立憲民主党は23日、年末緊急生配信「このままでいいのかCovid-19支援」と題し、生活困窮者の支援の現場にいる、反貧困ネットワーク事務局長の瀬戸大作さん、一般社団法人つくろい東京ファンドの小林美穂子さん、弁護士で生活保護問題対策全国会議事務局長の小久保哲郎さん、小椋修平・足立区議からオンラインで話を聞きました。党からは逢坂誠二、山井和則両衆院議員が参加、司会は尾辻かな子衆院議員が務めました。
逢坂議員は冒頭、「個人が生活できないという声が多いが、政府はそれに手を差し伸べようとしているようには見えない。補正予算ではまったく間に合わない、いま予備費を使って個々人の生活を助ける。それをやらないといけない」とあいさつしました。
■保護が必要な人が支援を受けられない
小椋区議は、首都圏を中心に約200名の超党派の議員によるネットワーク「コロナ災害対策自治体議員の会」を立ち上げ活動をしており、「ネットカフェで生活している人が都には4000人以上いると言われているが、全財産が数百円となって路上生活に出るという状況があちこちで見られる。緊急支援の対応に取り組んでいる。シングルマザーやDVの相談が増えて、そちらの対応も行っている」と報告しました。
また「なんといっても最後のセーフティーネットは、生活保護を扱う福祉事務所。本来あってはならないが、自治体議員が出向くと対応ががらっと変わる。連携し、しっかりと現場を見ながら、チェックをし、最前線にいる自治体議員だからこそできる支援をしている」と語り、福祉行政の改善に向け努力している状況を説明しました。
国に対しては「生活保護を申請する際の一番のネックは、扶養義務、扶養照会。親兄弟や親族に知られたくない、関係が悪くなるといったことを恐れて、日本では保護が必要な人が支援を受けられない。扶養義務、扶養照会の法規制について国会のみなさんには取り組んでいただきたい」と要望しました。
■手厚い若者支援と外国人への公的支援を
反貧困ネットワーク事務局長の瀬戸大作さんは、「12月に入ってから家賃滞納で追い出されるというメールが全国から集まっている。20-40代のSOSが多くなっているのが今回の特徴。この層には非正規労働の方が多く、非正規問題が非常に深刻になっている」と報告。続けて、「若い人は『僕の責任です』と言う。自己責任を強いてしまった社会で、苦しいときに苦しいと言える社会を作ってこなかった。このことがとても大きい。生活保護を受けることに申し訳なさを感じて、保護を受けることを嫌がる傾向にある」と訴えました。
そして「お願いしたいのは、手厚い若者支援。例えば公営団地への若者の受け入れや、家賃補助、就労支援が切なる願い。そして、支援を受けられないままに放置されている外国人への公的支援を行っていただきたい」と訴えました。
▼反貧困ネットワークホームページ
https://www.hanhinkon.com/
▼年越し大人食堂(年末年始緊急相談会)
https://corona-kinkyu-action.com/2020/12/21/toshikoshi-otona-syokudo/
▼「反貧困ネットワーク・緊急コロナ災害アクション」のクラウドファンディング
コロナ禍の年末年始、住まいを失う方にあたたかな居所と支援の手を届けたい!
https://camp-fire.jp/projects/view/347557?fbclid=IwAR0ExPft--BTIAliLNuHbEP2hHwSAV_TYLof5QMOQzNbh1esSuNTr_l_3iQ
■あなたの命が大事なんだ、あなたには生きていて欲しいんだ、生きてください
一般社団法人つくろい東京ファンドの小林美穂子さんは、「コロナが広がった当初から女性のSOSが続いた。ネットカフェに滞在していた女性は若い層が多かったというのが印象的だった。緊急支援した女性は、お金がなくどうしようもなくて腎臓売れるかなど検索していたと言っていた。衝撃を受けた」と現状を報告。
さらに「最近になり高齢者の単身女性が路上に出ることが起きている。先日出会った野宿をされている方は、コロナになり路上に出たと言っていた。高齢の方も、自己責任論や人に迷惑をかけてはいけないという意識が強く、生活保護の支援につながらないという状況にある。ここまでみんな頑張っているのに、まだ自助が足りないのかという、深い憤りを感じている。どこまで頑張ったら許してくれるのか」と訴えました。
そして「第1波ではネットカフェの底が抜けた、これからは家にいた人の底が抜ける。しかもその予備軍というのは、どんどん若くなっていくはず。女性で単身で非正規雇用の人たちがあとに続く。自己責任論や生活保護バッシングが根強くあるので、それを払拭する大々的な宣伝をしていただきたい。『あなたの命が大事なんだ、あなたには生きていて欲しいんだ、生きてください』というメッセージで、自己責任論の呪いを解いて欲しい」と語りました。
▼つくろい東京ファンドホームページ
https://tsukuroi.tokyo/
▼「つくろい東京ファンド」のフミダン(生活保護申請)
申請書作成の手助けをしてくれるサイト
https://fumidan.org/
▼著書『コロナ禍の東京を駆ける』
https://tsukuroi.tokyo/2020/12/06/1461/
■生活保護=不正受給というスティグマ(刻印)が身体に染み付いてしまっている
弁護士で生活保護問題対策全国会議事務局長の小久保哲郎さんは、「『命と暮らしを守る』電話相談には、8000件近い相談が寄せられた。4月は、自営業者やフリラーンスが多かった。6月8月になると、非正規の方の労働相談が増加した。10月12月には、無職者からの生活相談が増えた。生活保護に関する相談は一貫して増えている」と指摘。「非正規を中心に失業、減収する傾向にある。貸付や住居確保給付金で生活が支えられている場合もあるが、その期限が切れ始めている。延長はされているが、規制が強くされ始めている。生活が行き詰まっているという方が増えているという印象だ」と報告しました。
そして「生活保護に関する扶養照会については、民法を改正しなくとも、通達を変えれば対応できるはず。通達でも、扶養が期待されないDVなどの場合には、扶養照会しなくてもいいことになっている。この運用を徹底していくことが、現状の改善には必要」と指摘。「今いよいよ生活に行き詰まる人たちが出てきて、生活保護の出番になる。しかし、生活保護だけは受けたくないと、忌避感を示す人が多い。生活保護=不正受給というスティグマ(刻印)が身体に染み付いてしまっている。これを払拭する広報を国をあげてやっていくべき」と訴えました。
▼権利性が明確な「生活保障法」の制定を!日弁連
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/190520_seikatsu_hosyo.pdf
▼いのちのとりで裁判全国アクション
2013年に平均6.5%・最大10%の生活扶助基準の引き下げが決められ、3回に分けて実行されました。この史上最大の生活保護基準引き下げに対して、現在、全国29都道府県、1,000名を超える原告が違憲訴訟を提起し、国・自治体を相手に裁判で闘っています。
https://inochinotoride.org/index.php
■すでに制度を議論する段階ではなく、とにかく困っている方に手を差し伸べていくべき
今回、話を聞きそれぞれの議員は次のように語りました。
尾辻かな子議員
本当に切実な声を聞いて、胸がいっぱいになった。他方で、今やらないといけないこともはっきりした。自己責任論の罠にはまらないで欲しい。さまざまな支援策を立憲からも絶えず発信していく必要性を再確認した。
山井和則議員
生活保護という最後のセーフティーネットが機能していない日本。そこをちゃんと修理をしないと、コロナで人々が亡くなってしまうのではという危機感がある。生活保護を当然使っていいんだということを広げる必要があると痛感している
逢坂誠二議員
女性、非正規、若者、単身高齢者の方々へひずみが一気に来ていると改めて痛感した。しかし、こうした実態が国民のみなさんに知られていない。共有することが大事だと改めて感じた。すでに制度を議論する段階ではなく、とにかく困っている方に手を差し伸べていくべき。