立憲民主党は12月11日、衆院予算委員会で政府提出の補正予算案に対し、「くらし・いのちを守り、賃上げを加速する緊急経済対策」に基づく組み替え動議を公明党と共同で提出。趣旨説明を井坂信彦議員が行い、討論をおおつき紅葉議員が行いました。その後、同11日夕刻に開会された衆院本会議では、採決に先立ち野間健議員が政府提出の補正予算案に対し、反対討論を行いました。
採決の結果、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決され、参院に送られました。
衆院予算委 井坂信彦議員

井坂信彦議員は組み替え動議の趣旨説明で、政府提出の令和7年度(2025年度)補正予算について、幅広く即効性のある家計支援が不十分であり、過大な歳出が物価高を悪化させるおそれがあるなど、多くの問題点を抱えると指摘。国民生活への支援強化や緊急課題への対応を進めつつ、基金積み増しなど緊要性を欠く支出を削減し、併せて国債発行額を縮減することで、財政の持続可能性と市場の信認を維持するとの基本方針の下、編成替えを提案すると述べました。その上で、中・低所得者への現金給付や光熱費支援の延長、医療・介護・障がい福祉の支援拡充など1.4兆円の歳出増を行う一方、基金積み増しや緊要性に乏しい防衛経費など4.5兆円を削減、さらに、既存基金から1兆円を繰り入れ、特例公債4.1兆円を削減することで歳出規模を抑えつつ家計支援を強化するものだと概要を説明し、賛同を求めました。令和七年度一般会計補正予算(第1号)及び令和七年度特別会計補正予算(特第1号)につき撤回のうえ編成替えを求める野動議.pdf
衆院予算委 おおつき紅葉議員

おおつき紅葉議員は、政府提出の令和7年度補正予算および他会派提出の編成替え動議に反対、立憲民主党・公明党が共同で提出した、必要性の低い支出削減や中・低所得層支援を盛り込む編成替え動議に賛成の立場から討論に立ちました。
おおつき議員は、政府提出の補正予算には(1)時期(2)規模(3)内容――の3点で重大な問題があると指摘。(1)時期については、「物価高が国民生活を直撃する中、自民党は党内政局に明け暮れ、補正編成を遅滞させた。国民を置き去りにした責任は極めて重大」(2)規模については、「現下の経済・財政状況で総額21.3兆円という巨額の財政出動や国債発行を行った場合、インフレを助長し、国民生活を窮地に追い込む危険性がある」(3)内容については、「<子ども1人当たり2万円の現金給付は評価するものの、中・低所得層、特に住民税非課税世帯に該当しない、いわゆる「ワーキングプア」層への支援が欠落している」とそれぞれ理由を述べました。
衆院本会議 野間健議員
立憲民主党・無所属の野間たけしです。私は、会派を代表して、ただいま議題となりました、令和7年度補正予算について、反対の立場から討論致します。
本補正予算は、「時期」、「規模」、「内容」、いずれの観点からしても、国民の窮状に手が届いていない予算案といわざるをえません。
第一に、「時期」の問題です。私たちは、この間、食料品をはじめとする物価の高騰が国民の暮らしを直撃している現状に鑑み、一刻も早い物価高対策の実施を求め続けてまいりました。しかしながら、参議院選挙後、自民党は党内政局に明け暮れ、政治空白をもたらし、経済対策の策定、そして今回の補正予算の編成に至るまで、実に4カ月もの時間を費やしていたわけであります。
この間、10月には、3000品目以上に及ぶ食料品の値上げが行われ、国民生活は、「食卓の危機」とも言える、厳しい状況に置かれ続けました。国民の暮らしを置き去りにして、権力闘争に没頭し、補正予算の編成を今日まで遅滞させた自民党の責任は、極めて重いものと断ぜざるを得ません。
第二に、「規模」の問題です。今回の経済対策は、減税措置を含めて21兆3000億円規模とされていますが、現在のようなインフレ局面において、過度に大きな財政出動を行えば、更なるインフレを助長し、かえって国民生活を窮地に追い込むことになります。しかも、この中には、総額2兆5000億円にも及ぶ基金への支出など、財政法が補正予算に求める「緊要性」の要件を明らかに欠く支出が多数計上されています。
政府は、今回の経済対策の効果として、ガソリンの暫定税率廃止、電気・ガス料金支援により、物価は押し下げられると主張していますが、これは都合の良い部分だけを取り出して作り上げられた詭弁です。その後、12月5日、高市総理が議長を務める経済財政諮問会議に提出された資料では、今回の経済対策によって、物価は全体として0.1%~0.2%程度「押し上げられる」との見通しが示されましたが、これも楽観的な試算と言わざるを得ません。
例えば、民間のエコノミストからは、財政の悪化により円安が進行し、今後仮に、1ドル160円で円相場が推移した場合、消費者物価は0.4%~0.5%程度押し上げられ、政府の物価高対策の効果が打ち消される可能性が指摘されています。政府の見通しは、我田引水、甘過ぎると言わざるを得ません。
今回の補正予算では、18兆3000億円の支出を賄うために、11兆7000億円もの国債を発行することになっています。言うまでもなく、我が国の債務残高対GDP比は200%を超過し、先進国最悪の水準にあります。こうした状況にあって、財政に対する信認を維持するためには、政府として具体的にどのように行動するのかが重要です。
にもかかわらず、高市総理は今回、突如として、20年以上掲げ続けてきたプライマリーバランス黒字化目標を取り下げる方針を示されました。総理は「数年単位でバランスを確認する方向で見直す」とおっしゃいますが、その意味するところについては、明らかにされていません。また、「成長率の範囲内に政府債務残高の伸び率を抑えて、政府債務残高対GDP比を引き下げていく」とも述べていますが、具体的にどのように伸び率を抑えるのかについては、全く説明もなく、このままでは、マーケットに無用な不安を与えかねません。
その結果として、円安が進み、更なる物価高となれば、そのツケを払わされるのは、国民です。高市総理が謳っている「責任ある積極財政」がある日「無責任な放漫財政」になりかねません。
第三に、「内容」の問題です。今回の経済対策は、これだけ大規模で、数多くの施策が盛り込まれていますが、目的が散漫で、ピントがズレたものになっています。現在の経済情勢に鑑みれば、物価高等の影響で深刻な状況に置かれている方々に対して、集中的な支援を実施すべきです。
今回、我々の提案も踏まえ、子ども1人当たり2万円の現金給付が盛り込まれたことは、一定の評価を致しますが、中低所得者層に対する給付が欠如している点は、全く不十分です。とりわけ、この間給付の対象となってきた住民税非課税世帯には該当しないものの、物価高により厳しい状況に置かれているいわゆる「働く貧困層(ワーキングプア)」の皆様や国民年金だけで暮らしている高齢者の皆様に対する支援が欠けていることは、政治の怠慢です。
政府の家計支援策は、4人家族世帯に対して約3万円、しかも所得制限がなく富裕層でももらえます。一方で、我々が提案している「物価高・食卓緊急支援金」では、中低所得者層に対象を絞った上で、合計12万円の給付が行われます。どちらが優れた支援策かは、火を見るより明らかであります。
こうした認識の下、立憲民主党は、公明党と共同で、本補正予算につき、撤回のうえ編成替えを求める動議を提出致しました。本動議は、基金の積み増しなど「緊要性」を欠く支出を減額・削減するなどして、歳出規模の抑制と、国債発行額の縮減を図るとともに、中低所得者層に対する現金給付、電気・ガス料金支援の期間延長など、緊急の物価高対策の実現を図るものでありますが、与党の反対に遭い、否決されるに至りました。
本動議が否決された以上、既に申し上げてきた通り、政府提出の原案には数多くの問題が存在していることから、令和7年度補正予算については、反対するものであります。
最後に、予算の提出者たる内閣の信頼に関わる問題として、政治改革について、一言申し上げます。我々としても、議員定数削減の議論に反対ではありません。しかしながら、まずやるべきは、「そんなことより」と総理が直面することを嫌がった政治不信の元凶である、企業・団体献金の規制強化です。
自民党は7700もの支部を作り、未だに企業・団体献金を受け取り続けています。政府は今回、いわゆる「日本版(DOGE)政府効率化省」を立ち上げ、企業への租税特別措置や補助金の見直しに取り組むとしていますが、右手で企業・団体献金を受け取りながら、左手でその企業団体への優遇措置を切り捨てることは不可能です。
総理は「国会でのご審議に委ねたい」と述べ、企業・団体献金の規制強化に対し、明確な態度を示すことを避け続けていますが、結局は、高市総理も、「古い自民党」と何も変わりがないということでしょうか。そうでないというのであれば、総理の政治決断で、まずは支部の数を大幅に制限し、政治資金の透明性を高める改革を断行すべきです。
立憲民主党は、今後も、国民の負託に応えるため、政府の問題点をただしながら、国民の生活に直結する、より良い政策の実現に全力を注いでいくことをお誓い申し上げ、私の反対討論とさせていただきます。ありがとうございました。
以 上
