学生団体ivote、早稲田大学公認政治サークル鵬志会、日本若者協議会が主催する「Z世代Café―政治家と語ろう―」が7、8日の2日間にわたり開催され、立憲民主党から7日は道下大樹衆院議員、8日は前半に松尾明弘衆院議員、後半に石川大我参院議員が参加しました。両日とも大学生、中高生約40人が参加し、4つのテーマについて7、8人のグループに分かれ、各党の国会議員とディスカッションをおこないました。

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■カーボンニュートラル

 7日の1コマ目は「カーボンニュートラル」を取り上げ、国際的な動向、2050カーボンニュートラルに向けた国内の取り組み等についてプレゼンテーションを受けた後、グループごとの議論がおこなわれました。

 道下議員は、地球規模の気候変動が起きている中、世界各国でカーボンニュートラルの目標を掲げており、日本としても各国の動向に注視しながら積極的に推進しなくてはいけないとの考えを示し、この問題は環境問題とともに、国際的な経済問題としての視点でとらえていくべきだと指摘しました。

 ヨーロッパではクリーンディーゼル車の不正検査が発覚して自動車産業が失速したが、今は国を挙げて電動車に力を入れていることを紹介し、各国が環境問題と取り組むと同時に自国の産業を守り、成長させようとしていることを理解した上で、外国企業と競争している日本企業をどのように後押しし、支えていくかを考えていくべきだと話しました。

 経済界にカーボンニュートラルを促す施策は2段構えにするべきだとし、まずは環境にやさしい、CO2排出を抑制する新たな設備投資を後押しするめの補助金、優遇税制を実施し、それでもなかなか取り組まない企業には炭素税を課すことも検討していくとの考えを示しました。カーボンニュートラルの取り組みのために経営、雇用、部品メーカーなど関連産業に影響が出る場合は、きめ細かな支援をおこなっていくべきだと話しました。

 参加者からは、(1)2050カーボンニュートラルの目標は達成できるのか(2)どのような設備投資に対して補助するのか(3)国民の意識、生活様式をどのように変えていくか(4)EVの普及にはどのような支援が必要か(5)業界団体から支援されている議員はその業界に対して厳しいことが言えず進められないのではないか――などの質問、意見があがりました。

■ベーシックインカム

 2コマ目は「ベーシックインカム」が取り上げられ、海外での試行や国内での検討状況等についてのプレゼンテーションを受けた後、グループごとの議論をおこなわれました。

 道下議員は、全国民に一律の現金給付をおこなうベーシックインカムについて(1)給付額が1人月額8万円と言われているが、一人世帯の場合、都会で8万円で生活していかれるか(2)財源をどのように賄っていくのか(2)公的年金、医療・介護の保険料と窓口負担・利用料など既存の社会保障との関係をどのように整理していくのか――などの課題を指摘しました。

 その上で、立憲民主党はベーシックインカムではなく、誰もが医療、介護、障がい福祉、子育てサービス、教育、住居等の必要なサービスを受けられる「ベーシックサービス」を目指していることを紹介しました。給付と負担の考え方について、たとえば児童手当や高校授業料についても、給付を所得に応じて制限することなく全員を対象とし、所得に応じた負担を求める考えを示しました。

 参加者からは、(1)国民全員に一律給付する必要はあるのか。たとえば現役世代と高齢者では生活に必要な金額が違うのではないか(2)困窮している人の所得水準を引き上げることができても、高所得者にも給付するのであれば格差は是正されないのではないか(3)勤労意欲に影響が出るか(4)生活保護給付の審査がなくなり困窮してい人への給付が迅速化するメリットがある(5)コロナ禍での定額給付金は余裕のある世帯では貯金に回ったと言われているが、ベーシックインカムでも同様のことが起きるのではないか(6)ベーシックサービスを実施するにあたり、現行よりもサービス内容を拡充するのであれば、ベーシックインカムよりも財源がかかるのではないか――等の質問、意見があがりました。

 ディスカッションを終え、道下議員は「ベーシックインカムについては賛成意見もあるけれど、慎重・反対の意見もある。財源や勤労意欲への影響など、まだまだ議論が足りないと感じた」「立憲民主党が主張しているベーシックサービスについても皆さんに知っていただいて、議論を進めていただきたい」と話しました。

■ICTデジタル政策

 8日の1コマ目は「ICTデジタル政策」を取り上げ、日本の行政のデジタル化の現状政策と課題、エストニア、スウェーデンなど海外の先進事例等についてのプレゼンテーションの後、グループごとの議論がおこなわれました。

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 松尾議員は日本でデジタル化が進まない理由として、国民の政府に対する信頼度が低いこと、政府の実行力の欠如を挙げました。政府の信頼度を上げるためには情報の開示、透明性の向上とともに、個人情報が保護され不当に侵害されないということを明確化するための仕組みをつくることが重要だと説明しました。
 また、通常国会で審議したデジタル改革関連法案の中核だったデジタル社会形成基本法案の中身は、2001年に小泉政権がつくったIT基本法とほぼ同じの焼き直しだったと評し、日本のIT政策はこの20年間ほとんど進んでいなかったことになると指摘しました。これまでは、いつまでに何をやって、効果を検証し、さらに次に何をやるという政策の進捗管理ができていなかったが、新設されるデジタル庁に関連予算が一元化されるので、政策の進捗管理がある程度できるようになるのではないかと話しました。

 デジタル化とプライバシーについて、行政に蓄積される個人のデジタル情報が誰のものなのかが明確になっていないことが問題だと指摘しました。個人が提供した情報は個人のものであり、自由に扱うこともでき、消すこともでき、また行政に勝手に使われないことを明確にする基本方針を明確にし、それに沿って制度設計をしていくことが個人情報保護につながるとの考えを示しました。

 松尾議員は、情報管理でのトラブルはヒューマンエラーによるものが一番多く、どんなにシステムの精度を上げても完全に防止することは不可能であり、間違いが起こり得ることを前提に、起きてしまったらどのようにリカバリーするかということまで制度化しておくべきとの考えを示しました。その上で、通常国会でのデジタル化改革関連法案の審議でも、このことを提案したが、政府には受け入れられなかったと明かしました。

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 参加者からは、(1)高齢者等でデジタル機器の操作に不安がある人から抵抗感が強いことについてどう対応すべきか(2)コロナ禍を機にオンライン授業が始まり、メリット・デメリットが分かってきたが、初等教育、高校、大学等でオンライン授業をどのように取り入れていくべきか(3)行政のデジタル化が進むと地方自治体の創意工夫の幅が狭まり、画一的な対応で地域の多様なニーズに合致しなくなるのではないか(4)政治への不信感から個人情報を管理されることへの不安がある(5)マイナンバーカードを活用する機会が少なく、利用者にとって何がメリットなのか分からない。今後はどのような分野に広げていくべきか(6)デジタル化を進めるためにデジタル庁の体制をどのように強化すべきか(7)ものづくり産業とデジタル化の融合をどのように進めるか――等の質問、意見があがりました。

 松尾議員はまとめのコメントで、若い人たちがデジタル化についてどのように考えているのかを知る機会は貴重だったとし、「デジタル化自体が目的ではなく、われわれの生活が豊かに、便利になっていくことが目的なので、『こういうことにも活かしたらいい』とか、今後も皆さんから意見をあげていただきたい」と話しました。

■若者の政治参加

 2コマ目では「若者の政治参加」を取り上げ、若者の政治参加の状況や若者の投票率を引き上げるための手段等に関するプレゼンテーションの後、グループごとの議論をおこないました。

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 石川議員は若い人に主張が届いていると感じるかと問われ、2019年の参院選で訴えた同性婚は20代、30代の若い世代の支持を得られたと思うと話しました。また、漠然とした生きづらさ、政治に対する不満も、たぐっていくと政治に行きつくのではないかと話しました。

 SNS等が普及している中、政治に関する情報をどこから得たらいいのかという質問に対し、石川議員は、新聞は記者の取材能力が高く、編集過程で内容をチェックする体制があることを挙げ、複数紙を読み比べることによりバランスの取れた情報が得られるのではないかと話しました。

 参加者からは(1)「選挙は行くものだ」と思っている学生はけっこう多い(2)住民票を移していないので実家に戻って投票している(3)電子投票を取り入れるとしたらサイバーセキュリティは大丈夫か(4)海外の例を参考にしながら、主権者教育をより現実の政治に近い形にできないか(5)政治家の逮捕が相次ぎ、政治不信が募り、投票しても変わらないのではと思ってしまう(6)野党の離合集散が繰り返され、頼りないと思われているのではないか――等の意見があがりました。

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 ディスカッションを終え、石川議員は若い世代に政治を知ってもらうために「私たちの方からハードルを低くする努力が必要」と述べ、立憲民主党が「おしゃべり大学」など、若者が参加しやすいイベントを開催していることを紹介し、参加を呼びかけました。