立憲民主党は4月25日、国民民主党と共同で議員立法「カスタマーハラスメント対策法案」(正式名称:労働安全衛生法及び特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案)を参院に提出しました。

 職場で行われる顧客や利用者等による社会通念上許容される範囲を超えた言動、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)により、働く人たちが心身に大きなダメージを受け、時には命にもかかわる深刻な問題になっています。本法案では、カスハラにより労働者の就業環境が害されないよう、事業者に以下の措置を講ずるよう義務づけます。

(1)カスハラへの対処方針の明示・実施

(2)労働者からの相談に適切に対応するための必要な体制整備

(3)カスハラに関する正確な事実の把握等の事後対応、仮処分命令の申立ても含むカスハラの抑止のための措置その他の必要な措置

 本法案が成立することで、働く人が被害に遭わないよう予防措置を講じるとともに、被害に遭った場合は事業者に責任を持って対応してもらえるようになります。政府が提出した「労働施策総合推進法等の一部を改正する法律案」(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案)にもカスハラ対策は盛り込まれましたが、本法案では悪質性が高い場合は裁判所に仮処分を申し立てることができたり、労働安全衛生法に規定することで労働基準監督官など既存の行政の体制やメカニズムが活用できたりすることで、政府案と比べて実効性がより高いものとなっています。加えて、加えて、国家公務員や事業者から委託を受けるフリーランス、フランチャイズ・オーナー等も保護の対象になるよう措置します。

 法案提出後の記者会見で、発議者の石橋通宏参院議員は「2018年の働き方改革関連法案の議論の時、パワーハラスメント(パワハラ)の類型の一つとしてカスハラを位置づけ、パワハラの対策にはつながったが、カスハラは先送りだった。今回の政府案は一歩前進かも知れないが、内容は不十分なので、立憲民主党も昨年から議論してきた。国民民主党も独自の法案を昨年、国会に提出したので、両党間で案を持ち寄ってより実効性のあるものを、ということで協議して、両党で合意して共同で提出した」と、法案提出の経緯を説明しました。その上で、石橋議員は「政府案との最大の違いは、既存の労働安全衛生法のメカニズムを最大限活用して、カスハラから労働者を守ることができる、という位置づけ。私たちは今ある仮処分という制度の活用を盛り込み、事業主がもうこれ以上では労働者の命を守れないという時に裁判所に申し立てて認められれば、電話をかけてはいけない、お店に入ってはいけない、本人に近づいてはいけない、といった、さまざまな仮処分を出すことができるよう、労働者の命を守る手段として法的に位置づけた」と述べました。また、賛成者であり、バスの運転士として働いた経験がある森屋隆参院議員から「事業者ごとにカスハラ対策のガイドラインをつくっているが、事業者ごとの判断が非常に難しい。事業者や働く人だけではクリアできない問題が多々ある。この法案がかなり後押しになるのではないか」と発言しました。

 立憲民主党の発議者は石橋通宏(筆頭提出者)、森本真治の各参院議員です。また、賛成者の小沢雅仁、村田享子、森屋隆各参院議員も出席しました。
20250425_1概要(カスハラ・労安衛法).pdf
20250425_2要綱(カスハラ・労安衛法).pdf
20250425_3法案(カスハラ・労安衛法).pdf
20250425_4新旧対照表(カスハラ・労安衛法).pdf
20250425_5閣法との対比表(カスハラ・労安衛法).pdf
20250425_6閣法との違いについて(メモ)(カスハラ・労安衛法).pdf