【談話】与党2025(令和7)年度税制改正大綱の決定にあたって

立憲民主党 政務調査会長
重徳和彦

 与党は本日20日、2025(令和7)年度税制改正大綱を決定した。

 いわゆる「103万円の壁」問題については、合理的・抜本的な改革に取り組むべきだ。まず、所得税の課税最低限については、基礎控除と給与所得控除の最低保障額をそれぞれ10万円ずつ引き上げて、123万円まで引き上げることとされた。引き上げを決めたこと自体は評価できるが、給与所得控除の引き上げは、サラリーマンなどの給与所得者だけにしか適用されず、個人事業主やフリーランスなど、働き方が多様化する中にあって、時代に逆行した改正と言わざるを得ない。実施するのであれば、基礎控除の引き上げに一本化すべきである。
 学生アルバイトの就労抑制問題については、「特定親族特別控除」を創設し、学生の給与収入が150万円に達するまでは控除額を満額適用するとともに、その後も控除額を段階的に逓減・消失させる仕組みとすることで、解消を図ることとされた。この点は概ね我々の提言に沿ったものであり、評価したい。ただし、根本的には、学生が学業に専念できる環境を整備することが何よりも重要であり、併せて、高等教育の無償化を確実に実現すべきである。
 また、所得制限があるとはいえ、基礎控除が所得控除である以上、高所得者ほど減税額が大きくなり、その結果として多額の減収が生じるという構造は変わらない。この際、場当たり的な改正に終始するのではなく、再分配機能を強化する観点から、基礎控除の税額控除化、あるいは給付付き税額控除化など、抜本的な改革に取り組むべきだ。

 防衛増税については、断じて認めることはできない。大綱では、法人税とたばこ税の増税については時期も含めて明記された一方で、所得税の増税については「引き続き検討する」こととされ、再び結論が先送りされた。これは「103万円の壁」の引き上げと同時に増税を行うことを避けたものであり、「増税隠し」の謗りを免れない。そもそも防衛増税については、野党が一致して反対しているものであり、与党過半数割れの状況にあって、これを唯々諾々と受け入れるつもりは毛頭ない。野党各党とも連携を図りながら、その撤回を目指していく。

 ガソリン税の旧暫定税率は、時期を定めて確実に廃止すべきである。我が党が提言している同税率の廃止については、自由民主党・公明党・国民民主党の3党合意でも実施が確認されているが、結局、その時期については大綱に明記されなかった。また、併せて、自動車産業等の脱炭素化の取り組みも強力に推進しなければならないはずだが、そのような手立てが十分に講じられているようには見受けられない。

 その他にも、インボイス制度導入による事業者の負担増、所得が1億円を超えると逆に所得税負担率が低下する「1億円の壁」問題など、解決すべき課題は多岐に渡るが、本大綱においては何ら解決策が示されておらず、全体として、及第点とは言い難い内容となっている。

 いずれにしても、与党の過半数割れにより、税制の決定過程は大きく変容し、従来のように、事実上、与党内の密室の議論のみで税制が決められる時代は終焉を迎えた。立憲民主党は、「熟議」と「公開」の国会の下で、より良い税制の実現を目指していく。