参院本会議で12月10日、旧統一教会問題をめぐる被害者救済法案(「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案」(消費者契約法等改正案)と「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」)を議題に質疑が行われ、採決の結果、「消費者契約法等改正案」は全会一致で、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案」は賛成多数で、可決・成立しました。
採決に先立ち立憲民主・社民の会派を代表して森本真治議員が賛成の討論を行いました。
森本議員は「今臨時国会、重要なテーマとなったのが、旧統一教会の問題でありました。本年7月、立憲民主党はいち早く旧統一教会被害対策本部を立ち上げ、被害の実態、現行法制度による救済の限界、具体的な救済の方策等について真摯な議論を積み重ねてきました。特に、宗教2世や元信者の被害者のみなさん、弁護団のみなさんからのヒアリングに力を入れ、被害の実態を伺ってまいりました」と述べ、立憲民主党がこの問題解決の重要性を強く受け止め、いち早くヒアリングを重ねてきたことに言及。「昨日、参考人として本院の委員会にも出席された小川さゆりさんは、ご家庭が寄附を続けていたことから、経済的な困窮状態で、学生時代のバイト代の約200万円も親に没収され、同じ時期に親は高額の寄付をしておりました。旧統一教会による苦しみから、これからの子どもたちを救いたい、と与野党のヒアリングにも参加し、被害を訴えていただきました」「橋田たつおさんは、元妻が入信し、合計約1億円もの高額献金をめぐり、夫婦間で喧嘩が絶えず、離婚せざるをえなくなり、家庭は崩壊し、息子さんは自ら命を絶たれております。橋田さんも、これからの子どもたちを同じような旧統一教会による被害にあわせたくないと訴えておられます。しかし、こうした被害を訴えてきた橋田さんに対し、旧統一協会側は、自宅にまで押し寄せ、『マスコミに出ないでほしい』『1対1で話がしたい』と迫るなど、深刻な被害を社会に訴えようとしている言論を封殺しようとするような非常識な行為まで行っています」と被害実態について語りました。
今なお被害が続き、日弁連の集計によれば、20年以上前に被害が始まったという相談が60.5%を占め、1,000万円以上の財産的被害が4割超、1億円以上の被害も5.5%に上ると説明しました。
立憲民主党は、必ず被害者の救済につなげなければならないとの思いから日本維新の会との共同提出で10月17日に悪質献金被害救済法案を提出。この法案では、マインドコントロールによって信者に高額献金等を繰り返させるような行為を「特定財産損害誘導行為」とし、このような行為により献金等を取り消せるようにしたものだと説明しました。さらに、マインドコントロール下にあって本人の取消が見込めない場合があることを踏まえ、特定補助制度を利用することにより家族などによる取消しも可能とすることにより、被害者やその家族を幅広く救済できるものとなっています。
われわれが法案を提出した当初、政府は今国会には消費者契約法等の改正案しか提出しない、本命である悪質な高額寄附に対応する法案は、今国会には出さない、との姿勢たったことを森本議員は指摘。しかし、立憲民主党が与野党協議や幹事長会談などを通じて粘り強く働きかけたことで、ようやく政府から法案が提出されたと、経過を森本議員は説明しました。
また、「当初、政府が提出した法案は、厳格な要件を付した寄附の勧誘に関する禁止行為を定めるばかりで、自由な意思決定を著しく困難とさせるような、いわゆるマインドコントロールに陥らせるという行為への対応は極めて不十分なものとなっていた」点も指摘。この点について粘り強く修正協議を行った結果、配慮義務規定に報告や公表が追加されるなど、一定の前進はありましたが、(1)寄附の取消し要件は依然として厳しく立証が困難であること、(2)マインドコントロールの影響を受けた本人が権利を請求するには、10年という時効は民法の20年とくらべてもまだまだ短すぎること(3)本人や家族の救済手段である債権者代位権の行使についても、扶養義務に基づく返還請求は主に未成年が対象となり、成人した家族は救済の対象外となるのではないかという懸念(4)未成年者が親の意向に反して取戻しを請求するのは現実的に困難ではないかとの批判もある――などの残されている不十分な点を列挙しました。全国霊感商法対策弁護士連絡会が発した声明でも、「加害行為の実態に即していない」との指摘がなされている点を森本議員は指摘しました。
森本議員はまた、昨日の委員会において、小川さゆりさんが、「今回短期間で新法を作ってくれたことに心から感謝したい」と謝意を示された一方「法案では宗教二世ら子供の被害が救済できない。来年の国会で宗教的な児童虐待を防止する法案を与野党で協力して成立させてほしい」とも訴えられたことに言及。積み残された課題を必ず解決することにより、全ての被害者が救済され、被害者になり得る全ての国民が安心して暮らせるよう、政府が率先して策を講じることを心から願う」と政府に求めました。
そして、「被害者が何度も被害を訴え、そのたびに現役信者や一般の方から攻撃され、深く傷つき、体調を崩しながらも訴え続けてきた」それは「政府が本当に動いてくれるのか、被害拡大の張本人の与党にそのような動きが見られなかったという事実を忘れないでいただきたい」と、小川さんは訴えられた内容にふれました。
「30年もの長きにわたり、政治も行政も問題を放置してきたことを反省し、まずは今回の法案を最初の一歩、歴史的な一歩とし、今後の予防救済策の実効性を向上させなければなりません。私たちの議員立法がきっかけとなり、与野党協議が重ねられ、政府により被害者救済法が成立することは、国会のあるべき熟議のモデルとして、歴史に残るものと確信しております」と訴え、実効性の向上に取り組む決意を表明しました。