この記事は広報紙「立憲民主」Vol.6(2021年3月19日発行)に掲載されたものです。
【特集】ジェンダー平等推進
すべての政策をジェンダー平等の視点で
コロナ禍であらためて女性の生きづらさが浮き彫りになる中、政治はその声に寄り添えているのか。
綱領にジェンダー平等の確立を掲げる立憲民主党として、いま取り組むべき課題は何か。ジェンダー平等推進本部本部長の大河原雅子衆院議員に話を聞きました。
■もっと声を上げていい
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(当時)の女性蔑視発言は、世界中に日本が 男女不平等国、ジェンダー意識の低い国であることを露呈させました。出る杭は打たれる、さまざまなバッシングに遭い、男性優先の、封建的な家制度の考え方が横行しています。
そうした中、今回の「あの森さんの発言は許さない」と、SNSなどでいち早く女性たちが でいち早く女性たちが抗議の声を上げ、あっという間に(森前会長の)辞任を求める15万筆のネット署名が集まった意義は大きい。男性たちが「ああいう人たちとは違う」と声を上げたことも、一歩前に進むことに つながるのではないかと感じています。
これまで先輩方が女性参政権を獲得したり、雇用面でも男女共同参画推進などの活動をされてきましたが、新しい世代が社会の男女不平等に声を上げ始めた。大事なのは、この動きを一過性で終わらせないこと。党のウェブサイトのジェンダー平等 推進本部のページに「ここから始め る」と書きましたが、まさにここからです。「もっと声を上げてよかったんだ」と、エンパワーメントする契機になりますし、ここであきらめないでほしい。立憲民主党は、そうした声に応えていく政党でありたいです。
■与党の女性議員は男政治には都合がいい?
2019年に発表された世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数(GGGI)で、日本は153カ国中121位です。特に政治分野は144位と、前年(125位)からさらに後退、残念な状況です。
衆院の女性議員はわずか47人で、うち半数は与党議員です。与党の女性議員は、ある意味「都合のいい女」になっていたのではないか。自分の意に沿わない発言も続けざるを得なかったのではないか。矛盾する発言も見られ、不自由さを感じます。
第5次男女共同参画基本計画から削除された「選択的夫婦別姓制度」をめぐっては、国民の8割が賛成し、専門家が積み重ねてきた議論を50人の与党議員の大きな声でブレーキをかけました。しかも、選択的夫婦別姓の実現を求める意見書採択を、阻止するよう地方議員に呼びかけていたと言いますから、本当にひどい話です。旧姓使用の限界もすでに明らかです。
これまで市民と野党で一生懸命訴えてきた活動がようやく前に進み始めているのですから、推進派の与党議員にももっと戦ってもらいたい。党議拘束を外して採決しようと呼びかけていますが、実現するためには政権交代しかないと思っています。
■当事者性を受け止めた政策を
立憲民主党は、リアルな暮らしの現場を知り、自分自身が当事者であり、議員になってこれを解決したいという思いを持っている議員ばかりです。現場の声、当事者の声を反映し、何か個別の政策というよりも、すべての政策をジェンダー平等の視点で見直す必要があります。そういう意味では、与党の皆さんの視点はまだ限られた場所にしか向いていない。「ひとり親支援」「待機児童解消」と掲げても、すべての政策を見直さないとゆがみの根本が取り除けないと、私たちは捉えています。
これまでの制度や法律のゆがみや矛盾を正していくことは、与党にはなかなか難しい。単身者世帯、高齢者世帯が増え、政府がモデルにしてきたような世帯が少なくなっている中、ベーシックなところでさまざまな不平等が起きています。将来も見据え、実態にあった制度をどう作っていくか。ハードルを高く上げ、やるべき論点を示していくのは、野党第1党である私たちの役割であり、政権交代に 足る選択肢として受け止めてもらえるよう取り組んでいきます。
■ジェンダー平等推進にはパリテが必要
「女性活躍社会」と言いながら、女性の多くは非正規労働で、景気の調整弁にされていたことが、コロナ禍で明らかになりました。「エッセンシャルワーカー」と一言で括っていますが、特に医療や介護・福祉の現場のケア労働は圧倒的に女性が多い。このケア労働を軽んじてきたがために、日本社会のゆがみは改善できないくらい深刻になっています。
政府が言う、「同一労働同一賃金」は極めて表層的です。どういう現場にどういう人が必要なのか。その労働を維持するためには人を育てなければいけませんが、希望者がいなければそれもできない。労働力は、外から買えばいいというものではありません。私たちの日々の暮らしが誰によって支えられているのかという想像力が圧倒的に不足しています。
ジェンダー平等を推進していくためには、政策をつくる議会に女性を増やすこと、社会と同じように男女半々、パリテにすることが求められます。「女性にだけ下駄を履かせる気か」という声がありますが、「裸足で歩いたことのない人には分からないでしょう」ということだと思います。大事なのは、意思決定の場に多様性があることです。
■「あなたのための政治」を実現する
「男性だから」ということで、自分の気持ちをオープンにできない人もいると思います。弱音を吐いてはいけない、重労働に耐えなくてはいけない、一家の大黒柱にならなければいけない……。いま、女性の自殺 者数の増加が特徴的に言われますが、相対的には相変わらず男性が多いわ けです。生涯未婚の男性の割合も 高くなっていて、独身の男性が親の介護をするケースも増え、男性が抱える困難もさまざまです。
コロナ禍で分かったのは、日本は思っていたほど先進国ではなかったということ。格差と分断が広がる今こそ、SDGs(持続可能な開発目標)に真摯に向き合い、あらためて、年齢や性別に関係なく、各々の選択の幅を広げ、人生を選べる、本物の民主主義を実現するために取り組んでいく必要があります。
一人ひとりが抱える課題は、決して一人だけの問題ではない。一人ひとりの課題をつなげて、それを解決する。本来政治が行う姿です。だからこそ私たちは「あなたのための政治」を進めていきます。
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