参院本会議で12日、デジタル関連5法案(デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案、公金給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案)について討論と採決が行われ、「立憲民主・社民」会派を代表して、小沼巧議員が討論を行ないました。

■「コロナ禍の収束」を最優先に

 冒頭、小沼議員は「新型コロナウイルス感染症が国内で確認されてから1年以上経つが、内外の情勢は益々混乱を極めている。コロナ禍の収束は非常に重大な問題であり、内外の政治はことごとくコロナ禍を中心として動いている」と現状の受け止めを述べました。
 続いて、菅総理が「爆発的な感染は絶対に防ぐ」と令和2(2020)年10月26日に所信を述べ、「感染症を一日も早く収束させる」と令和3(2021)年1月18日に施政方針を述べた事実に言及。「ところが、デジタル庁なる構想を華々しくまつり上げ、コロナ禍で苦しむ国民への個別対応に回れたはずの国家公務員を法改正に専念させ、法案審議の参考資料に実に45カ所ものミスが確認された」と菅総理の言行不一致な政治姿勢を痛烈に批判しました。

■真に解くべき論点は「霞が関の業務改革」

 「デジタル関連法案が施行されると、いかなる問題が、いかに解決されるのか。委員会質疑では不明だった」と述べ、論点設定の間違えを指摘。「国民が困窮している原因は、政府が緊急事態宣言やコロナ禍の継続を許しているから。自粛や禁酒や相互監視が今後も継続し、倒産・廃業・失業・自殺が増える混沌とした未来を変える切り札にもならない」と断じ、新規の困窮支援策を打ち出すべきだと要請しました。
 そのうえで、「真に解くべき論点は、霞が関の政策の作り方、業務のやり方というオペレーション課題だ。にもかかわらず、改革の名声を得ようと戦略課題をまつりあげた過ちによって、さまざまな不満や不条理を国民心理にまん延させている」と政府に猛省を促しました。

■「画一的なデジタル化」ではなく「国民本位の行政のデジタル化を」

 「持続化給付金では、50%の売上要件を1%でも満たさない国民は問答無用で排除された」と例を挙げ、「これは不条理だ」と批判しました。
 「デジタルをアナログとの対比で定義すれば、0か1の世界。本来、0か1の狭間で苦しむ不条理を正すことこそ、『国民本位の行政のデジタル化』である」という考えを主張しました。
 そのうえで、「政府は0か1かの発想で機械的に処理するのではなく、さまざまな人間事情に想いを馳せて柔軟に個別対応するべきであった」と長らく怠っている政府の責任を追及しました。
 さらに、「申請を行う国民や、申請を処理する現場や担い手が納得しなくては、コンセプトはあっても実際の活動にはリンクしない。仏作って魂入れず、これまでの二の舞になることは確実だ」と「国民本位の行政のデジタル化」を推進するよう要請しました。

■法案賛否について

 小沼議員は次のとおり2法案に賛成、3法案に反対すると説明しました。
(1)デジタル庁設置法案【賛成】
 行政サービスが複雑なコングロマリットと形容すべき事業であることに鑑み、既存組織とは全く異なる組織の論理の、いわば「出島」としてスモールスタートを始めるものと理解。これは、経営戦略として合理的と考えられるため、賛成。

(2)公的給付の支給迅速化のための預貯金口座登録法案【賛成】
  いわば「出島」でのスモールスタートの一要素であり、その参加は自発的意思に立脚しているため、賛成。ゆくゆくは給付付き税額控除や個人単位での給付に結びつくことを期待する。

(3)デジタル社会形成基本法案【反対】
 情報システムの共同化又は集約自体が義務ではないこと、重点計画の策定に当たっては自治体職員や現場のオペレーションを重視して幅広く意見を聞くこと、係る法令解釈をするのだという言質が取れたことは、大いに歓迎すべき。しかし、検察官定年延長という、閣議決定による解釈変更という悪しき前例が撤回されていない以上、立法府の意思を行政府がひっくり返す恐れが排除されたとは確信を持てず、あえて反対。

(4)デジタル社会形成整備法案【反対】
 個人情報保護の懸念が残る。確かに、監視社会や一元化の手段にはしないとの言質が取れたところは歓迎すべきではあるが、実際の担い手たる個人情報保護委員会の体制強化の中身は、ついぞ語られなかった。センシティブな個人情報が、利便性の美名に隠れて、自らの与り知らぬところで悪用されないか。運用段階での具体論が固まっていない現状ではリスクを管理できないとの誹りを免れ得ず、反対。

(5)個人番号利用による口座管理法案(預貯金口座にマイナンバーを紐づける法案)【反対】
  立法事実自体が机上の空論に聞こえる。政府は直近の実例をまともに答弁できなかった。広報予算の膨張を正当化するためのロジックにしか聞こえず、もう一度考え直した方が良いとの叱咤激励を込めて、反対。

デジタル改革関連5法案 討論原稿(予定稿).pdf

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