ウクライナ情勢が緊迫している。さらに資源や穀物の価格が上がる可能性がある。その重大局面において、なんで財務大臣がここにいるのか。新時代のリアリズム外交と言うのであれば、リアルに議論して現場に行って情報を集め、自分たちの主張をするのがリアリズムの原点ではないか」と迫りました。

 しかしながら岸田総理は、「適切に判断した」と答弁。野田総理は、「私は全くそう思わない」と述べ、鈴木財務大臣は昨年10月13、14日に開かれた前回会議と2回連続の欠席であること、昨年10月31日に開かれたG20首脳会議には、衆院選挙の投開票日であることを理由に岸田総理も出ていないことにも触れ、「国内政局を優先して、重要な国際会議に欠席続き。これで外向を語る資格は全くない」と断じました。

 次に、自身が総理の時の2011年11月、自民党が強烈に反対する中ホノルルAPEC首脳会議で交渉参加に向けて協議に入る政治判断をしたTPP(環太平洋経済連携協定)と、2012年11月にASEAN関連首脳会合で交渉を開始し、今年1月1日に発効したアジアの域内包括的経済連携(RCEP)について、「現在11カ国で構成されている、厳しく条件化した自由化率の高い高レベルの連携協定」「中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド及び東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国が批准した、東アジアの貿易自由化を主な目的とした経済連携協定」だとそれぞれの意義を強調。双方を包括するアジア太平洋自由貿易圏の実現に向け、日本は中核的な役割を果たせるとして、「そういう大きなビジョンの中で戦略的な外交を推進していくべきだ」と提起しました。

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 また、英国や中国、台湾、韓国等がTPPへの加盟申請をしていることには、「大きな理想を掲げながら現実的にどう対応するかが問われる。リアリズム外交の真骨頂がここにある」と指摘。台湾が食品輸入禁止措置を事実上解除する方針を示したことを1つの材料として、中国や韓国に対してもこれを迫るくらいの主導的な立場で加盟申請にあたるべきとの考えを示しました。 「高いレベルの、自由化率の高いTPP。ハードルの高い、厳しい条件に中国は応じるのか、厳しく追及する。ハイスタンダードのルールに従うかどうかを厳しく問うのが基本姿勢。それでOKだと中国が言ってくるのであれば世界にとってはウエルカム。この交渉を通じて中国の経済改革を日本が促していくくらいのスタンスで対処していくべき」だと主張。岸田総理は中国の加盟申請に関して、「日中関係はわが国にとって重要な2国間関係の1つ。TTP11の高いレベルを満たすかどうかも合わせて、日中関係の中でしっかりと議論を行い、結果として日中関係を安定したものにしていくことがわが国の国益につながると考える」と答えました。

 野田議員はまた、米国に対してTPPへの復帰を促すべきとも主張。あらゆるチャンネルを通じて粘り強く説得するのが大事だと述べると、岸田総理も「引き続き粘り強く働きかけていきたい」と応じました。

■皇位継承有識者会議報告書

 党「安定的な皇位継承に関する検討委員会」委員長の野田議員は、昨年12月に政府の有識者会議がまとめた最終的な報告書をめぐり、立ち上げも取りまとめも遅かったと問題視。内容についても、立法者の総意としての付帯決議で要請した諸課題について回答していないとして、「国会を軽視しているのではないか。なぜ本質的な問題を先送りするのか。次世代の皇位継承者がたった1人しかいない危機感があまりにもなさすぎる」と述べました。

 野田議員は、報告書にある提案の1つ「女性皇族と結婚した配偶者と子は国民」という制度設計について、「さまざまな権利が保障される国民と、その制限のある皇族とが1つの家庭を営む上で不自然ではないか」と指摘。岸田総理は「1つの方策として示されたと認識している。具体的に制度をどうするかは、議論を経て今後検討されるもの」との見解を示しました。

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■国境離島について

 野田議員は、国境離島を起点として日本の領海、排他的経済水域が決まることから、「日本の国土面積は世界で61番目である一方で、離島を起点として沿岸戦から測ると排他的経済水域は世界で6番目の広さ、深さを考えると世界で4番目になる海洋大国。起点となる国境離島を大事に維持管理することが領土領海を守っていくためには鉄則だ」とその重要性を強調。その上で「日本の領海と海洋大国484の国境離島の存在をすべて確認できているのか」と尋ねると、二之湯国務大臣は、「慎重に確認を進めているところ」だと答弁。野田議員は「確認できていないと排他的経済水域を主張できない」と述べ、確認状況について資料として委員会に提出するよう求めました。