参院本会議は9日、岸田総理の所信表明に対する代表質問を行い、小西洋之参院議員が登壇しました。

 小西議員は、官僚時代に答弁拒否のような答弁を作ることなど一度もなかったとし、「これからの時代は、これを再生して、同じ土俵の下で、堂々と政策議論をして、国民の皆さまのための政策を実現していく。その立法府を取り戻す、そのための取り組みをお願いしたい」と呼びかけました。
 また、立憲民主党は「子どもたちにまともな民主主義を取り戻し、命と暮らしを守る政策を実現する、新しい政治をつくる」と訴え、(1)新型コロナウイルス感染症対策(2)新しい資本主義(3)子ども政策(4)災害対策(5)外交・安全保障(6)政治改革(7)憲法問題――についてただしました。

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■子ども政策

 私立保育園の男児が送迎バスに取り残され、熱中症で死亡した例を取り上げ、いくつもの安全管理違反が重なったものだと振り返りました。文科省が所管する幼稚園にはあるものの、厚労省所管の保育園には事故を防止するための法律による「保育園安全計画」がないと指摘。さらに新たに創設されるこども庁は子どもの事故防止を担当するものの、こうしたことは基本方針にも盛り込まれておらず、さらに次期通常国会に提出される園児を性犯罪から守る児童福祉法の改正案でも「保育園安全計画」は手付かずとなっていると述べ、保育園の安全計画について早期実現を求めました。野田聖子子ども政策担当大臣は「年内開催の重大事故防止策を考える有識者会議に対して改めて、より一層積極的な議論をするよう依頼」し、また新組織創設にあたり、「子どもの安全対策をさらに強化していくことができるよう進めていく」と答弁しました。

 また、いじめによる自死が続いていると指摘し、いじめ対策の認識を根本から改善するため、過去の重大事態事件のケーススタディを行い、教職員自らの責任と役割を具体的に認識すること等のいじめ防止法の実効性確保に必要不可欠な対策を直ちに実施するよう求めました。末松信介文科大臣は、「小西議員の指摘も踏まえ、法の趣旨、内容についてさらなる周知徹底を図り、教育委員会や学校現場の取り組みが一層充実するよう、これまで以上に支援をしていく」との答弁にとどまりました。

■災害対策

 2年前の台風15号による災害で、小西議員の地元千葉で多数の家屋がブルーシートの設置がなされず大きな被害が生じたと語り、「コロナ対策と同様に災害対策にも、救えるはずの暮らしと財産を何が何でも救いきる、そうした信念と執念に基づく実行力が必要」と指摘。(1)内閣府防災の体制の見直し(2)地方自治のスペシャリストである旧総務省自治部局の官僚を派遣要員として登録(3)防災担当の政務3役に実務能力に優れた人材を任命(4)自衛隊の災害派遣任務としてブルーシート設置の訓練――を提案しました。岸田総理は「国民の生命・財産・暮らしを守るべく災害対策に取り組んでいく」と答弁しました。

■外交・安全保障

 尖閣諸島における海上警察力の常時優勢の確保等のために、立憲民主党は本年6月に「領域警備・海上保安体制強化法案」を提出したと説明。そのうえで、尖閣諸島における海上警察力の常時優勢の確保等のために海上保安体制の整備計画の検討を総理に提案しました。

 敵基地攻撃能力について、本来は個別的自衛権行使の議論のはずが、保有しさえすれば集団的自衛権行使に使えるというのであれば、完全に専守防衛の範囲を逸脱し、国のかたちを大きく変えてしまうと警鐘を鳴らしました。そのうえで、総理の地元広島県の原爆慰霊碑に捧げられた誓いの言葉「戦争の過ちはくりかしませぬから」を取り上げ、総理に明確な答弁を求めました。
 岸田総理は、「国民の命や暮らしを守るために何が求められているのか、いわゆる敵基地攻撃能力をも含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討していく」と答弁しました。

■政治改革

 「総額3億円にも至る文通費の国庫返納は立憲が最初に提案、歳費の日割支給の例外となっている衆院解散時の総額8千万円の歳費の国庫返納、更には使途報告の透明性確保の規律も措置している」と強調。その上で、総理に自民党総裁として文書交通費の使途報告等、改革のリーダーシップの発揮を求めましたが、総理から明確な回答は得られませんでした。

 参院歳費返納について、安倍政権下で2018年に強行採決された「参院定数6増法」により増えた分のコストを現職の参院議員がその歳費を自主返納して賄う制度だと説明。また、参院では、年間約2億円のペーパーレス化などによるコスト削減の改革が実現しているとし、「『身を切る改革』を主張する前に、国会議員であるならば、まずは、真の改革力によって国会経費、行政経費の無駄を堂々と削減していただきたい」と参加議員らに呼びかけました。

■憲法問題

 小西議員は「国民にとって真に必要な憲法論議ならばそれを行う用意はある」と述べた上で、参院の合区廃止や、衆院議員の任期満了後の大震災等による国会機能の確保については、憲法改正に拠らずに国会法及び公選法の改正によって解決する方策もあるとの認識を示しました。岸田総理は、「国会の議論と国民の理解は車の両輪であり、広く国民の議論を喚起し理解を深めていくことが重要」との見解を示しました。

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