野田佳彦代表は11月3日、山形県を訪れ、畜産農家の視察や座談会、市民との対話集会に参加しました。一連のイベントには、原田和広衆院議員(山形1区)、落合拓磨山形3区総支部長、高橋啓介県議も同行しました。
今回の山形訪問は、立憲民主党のキャンペーン「ここからはじまる」(略称「ココカラ」)の一環で行われました。当キャンペーンは「聞く、つなぐ、変える」をコンセプトに、党所属議員、総支部長らが一体となって市民の声を政治に届けることを目指すものです。安住淳幹事長も同日、福岡県でキャンペーンをスタートさせました。
【畜産農家】

■視察
野田代表は山形市内の畜産農家を視察しました。今回訪問した農家は畜産業に携わって56年になるベテランで、長年の経験をもとに現場の実情を教えていただきました。
この農家では、出荷までにおよそ2年間かけて牛を育てていますが、近年は飼料費の高騰が大きな負担となっています。以前はひと月あたり1万円ほどで済んでいた餌代が、ウクライナ戦争による穀物市場の高騰や円安の影響で、現在は約1.4倍にまで増加しているといいます。

さらに、今年9月の長雨の影響で、餌となる麦わらや稲わらが不足。やむを得ず輸入飼料を購入した結果、約300万円の追加コストが発生したとのことです。
■座談会

野田代表は視察を終えた後、農家との座談会に参加しました。
農家の方からは、「株価が上がっているとの報道があるが、円安の影響で輸入品が高くなっている。国の政策は大企業や資産を持っている人には良くても、私たちのような現場の農家には厳しい」と現行の経済政策に対する率直な不満が寄せられました。餌代は以前の1.4倍に膨れ上がり、ガソリンや軽油などの燃料費も上昇。経営を圧迫しているといいます。また、コロナ禍前は国が子牛生産の費用の9割を負担していましたが、コロナで肉の価格が下落した影響から、当時多くの農家が生産をやめてしまいました。その結果、現在は子牛の数が不足し、価格が高騰。肉の販売価格に見合わない状況が続いています。
また、農家の方は「餌代が高騰しても販売価格に転嫁できない」「農業を始めたころ、先輩から『国の言うことと反対のことをやれば間違いない』と言われた」と、現在の政策への不信感も吐露しました。
こうした声を受けて野田代表は、「コロナや戦争のように予測できないことが起こっても、そのたびに農業政策をころころ変えてはいけない」と述べ、安定した農業支援策の必要性を強調しました。

【対話集会】
野田代表は最後に、山形市内の対話集会「立憲民主党代表野田佳彦が『聞き・つなぎ・動く』」に参加しました。対話集会は野田代表の講演後、参加者から質問を募る形で進められました。

■野田佳彦代表の講演
冒頭、野田代表は本集会の意義について「私は40年間、駅前に立ってマイクを握り、自分の主張を訴えてきたが、途中から『聞く』ことの大切さを学んだ」と語った上で、「聞きっぱなしでは意味がない。聞いた声を国会や地方議会につなぎ、実現に動く。これが政治活動の原点だ」と強調。「聞き・つなぎ・動く」という取り組みの意義を説明しました。
野田代表は講演内で、主に物価高対策の必要性について訴えました。「街頭に立つと『なんとかしてほしい』という悲鳴に近い声が多い。臨時国会で最初にやるべきは、議員定数削減ではなく物価高対策だ」と話し、ガソリン暫定税率の廃止や、10月31日に立憲民主党が衆院に提出した「食料品消費税ゼロ法案」の必要性を強調しました。
また、野田代表は自民党の経済政策にも言及し、「アベノミクスの恩恵は山形や地方には届かなかった」と批判。「円安で輸出型大企業と資産を持つ人は潤ったが、地方や中小企業、働く人には回ってこなかった。格差が広がっただけだ」と指摘した上で、「富が上から滴り落ちる“トリクルダウン”は起きなかった。受け皿で待つ地方や働く人にこぼれてこない。格差を是正するのが政治の使命だ」と力を込めました。
■質疑応答

公務員をしているという男性からは、野田代表に「感情をあおる政治が目立ち、社会保障の現場が軽視されている。社会保険料や税金は悪者だとの言い方もされるようになってきている」と政治の現状に対する懸念が投げかけられました。野田代表は、「中道という立場は地味で、バズらない。だが現実の暮らしを地道に良くしていく政治こそ必要だ。右にも左にも偏らず、暮らしと自由、平和を守るブレーキ役を果たしたい」と話しました。さらに、「減税は中長期で続ければ財政がもたない。当面の間に限定し、財源を示すのが責任ある政党のやり方だ」と説明。社会保障については「子育て、教育、医療、介護――誰もが人生のどこかで必要とする『ベーシックサービス』を、税と保険料でしっかり支える国をつくる」と語りました。
さらに他の参加者からは、綱領に掲げる「原発ゼロ」と現実とのギャップを問う声も上がりました。野田氏は「『一日も早く原発ゼロを目指す』という綱領は結党の理念であり、消すべきではない」と断言。その上で、「私自身、総理の時に大飯原発3・4号機の再稼働を決断した。当時は官邸も自宅もデモ隊に囲まれたが、電力の安定供給のために必要な判断だった。再稼働は一定の条件を満たせば認める。一方で新増設は進めない。理念と現実の両立を図る」と説明しました。
また、東北で相次ぐクマ被害について、国の支援を求める声も上がりました。野田代表は、「立憲民主党として10月28日にクマ対策提言を農水大臣に提出した。短期・中期・長期で対策を整理したものだが、特に自治体職員や猟友会の人材不足をどう補うかが急務だ。自衛隊OBや警察OBの臨時活用など現実的な支援策を検討している」と説明。また、「この問題は地方任せにできない。国としての責任を明確にする」と述べ、翌日(4日)の国会代表質問でも取り上げる意向を示し、「聞くからつなぐの第一歩にしたい」と話しました。

