立憲民主党は2月19日、「高額療養費自己負担引上げ凍結法案」(健康保険法等の一部を改正する法律案)を衆院に提出しました。

 政府は昨年末、高額療養費制度を見直し、自己負担限度額の月額を2025年8月から3段階で引き上げると決定しました。しかし、がんや難病の患者の皆さんの負担を増大させる自己負担限度額の引上げ自体が問題であることに加え、当事者の意見を聴くこともなく、審議会の議論も短期間で4回しか行われないなど、決定のプロセスも不適切なものでした。

 自己負担限度額の引上げは、長期の治療を続ける患者の皆さんやそのご家族への影響が甚大であり、現役世代を中心に生活できなくなったり、治療の継続を断念しなければならなくなったりすることが懸念されます。厚生労働省が「治療を諦める人によって削減できる医療費は2270億円」と試算していたことも判明し、福岡厚労大臣は「機械的な試算」と釈明しましたが、命を切り捨てるに等しく、言語道断です。石破総理は17日、直近12か月の間に3回以上、制度を利用した人は4回目から負担が軽減される「多数回該当」の場合、4回目以降の負担額は引き上げず、現行のまま据え置くと表明しましたが、多数回該当に相当する人が高額療養費の該当者の2割に過ぎないことを踏まえれば、全く不十分です。

 そこで、立憲民主党は当事者の方々の命と暮らしを守るため、令和7年度当初予算の修正案で200億円の財源を捻出して自己負担限度額の引上げの凍結を提案するとともに、法案も提出しました。高額療養費制度の具体的な金額などは政令で定められており、法律上は政令に委任する規定があるに過ぎないことから、この法案は政令を定めるために必要な考慮事項と新たな手続きを設ける改正を行い、そうした手続きを経ていない8月の自己負担限度額引上げを凍結するためのものです。単なる一時的な凍結で終わらせず、決定プロセスの適正化を図り、当事者の方々の意見も反映されるような仕組みづくりを法案に盛り込みました。

 法案提出後の記者会見で筆頭提出者の中島克仁衆院議員は、今回の高額療養費制度の見直しについて、当事者の声を聞くことなく短期間の議論を経て決定したプロセスと、がんや難病の治療を抱えながら働く現役世代を直撃したことの2点が大きな問題だと指摘し、「政府は事の重大さにいまだ気づいていない。野田佳彦代表も命に直結する内容であり最優先と言っている。予算の修正も佳境に入っているので、当然ながら最優先で与野党協議に臨んでいく」と述べた上で、この問題が「我々にとっての最優先項目」だと改めて強調しました。党障がい・難病PT座長の横沢高徳参院議員は「難病指定されていない方、慢性疾患の方にも大きな影響がある。当事者の生活を守る上でも一旦立ち止まり、再検討が必要。法案提出が大きな第一歩になることを祈っている」と述べました。自らも子宮頸がんを患い、抗がん剤治療を受けた経験を持つ酒井なつみ衆院議員は、「患者団体の皆さんが声を上げ、反発が大きくなった。政治が決断すべき時だ。必ず凍結させるよう力を尽くしていきたい」と意気込みを語りました。

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 また、記者会見に同席した当事者団体の皆さんからも凍結、法案成立への強い期待の声が上がりました。全国がん患者団体連合会(全がん連)の天野慎介理事長からは、引上げ幅が極めて大きいこと、多数回該当に当たらない患者さんが新たに生じる可能性が出ていること、決定のプロセスの3点が問題であるとの説明がなされた上で、「今回の対象になる人はがんや難病、不妊治療、様々な疾病を抱えている方々。そういう方々の保険によるカバーを外していくことは皆保険の根本に関わる事柄であり、皆保険制度の事実上の崩壊につながることを危惧している。全国がん患者団体連合会は改めて今回の引上げの一旦凍結をお願いしたい」、一般社団法人日本難病・疾病団体協議会の大坪恵太事務局長からは「決定のプロセスに患者の声は反映されていない。患者が使う状況を客観的に示すデータ、所得がどうであるとか一切調査もされていない。政府が独断で決めたと言われても仕方ない状況。一旦立ち止まり、きちんと資料を揃えて、患者の声も取り入れた上で慎重に考えてほしい」、全がん連の理事でもある、認定NPO法人希望の会の轟浩美理事長からは「一旦立ち止まって、丁寧に考えてもらいたい思いで毎日行動している。簡単な審議で人生に関わることが決められてしまう恐ろしさを感じた。多くの国民が政治の成り行きに注目しており、最後まで日本の政治を信じたい」、と、それぞれ発言がありました。

 法案提出者は中島克仁(筆頭提出者)、山井和則、川内博史、柚木道義、岡本充功、井坂信彦、早稲田ゆき、道下大樹、池田真紀、吉田はるみ、酒井なつみ各衆院議員です。また、党障がい・難病PT座長の横沢高徳参院議員も出席しました。