参院本会議で3月18日、「雇用保険法等の一部を改正する法律案」の趣旨説明と質疑が行われ、森屋隆議員が、(1)雇い止めによる離職者の基本手当の給付日数を拡充する暫定措置(2)雇用調整助成金の特例措置延長による今後の保険財政の見通し(3)国庫負担割合の見直し(4)国庫からの任意繰入れ制度 (5)職業安定法の改正――について取り上げ、政府の見解をただしました。

(1)雇い止めによる離職者の基本手当の給付日数を拡充する暫定措置
 森屋議員は、「雇い止めにあった有期雇用労働者は、新型コロナの影響が顕著になる前から再就職先を見つけるのが困難な状況が続いている」と指摘。こうした状況から雇い止めにあった労働者の基本手当の給付日数を拡充する暫定措置を3年間の延長ではなく、再就職が厳しい環境が続く限り継続することが必須ではないか政府に迫りました。後藤厚生労働大臣は、「令和7年度以降の取り扱いについて、対象者の再就職状況を注視しつつ、制度の効果や廃止した場合の影響も踏まえて検討する」と答弁しました。

(2)雇用調整助成金の特例措置延長による今後の保険財政の見通し
 令和4年度予算案では、令和4年度末の雇用保険の積立金残高が500億円しか残らないという政府の見通しに触れ、今後の雇用保険財政の見通しについて政府をただしました。後藤厚労大臣は、「今回の保険料及び国庫負担の見直しにより雇用調整助成金の支給を含め、引き続き雇用保険財政の安定的な運営を確保する」と答えました。

(3)国庫負担割合の見直し
 政府案では、失業等給付の財政状況に関する指標である弾力倍率が1未満となる場合、かつ基本手当の受給者実人員が70万人以上となる場合についてのみ、国庫負担割合を4分の1にするとしており、 それ以外の場合は国庫負担割合を40分の1にするとしていることを森屋議員は取り上げました。森屋議員は、「衆議院本会 議では、40分の1の根拠について『現行の国庫負担割合を基にして いる』と答弁したに過ぎず、合理的な説明が全くありません」と指摘し、あらためて政府の見解を求めました。後藤厚労大臣は、「雇用情勢等にかかわらず、政府の経済政策、雇用政策の結果としての失業の発生に対する国の責任を継続的に果たすために設定したものだ」と述べました。

(4)国庫からの任意繰入れ制度
 森屋議員は、雇用保険部会報告書では、任意繰入れが発動されるべき具体的な状況を四つ挙げ、当該状況に該当する場合などには、時点を問わず雇用保険部会に報告し、財政安定化のために必要な財源の内容やその確保策も含めて議論を行い、その意見を踏まえて必要な対応をとるべきであると厚生労働省に対応を求めていることを取り上げました。そのうえで、「本法律案には、任意繰入れ制度の運用の考え方は一切条文に書かれておりません。少なくとも政省令に制度の運用の考え方を規定しておく必要がある」と政府に求めました。 

 (5)職業安定法の改正
  募集情報等提供事業者が労働市場において果たす役割が大きくなっている中、職業安定法第5条の3第1項では雇用仲介事業者、第2項では求人者に対して労働条件の明示を義務付けているにもかかわらず、募集情報等提供事業者は対象外となっていることを指摘し、募集情報等提供事業者にも労働条件明示を義務付ける必要があるのではないか提案しました。後藤大臣は、「不特定多数の者に対し、広く募集情報を提供する広告等の段階で明示することは一般的には難しい」等と答えました。

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