安住淳幹事長は12月8日、衆院本会議において、片山財務大臣の財政演説に対する代表質問を行いました。安住幹事長は(1)物価高対策と経済対策の規模、(2)補正予算案の内容(基金・防衛費など)、(3)財政規律、(4)政治改革――等について政府の見解を質しました。

予定原稿は以下のとおりです。

第二百十九回国会における片山財務大臣の財政演説に対する代表質問

2025年12月8日

立憲民主党・無所属 安住淳

 私は立憲民主党・無所属を代表し、令和7年度補正予算案について質問いたします。

 質問に先立ち、大分市佐賀関で発生した大規模火災で亡くなられた方や被災された方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。与野党を挙げて、復旧復興のために全力を尽くしたいと思います。

 また、香港においても、大規模火災で多数の方々が亡くなられています。多くの日本人が募金などを通じ、被災者支援にあたっております。こうした民間人によるきずなを大切にするためにも、政府には日中関係の改善に努力するよう求めます。一方、中国軍のレーダー照射について、強く抗議をします。同時に中国政府にも冷静な対応を強く求めるものです。

(1)物価高対策と経済対策の規模について

 本題に入ります。物価高が続いています。10月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月と比べて3%上昇しました。2%以上の上昇が実に3年半にもわたって続いており、家計を苦しませています。賃上げ率が高い水準といっても、実質賃金はマイナスのままであり、中小・零細企業にいたっては、この物価高のなか賃上げをする余力すら乏しいのが実態です。私たちは物価高で苦しむ国民に手厚く、温かい支援を急ぐべきだと、これまでも強く主張してきました。12月に入って、ようやく補正予算案の審議が、今日から始まりますが、はっきり申し上げて、遅すぎます。党内政局に時間を使い、国民の苦しみを放置した自民党の責任は極めて重いと考えます。このことについて、まず高市総理の見解を伺います。

 それでは、補正予算案の規模について、まず伺います。補正予算案の総額は、減税分をあわせて21.3兆円にのぼります。物価高への対応は必要だとしても、なぜ、これだけの規模に膨らませる必要があったのか、極めて疑問です。歳入をみると、税収増などを除き、11兆円を超える新たな国債を発行して財源に充てています。これだけ多額の国債を発行してまで補正予算を組んだのは、なぜですか。報道等によると、総理は「しょぼい、やり直し」とお述べになり、総合経済対策の原案に対し、さらに規模を積み上げるよう指示したといわれています。これは中身よりもまず規模ありきで、予算案の編成を指示したということでしょうか。総理の見解を伺います。

(2)補正予算案の内容について

 次にこの補正予算案の内容について、何点かただしていきたいと思います。

 まず、国民が最も必要としている、喫緊の課題である物価高対策については、9兆円ほどを盛り込んでいます。しかし、それ以外は、総理の持論である「危機管理投資・成長投資」、「防衛力と外交力の強化」など、その他の予算に振り分けられているのがこの予算案の大きな特徴です。財政法第29条では、補正予算は「本予算後に生じた特に緊要となった経費の支出」等の場合に限り、編成できるとされています。今回の物価高対策以外の予算は、この「緊要の支出」にはとうてい、あてはまらないものばかりではないでしょうか。私どもは、経済成長への投資や食料安全保障、防災・減災などの国の根幹に関わる事項については、その必要性を認めます。これらの予算は、堂々と本予算に計上し、議論すべきではないでしょうか。なぜ今回、物価高対策以外の項目を主に盛り込んだ補正予算案にしたのか、総理の説明を求めます。

 また、予算案のもうひとつの柱である防衛費についてですが、合計で1.1兆円を積み増し、国内総生産、GDP比2%水準の支出を「2年前倒しして達成する」と説明しています。防衛費の対GDP比は従来、当初予算だけから算出していました。これを補正予算にまわし、米軍再編事業などの経費に充てていることは、一言で言うと、筋違いだと思いますが、総理の見解をお聞かせください。

 では、物価高対策として計上されている項目について、具体的に指摘いたします。

 まず、子ども1人あたり2万円を給付する「子育て応援手当」に3,700億円、厳冬期の電気・ガス代支援に5,300億円、さらに物価高に伴い赤字経営に陥っている病院や介護施設への「支援パッケージ」として1.4兆円の支援が盛り込まれていることは、我が党もその必要性を認めます。一方で、2兆円を計上している「重点支援地方交付金」の拡充について、その使いみちは原則としてそれぞれの地方自治体の判断に委ねられています。このお金を、真に効果的な物価高対策にするためには、より明確で具体的な指針を示すべきではないですか。政府の見解を伺います。

 次に、基金について伺います。およそ「緊要の支出」とはいえない代表例が、基金への予算の積み増しではないでしょうか。補正予算は本年度中に執行される事業に予算措置するものです。ところが、今回の予算案を詳しく見ると、こうした趣旨から、かけ離れた項目が散見されます。たとえば「宇宙戦略基金」は、私が予算委員長として審議にあたった3月末時点でも、5,900億円が未執行で残っていて問題になりました。ここに、今回2,000億円をさらに上積みしようとしています。このほか、「造船業再生基金」、「デジタルインフラ整備基金」、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発基金」など、すべてを羅列すると、私に与えられた質問時間をはるかにオーバーするので省略しますが、こちらで調べただけでも41もの基金に、総額2.4兆円以上が計上されています。この積み増した基金をこれまでの基金と合算すると、今年度末で13兆円もの残高が積み上がる見込みとなります。今、長期金利はじわりじわりと上昇しています。仮に足元の10年物国債の長期金利1.9%をあてはめて、単純に計算した場合、この13兆円の基金を何も使わず積んでいるだけで、年2,400億円を超える国債の利払い費が必要となります。何もしないで、これだけの利払い費を払い続けることこそ、究極の予算の無駄遣いではありませんか。なぜ、基金をこれだけ積み増す必要があるのか、説明を求めます。

 次に、交付金について質問します。今回、新たに「地域未来交付金」が創設され、1,000億円を計上しています。よくみると、石破前総理が1年前につくった「新しい地方経済・生活環境創生交付金」とほとんど中身が同じです。名前を変えただけで、同じ中身の交付金をなぜ新たに創設する必要があったのでしょうか。まさかとは思いますが、単に「石破色」を払拭したかったために、この交付金を作ったのではありませんよね。総理の説明を求めます。

20251208_132424.JPG


(3)財政規律について

 昭和50年、第1次オイルショックにより日本経済がマイナス成長に陥り、当時の大平正芳大蔵大臣は赤字国債の発行を余儀なくされました。大平大臣は「赤字国債は万死に値する」と何度も口にし、悩んだといわれています。それはひとたび借金に頼ると雪だるま式に借金が膨らみ、危機が起きたときのツケは次の世代が払わなくてはならなくなる、という強烈な「罪の意識」からでした。令和のいま、この言葉は私たちに重くのしかかっているのではありませんか。この大平大蔵大臣の見識を総理はどのように考えておられるか、聞かせてもらいたいと思います。

 基礎的財政収支の黒字化目標について、総理は単年度ごとに達成状況を見ていくという従来の方針を「数年単位でバランスを確認する方向に見直す」と表明されました。数年単位でバランスをみるということであれば、将来のどこかの時点で黒字化すれば、足元は赤字が拡大してもよいと解釈されますが、よろしいですか。それが財政不安を呼び、悪い円安や、金利の上昇を招き、さらなるインフレにつながることになりませんか。総理は、「責任ある積極財政」を掲げていますが、放漫財政ともみえる大盤振る舞いの予算を作りながら、「財政健全化」を成し遂げるということは至難の業だと思います。この二つの目標をどうやって実現していくのか、私をはじめ、市場関係者にもわかるように、その道筋をお示しください。

 「租特および高額補助金について総点検を行い、政策効果の低いものは廃止する」。片山財務大臣が12月2日、政府の会議で高らかにそう宣言しました。その通りです。私も賛同します。しかし、そこまで言うのなら、この目の前の補正予算の無駄を見直したらどうですか。政府としての見解を総理にお尋ねします。

 この補正予算の中には、政策効果の低いものがたくさん見受けられると思います。私たちはこの予算について、緊要性のない予算を削除して、その分を中低所得者への更なる支援に振り替える内容とする対案を提出したいと考えております。是非、真摯に向き合ってもらい、具体的な話し合いをすることを呼び掛けたいと思います。

(4)政治改革について

 最後に、政治改革について伺います。与党は、衆議院の定数削減をにわかに持ち出し、今国会での法案成立を訴えています。

 3点質問します。1、なぜ総定数の1割削減なのか。2、1年以内に決めるという期限の理由は何か。3、1年以内に結論が得られなければ小選挙区25・比例代表20、トータル45議席を自動的に減らすという根拠は何か。自民党総裁である高市総理に、説明を求めます。

 総理、企業・団体献金の改革を行い、ともに政治資金の透明化を進めていきませんか。先の通常国会では自民党と立憲民主党の主張がぶつかり合い、残念ながら、改革は一歩も進みませんでした。私たちはその反省を踏まえ、今回、公明党と国民民主党が共同提出した法案に、賛同することに決めました。自民党が7700もの支部をつくり、企業・団体献金を受け取り続けていることは、もはや、とうてい許されるものではありません。まずは支部の数を大幅に制限し、透明性を高めていくという改革をともに進めようではありませんか。総理が決断すれば日本の政治は変わります。最後にご決意を伺い、質問を終わります。

20251208_132945.JPG