衆院本会議で19日、公債発行特例法改正案(財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案)についての趣旨説明、及び質疑がおこなわれました。今後、5年間にわたり赤字国債の発行を政府に認める内容の同法案。登壇した階猛議員は、(1)現状では5年後までにプライマリーバランス(PB)を黒字化することが困難と思われること(2)日銀の経営が綱渡り状態であることからくるリスク――等を挙げ、「信なくば立たず」と、批判的な立場から質問を行いました。
冒頭、階議員は、政府が5年前にも同様の内容の法案を成立させたことに言及。その当時、政府が掲げた20年度のPB黒字化が達成されていない点や(現状では約70兆円の赤字見込み)、先月公表された内閣府の試算でも、次の5年間で黒字化を達成するのは困難と見込まれている点などを指摘。当時から財務大臣を務める麻生太郎財務大臣の政治責任を問うとともに、政府が2025年度のプライマリーバランス黒字化を本気で達成するつもりがあるのかをただしました。
次に階議員は、わが国の中央銀行である日本銀行(日銀)が、いまだに達成の目途が立たない2%の物価安定目標の手段であることを口実に、超低金利と上限なき国債買入れを漫然と続けている事実を取り上げました。政府が異例な金利、規模で借金を積み重ねることで「いつかは限界に達し、破裂するのではないかと強い危惧を抱いている」と述べ、借り手である政府と貸し手である日銀の「金融秩序に反するかのような異常な関係」が持続可能なのかをただしました。
こうした金融政策の結果、日銀の経営も「綱渡り状態になっている」と、元銀行員でもある階議員は指摘。民間金融機関が受け取った国債の代金を預ける日銀の当座預金が増えている現状について、懸念を表明しました。現状では日銀が当座預金に対して支払う金利(短期金利)が、日銀が買い取った国債から受け取る金利(長期金利)を下回っているため「利ざや」が発生しているが、「将来、短期金利がわずかでも上昇すれば『逆ざや』となり、日銀の経営は一気に悪化する」と警鐘を鳴らしました。またそうした事態に備えるための「損失引当金」の積立率を、日銀が2019年度に95%から50%へと大幅に引き下げた点も問題視。財務省が積立率の低下を許容した理由や、仮に「逆ざや」による損失額が大きくなり、日銀が債務超過に陥った場合、政府は日銀の損失を補填することになるのかをただしました。
これらの理由に加え、森友学園にかかる公文書改ざん事件の真相を解明するための資料について、裁判で係争中であることを理由に財務省が依然として提出を拒んでいることも取り上げ、現政権は、3つの「しん」(「信」「心」「真」)に欠け、「本法案を審議する前提条件を欠く」と主張しました。最後に階議員は、コロナ禍に乗じてコロナ対策とは無関係な予算が野放図に計上されたり、コロナ禍によって膨張した予算が既成事実化したり、一般会計が焼け太りしたりすることのないよう、コロナ対策の予算を特別会計化することを提案し、質問を結びました。