枝野幸男代表は24日、新型コロナウイルスの感染拡大から1年となった医療現場の現状について、現役の看護師の方からオンラインでヒアリングをおこないました。ヒアリングには、西村智奈美衆院議員も同席しました。

 大都市圏の急性期病院に勤務するAさんは、「怖がってるというよりは慣れちゃっている」と語り、集団感染が分かると病棟を閉め、再び開くを繰り返す1年だったと話しました。その際の休みは、病欠扱いで、すでに有給を使ってしまっているスタッフもいて、収入の面からも現実的には厳しいと語りました。濃厚接触者になった場合の休暇や補償の手続きを明確化してもらいたいと訴え、国会をちゃんと見ているので、菅総理、田村厚労大臣からちゃんとした答弁を引き出して欲しいと語りました。
 ワクチン接種については、感染予防効果は実証にしくく、重症化を予防する効果を期待するものであるため、高齢者や基礎疾患で入院している方に感染させてしまうことが見えにくくなるのではないかとの危惧を示しました。また、本来接種は任意であるものの、率先して医療従事者は接種すべきだという風潮があり、強制になりかねない状況にあると語りました。さらに、接種せず罹患していた場合に医療行為を行なうことが、特措法などで処罰の対象になるのではないかという不安があると訴えました。
 また、テレビなどに医師の方が出演し、それぞれ違う考えを語るので、視聴者の不安をいたずらに煽ることになり現場は困惑していると語りました。
 立憲民主党のzeroコロナ戦略については、日本の人口密度や国民性を考慮した対策をしっかり示して欲しいと話しました。

 市の健康福祉課や医師会が立ち上げたPCR検査センターに勤めているBさんは、いわゆる自粛疲れについて言及。近所のショッピングセンターは子ども連れで密な状態になっていたり、レジも家族の一人が並ぶのではなく、家族連れで並んでいる人がいると指摘。自分や自分の家族は大丈夫だろうと思っている人が多いのではないかと語りました。また自身も、自粛をしないといけない、感染したら患者を見れなくなってしまう、家族にも感染させてはいけない、実家にも帰れない、友人ともメールでやり取りをするくらいで、1年もこうした状況が続き、ストレスの発散できる場所がないと訴えました。
 また、ワクチン接種について、無症状感染で高齢者施設などに行くことはできないので、半ば強制的に打たなければならないが、自身が自己免疫疾患を持っていることから、果たして自身の疾患で打って良いのか分からないと語りました。さらに、医師も説明を受けている様子が見られないので、一般のワクチン接種が始まったらどうなるか全然読めないと不安を訴えました。
 さらに潜在看護師への復職を求める動きについて、子育てなどで長期間ブランクのある人をすぐに現場に出すような風潮を疑問視。また、慰労金のあり方として、潜在看護師に復職を促しそれに応えた人や、コロナ病床の増床のため異動で昨年7月1日以降に直接携わる事になった人は同じリスクを負いながら対象外であることに「応えたにも関わらず不当な扱いをされている」と指摘。自身も昨年9月に復職した立場なので慰労金の対象になっていなかったことから、「看護師の『奉仕の心』だけではとてもやってられない」と語りました。また、保育士も対象になっておらず、幼稚園や小学校などの知り合いからは、疲れている保護者が過敏になっている話を聞き、同じように大変だと感じたと語り、政府に支援を求めました。

 大学病院系列に勤めているCさんは、病棟でクラスターが発生した際、PCR検査で陰性の場合でも、体温が高かったり、お腹がゆるいという症状がある場合には欠勤扱いになり、病棟間の人員の出入りが禁止になり、人員の補填もなく、少ない人数で対応したと報告しました。
 また、ワクチン接種について表向きは任意であるものの、積極的に接種して欲しいと言われており、働き続けるなら接種するのが当たり前という風潮が院内にあると話しました。
 そして、「医療従事者や看護師、介護者などの方が頑張っていると報道はしてもらっているものの、やはり人材も不足し、私たちも人なのでやはり対応してく中で気持ちがどうしても持ちこたえられない時が大変多くある。安心して医療を提供できるようにPCR検査の拡充はそれぞれの施設に落とし込んでいただきたい」と、まだ先が見えない中、医療従事者のPRC検査が定期的に積極的に行えるような環境を整えて欲しいと訴えました。
 さらに、新型コロナウイルス感染症に対応する専門病院を首都圏と関西圏にしっかりと作り、指定病院にだけしわ寄せが行かないよう対応を求めました。

 Dさんの働く救命救急センターは一時コロナ病棟になり、現在は救命も再開している状況だと報告。中等症・重症患者を受け入れているが、患者数も減り、看護師の負担は徐々に少なくなっていると語りました。一方で、ナースコールが多い患者さんや認知症のある患者さんも中にはいるので、すぐ対応できるよう防護服を着て部屋の前でずっと待機しているような状況で、その間は水も飲めずトイレにも行けない状態が続いていると説明しました。また、変異種の患者は、症状がなくても入院となるので、今後医療現場がひっ迫するのではないかとの不安が示されました。
 ワクチン接種に関しては、接種しないと違う病棟に異動になるとの書面が配られ、救命からまったく違うところに行くのは相当なストレスなので、それならワクチンを受けたほうがいいかという、「しょうがない」という感じで受け止めていると話しました。
 また、感染した患者さんに家族面会は許されていないため、亡くなった場合にはテレビ電話で家族の方と会わせていると説明。次会うのは骨の時があることを毎回オブラートに包み、家族に面会できないことを説得する看護師がいることを忘れないでほしいと訴えました。
 そして、「自分の病院以外の看護師や医療関係者の人とこういう話をする機会は全然なかったので、いろいろな人が、こんな意見を持っているんだと、直に聞くことができ良い経験になった」と語りました。

 西村議員は、ワクチン接種について「部署変更されるという紙が配られたというのは、不利益な変更の恐れがある。こうした事例があったと、もう1回きちんと厚労省に指導なりなんなりをお願いしないといけない」と語りました。また、「4人のお話をうかがい、本当に高い緊張状態の中で、ストレスを発散する機会も時間も場所もなく頑張っておられる。そこに、きちんと応えられるような政治をやらなければいけないと強く感じた」と語りました。

 枝野代表は話を聞き、政治が一番動かしやすいのはお金や物なので、収入減などに対応する要求をさらに強め、目に見える形にしていくと語りました。
 そして、面会できない話について「こちらも家族の立場だったら、看護師に八つ当たりしてしまうだろうと想像がつくので、そんな状況が1年続いていると、現場の皆さんのストレスは想像を超えていると思う。まだ全部分かっていないですが、一端を感じさせていただきました。さらに頑張っていきたいと思います」と語りました。