参院本会議で4月8日、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷提言事業活動の促進等に関する法律案(略称・みどり戦略法案)」についての質疑が行われ、横沢高徳議員が(1)これまでの農政(2)法案の周知(3)法案における担い手(4)基本計画策定に当たっての国の支援(5)有機農業(6)総合防除(7)食料自給率の向上(8)カーボンニュートラル――等について質問しました。
(1)これまでの農政
横沢議員は、日本の農林水産業において食料自給率の低迷、高齢化に伴う担い手不足、耕作放棄地の拡大等多くの課題があり、農業を営む戸数が約20年間で半分以下に減少していることを指摘。厳しい状況の中、「追い打ちをかけるように水田活用直接支払い交付金の見直しが行われている」と述べ、営農継続に向けた生産者への支援が必要だと迫りました。金子農水大臣は、「今後5年間に一度も水稲の作付が行われない農地は、交付の対象としない方針だ」と述べ、5年間で産地形成をどのように図っていくのか各地域で検討してもらい、現場の課題を検証してもらうと考えを示しました。
(2)法案の周知
本法案の内容について横沢議員は、「日本農業新聞が3月に行った農政モニター調査では、72.7パーセントの人が『内容を知らない』という調査結果が出ている」と指摘。消費者への理解、情報提供をどのように進めていくのかただしました。金子大臣は、「国の講ずべき施策を定めた第7条において関係者の理解の増進を図っていく旨を位置付けたところ。この一環として、消費者と生産者らの行動のための国民運動ニッポンフードシフト等に取り組んでいく」と答弁しました。
(3)法案における担い手
「持続的な食料システムを構築するためには生産者、担い手が不可欠」と述べる横沢議員は、本法案では「担い手」をどう捉えているのか質問しました。金子大臣は、「本法案においては国が講ずべき施策について、環境負荷低減の取り組みを現場の実践に不可欠な技術の開発、普及の促進等を続けているところ。こうした取り組みを通じて、環境と調和のとれた食料システムを支える多様な人材の確保を図っていく」と答えました。
(4)基本計画策定に当たっての国の支援
「本法律案は範囲が広く、農林水産業全般にわたるため、自治体負担が増加し、計画の策定や実施に支障が生ずることも想定される」と横沢議員は指摘。どのように国が支援していくのか質問しました。金子大臣は、「自治体の負担軽減に十分配慮し、令和3年度補正予算、令和4年度当初予算で処置した『みどり戦略推進交付金』を通じて、計画の策定を支援していくほか、農業振興計画や有機農業推進計画等地方自治体の既存計画を有効に活用し寛容に運用できるよう配慮する」と答えました。
(5)有機農業
みどり戦略において2050年までに耕地面積に占める有機農業の割合を2050年までに25パーセントに拡大する目標を掲げていることについて、横沢議員は「野心的目標だ」と述べ、数値の根拠を求めました。金子大臣は、「生産者や食料事業者からは、2050年に向けてであればEU並みの目標は可能であり、意欲的な目標を掲げてほしいとのご意見をいただいたこと等から改定したところ」と述べました。
(6)総合防除
横沢議員は、「みどり戦略」において食料・農林水産業が直面する持続可能性の課題に防除が挙げられていることを取り上げました。農薬のみに依存した対応では、いずれ防除が困難になることが懸念されるなか、「植物防疫法改正案」で新設する農薬に頼らない総合防除の仕組みについてわかりやすい説明を求めました。金子大臣は、「総合防除とは、環境負荷低減を図りつつ農薬だけに頼らない防除を推進するために、病害虫が発生しにくい生産条件の整備など予防的な取り組みと、病害虫の発生予測に重点を置いて総合的に行う防除であり、今般の植物防疫法改正案においてその推進を図ることとしている」と説明しました。
(7)食料自給率の向上
食料・農業・農村基本計画における食料自給率の目標が、2030年度にカロリーベースで45パーセントとされていることから、「みどり戦略」を実行する本法案が、自給率の向上に対しどのように寄与するか質問しました。金子大臣は、「気候変動等による農林漁業への影響が拡大する中、将来にわたり食料システムの持続性を高めていくことは重要であり、今から環境負荷低減に取り組む必要がある。現場において行われる環境負荷低減の取り組みは、健全な作物を育てる土づくりと生産基盤の強化にも資する取り組みである」と述べ、消費者の意識の変化を促し食料安定供給の確保に対応すると述べました。
(8)カーボンニュートラル
横沢議員は、「輸出により年々増加が見込まれる国産農林水産物を陸上、海上、空路で輸送する事はカーボンニュートラルとは相反する」と述べ、どのように折り合いをつけるのか政府の見解を求めました。金子大臣は、「輸出を行う際にはその流通等におけるエネルギー消費や、それに伴う環境負荷低減が図られるよう、低コスト最適輸送ルートの構築や安定的かつ低コストなコールドチェーンの整備を行うことにより、輸送に伴う温室効果ガスの排出削減に取り組むのが重要だ」と答弁しました。