衆院憲法審査会が5月25日に開かれ、立憲民主党の階猛、奥野総一郎、本庄知史の各議員が国民投票法制定後の環境変化を踏まえ、法改正の必要性を説きました。
 
■放送CM規制、ネットCM規制

 階議員は、賛否の勧誘のための放送CMに関して、現行国民投票法が主体を問わず、国民投票期日2週間前から禁止としているのに対して、国民投票運動の全期間にわたって禁止する改正を提案しました。改正の根拠となる立法事実については、「現行法制定時には勧誘CMの量を憲法改正案の賛成側と反対側で均衡させる。いわゆる量的規制につき民放連が自主的に行うこととされていたにもかかわらず、現在は量的規制は困難であるとして、直接的な規制は行わない」とする民放連の姿勢の変化を指摘しました。

 さらにネットやSNSの普及により、現行法制定時にはなかったアテンション・エコノミーという状況が生まれ、CM業界が人々の関心と時間を奪い合う競争が激化し、多くの人々の関心を惹きつけるためだけの扇情的なCMなどが増加していると指摘。「国民が多種多様で適切な情報を得られるようにするための規制の必要性が高まっている」と述べました。

 ネットCMに関しても、市場規模が急速に拡大し、今や放送CMを上回る規模になったと言われているにもかかわらず、「ネットCMの規制が欠如した現行法を漫然と放置することは立法府の怠慢だ」と述べました。立憲民主党が提案しているネットCM規制については「政党等の勧誘CM及び意見表明CMを禁止した上で、それ以外の主体によるネットCMについては勧誘CM及び意見表明CMを問わず、当該CMの主体に関する情報を表示し、資金規制を守っている限りは自由としている」と説明しました。

 最後に階議員は「国家レベルの政策を直接民主主義によって決定する唯一の機会である憲法改正国民投票が適正かつ公平に行われるためにネットCM規制を国民投票法に盛り込むことは最優先で行うべき課題である」と訴え、発言を終えました。


■資金規制

 奥野議員は、憲法改正に真剣に取り組むのであれば、これまでほとんど議論されてこなかった国民投票運動の資金規制について審議すべきだと提案しました。英国、オーストラリア、ニュージーランドの国民投票運動における支出規制、外国人及び外国法人からの寄附の禁止などの事例を紹介し、「資金の多寡で国民投票の結果が左右されたり、わが国の憲法改正に対する外国政府の干渉をみすみす認めるべきではない」と訴えました。

 その上で、国民投票が行われている国の例を参考にし「国民投票法を改正すべき」と力を込めました。立憲民主党の国民投票法改正案にも言及し「運動資金が特定の者や外国人に依存することを防ぐよう、一人当たりの寄附の上限額の設定、外国人寄附の受領禁止などの規制を規定してある。資金の多寡で投票結果を左右させない。外国政府に干渉させないため絶対に必要な措置であり、ぜひこの場でも議論をしてもらいたい。運動資金規制について集中討議及び参考人質疑を求める」と発言しました。

 本庄議員は、国民投票について安全保障との関係から発言。5月24日の衆院本会議で可決された防衛財源確保法案について「名ばかりであり、実態は防衛力の抜本的な強化にも必要な財源の確保にもならない重大な欠陥法案だ。にもかかわらず、政府与党は防衛費倍増GDP比2%といった、数字ありきで他の政策との優先順位やバランス、財政状況も考慮せず、5年で43兆円もの常軌を逸した予算をつぎ込もうとしている」と痛烈に批判しました。総合的な見地から安全保障上、今なすべき最たるものとして「外国勢力によるフェイクニュース、偽情報の流布、巨額の資金を用いた世論操作等も想定される中、これらを規制するための国民投票法の改正こそ、今国会で行うべき安全保障論議だ」と述べました。