衆院予算委員会で4日、一般会計総額106兆円の2021年度予算案が実質審議入り。菅総理はじめ全閣僚が出席する基本的質疑が行われ、会派「立憲民主党・無所属」のトップバッターとして枝野幸男代表が質問に立ちました。質疑のなかで枝野代表は、『zeroコロナ』への政策の大転換が必要だとあらためて強調。施策の3本柱として(1)医療の崩壊・壊滅を食い止め、命を守る(2)感染者の早期把握と確実な隔離で、感染を封じ込める(3)完全に封じ込めまで、十分な支援で暮らしと事業を守る――を掲げ、その具体策を提案しました。

 枝野代表は冒頭、「今の日本の社会、政治の最大の課題は、新型感染症から命と暮らしを守ること。これに尽きる」と表明。この危機を乗り越えるために必要な、国民の理解と協力をいただくためには政治が真摯(しんし)に正面から説明をすることがリーダーとしての最大の役割だと述べ、菅総理にこの点を踏まえた答弁を求めました。

緊急事態宣言の延長に伴う生活と事業への支援

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 枝野代表は、今回の緊急事態宣言の延長により、生活困窮の状況にある皆さんは再建に向けた動きが困難、不可能な状況が続き深刻化、事業継続がすでに困難になっている事業者の皆さんにとってはさらに厳しい状況が継続することになると指摘。今回の延長を支援充実のための機会にしなければいけないとして、すでに議員立法を提出済みのもの等を含めて暮らしを守るための具体策を提案しました。

 特に、休業支援金・給付金の対象に感染拡大に伴う休業手当を受け取れなかった大企業の非正規労働者を追加することについては、党として昨年来当事者からのヒアリング等を重ね、政府にも再三にわたり要望。川内博史衆院議員が同行して実現した、1月29日の菅総理と当事者との面談の際には、菅総理は前向きな発言をし、同日午前の委員会では「対象に加える方向」だと答弁しました。これを受け枝野代表は具体的な期限を田村厚生労働大臣に確認、「平時でないのだから週単位ではなく日にち単位で結論を出す。そういう決意で臨んでもらいたい」と求めました。

 また、1月29日の面談の際にシングルマザーから要望のあった、低所得のひとり親家庭や生活に困窮する子育て家庭に対する、新入学や進級に備えた臨時交付金の支給に言及。菅総理は、緊急小口資金の限度額を140万円から200万円に引き上げるとともに、住宅確保給付金の再給付を行う予定であることを挙げ、「こうした重層的なセーフティーネットを活用して乗り越えていただきたい」と答えました。

 枝野代表は、緊急小口資金の限度額の60万円引き上げや、減収世帯に対する返済免除については、一定の評価する一方、返済免除が決まっているのは200万円のうちの元の20万円だけであることから、どういう条件で免除になるかを早急に出さないと借りられず、「絵に描いた餅」にしか感じられないと指摘。子育て世帯に対しては上乗せして給付することが未来への責任ではないかと述べるとともに、感染拡大防止のためにご協力をお願いするためには生活困窮者全般に対し一定の基準を設けて給付金を支給するよう検討を求めました。

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 枝野代表は、事業者への追加支援について、休業協力金の対象に文化・エンタメ事業も入ることを確認。一方で、影響が受けるのは緊急事態宣言地域だけにとどまらないとして、柔軟な対応を求めました。

 緊急事態宣言の延長に伴い、影響を受ける飲食店などへの追加支援策として、中小企業への最大60万円、個人事業主への最大30万円の一時金支給については、2020年度第3次補正予算のときも立憲民主党は地方が自由に使える予算額が足りないと組替動議を出したことにも触れ、財政状況が厳しくなっている自治体があるなかで、国として制度を作り財源を補償すべきだと主張しました。

2021年度当初予算における感染症対策予算

 枝野代表は、感染症対策のための予算について、診療報酬の臨時措置455億円、医療機器の国内生産能力の増強44億5千万円、感染症危機管理体制・保健所体制の整備21億8千万円と、目下の危機的な状況に対応し得るものにないとの認識を示し本当に対応できるのかと疑問視。予算編成においては緊急事態宣言等が想定されていないことから、「4月にまた補正を組まなければいけないような状況にならないよう、編成し直した方がいいのではないか。こんな状況になるとは思わなかったという段階で組まれた予算をこれから2カ月かけて審議するのか」とただしました。

『zeroコロナ』戦略

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 枝野代表は、緊急事態宣言解除にあたっての出口戦略として、経路不明の感染拡大が一定程度抑制されている、新たな感染が出ればすぐにルートが把握できる、封じ込めることができること、それによりそれ以外の人は食事や旅行ができる状況を作ることだと述べ、あらためて『zeroコロナ』戦略を提起。そのためには、立憲民主党など野党が昨年来求めてきた検査体制を拡充・強化し、希望する人がいつでも簡単に検査をできる体制を作り、広く検査することで未発症の感染者を見つけ出すことが重要だと説きました。

 これに関し、新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長も「無症状者に焦点を当て検査を行うことでリバウンドを防ぐ、感染源、隠れたものを早く予兆することで感染の経緯をモニターできる。解除したところについては、無症状者に焦点を当てて検査する」と発言。枝野代表は、1日に最大1万7千件のPCR検査が可能な米国の会社や、1日数十件の処理ができる全自動PCR検査装置を開発した日本国内の会社を紹介し、政府として情報提供を呼びかけ、一定程度の予算を付けることで、感染ゼロに限りなく近づけるところまで検査を繰り返し行っていくことは十分可能だと述べました。

 ゲノム解析の拡大とデータバンク構築の進め方については、データバンク構築に40億円が計上されているが、すでにある東大、東北大などのデータバンクを活用すべきではないかと提案しました。

東京オリンピック・パラリンピック

 枝野代表は、厚労省に確認し、「オリンピックの医療従事者の数や確保の見通しは今のところ立っていない」との回答を得たことを踏まえ、「できれば開催してほしいが、そのことですでにひっ迫している医療がさらに厳しい状況になり、国民、アスリートなどの命や健康に関わることがあっては絶対にならない」と表明。国民、アスリートなどの命と健康を最優先に開催の判断をするよう菅総理に求めた上で、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の発言をめぐり、「感染症がどうなろうと開催すると受け止めざるを得ないような発言がなされている。加えて昨日、女性差別と言う言葉では足りないような発言があった」と厳しく非難。「国民の命と、わが国の国際的な信用のために森会長には辞めていただく、その指導力を発揮されるべきではないか」と菅総理に迫りましたが、菅総理は「森会長が発言した内容の詳細については承知していない」と答弁を避けました。