参院本会議で10月6日、岸田総理の所信表明演説に対する代表質問が行われ、田名部匡代参院幹事長が登壇しました。田名部議員は、災害対策、食料安全保障、中小企業対策、子ども・子育て、新型コロナウイルス対策、グレーゾーン事態への対応、エネルギー、国葬、旧統一教会問題、山際担当大臣の発言、難民保護のための第三者機関設置――等について質問しました。

■災害対策
 田名部議員は、立憲民主党が緊急・災害事態局を設置していることに触れ、地方組織と協力のもと災害情報の収集、対策の取りまとめにつとめ、現下の災害対策や災害復旧対策に全力を傾けることを宣言しました。そのうえで、自力での避難が難しい住民一人ひとりに避難先や支援する人を定める「個別避難計画」の作成が、市町村の努力義務と災害対策基本法で規定していることについて、対象者が多く、避難経路や支援者の有無を調べることが困難になっていることを問題視。国の責任をもっと明確にし、リスクの高い地域を優先して支援を強化すべきではないか岸田総理にただしました。岸田総理は「作成が着実に進むよう支援している」と答弁しました。

■農林水産物の輸出拡大
 飼料価格が上昇する中、飼料自給率は20%台半ばが続いて、2030年に34%とする目標への道筋が描けているように見えないと指摘。「生産者が現在の危機を脱するためにも、耕畜連携を大胆に展開し、地域循環型の農業を目指し、飼料作物・堆肥の生産技術の向上など、将来を見据えた支援を重点的に行う必要があるのではないか」と岸田総理の見解を求めました。岸田総理は、肥料や飼料の高騰に対しては、すでに肥料価格に対する支援の仕組みの創設を講じていることを主張しました。
 また田名部議員は、岸田総理が農林水産物の輸出拡大をアピールしていることについて、原材料のほとんどを輸入依存している日本にとって円安はコスト増加要因であり、農業を救うことになるのかを疑問視。岸田総理は、海外食市場の確保による所得向上と農地や担い手の確保に不可欠だとし、「円安メリットを生かした農林水産物の輸出拡大に取り組む」とあらためて述べました。

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■子ども・子育て
 安倍元総理が少子化を「国難」と述べ、菅元総理は「少子化対策に真正面から取り組む」と述べていたにもかかわらず、岸田総理は所信表明演説で「少子化について一言しか触れておらず、具体的方針も示されていない」と田名部議員は指摘。こども家庭庁の来年度予算の概算要求額が「倍増」からはかけ離れた額であることについて、いつまでに子ども子育て予算を倍増するのか質問しました。岸田総理は「来年度の骨太の方針には、将来的に倍増を目指していく上での当面の方針を明確にしたい」等と明確な時期を示しませんでした。

■グレーゾーン事態への対応
 田名部議員は、武力攻撃に至らなくても警察には対応できないグレーゾーン事態で、危機的な状況がエスカレーションせず事態をコントロールできるよう、海上保安庁及び自衛隊が事態に応じて適切な役割分担の下で迅速に行動できるようにするための「領域警備・海上保安体制強化法案」を立憲民主党が提出していることを紹介。現行法でグレーゾーンにすべて対応が可能と考えているのか岸田総理に見解を求めました。岸田総理は、「各機関の連携を充実させ、円滑にさせるために必要なものはないか。訓練等を通じていっそうの検討を進めていく。また、新たな国家安全保障戦略等の策定にあたっても、グレーゾーン事態への対応等についてしっかり議論をしていく」等と答えました。

■国葬
 安倍元総理の国葬儀の実施について、「基準や要件を定めた法律、国の儀式たる実施をどの国家機関の任務とするかなどを定めたルールを国会で議論すべきだった」と岸田総理の見解を求めました。岸田総理は、「政府としては今回の国葬儀について検証を行うこととしている。まずは幅広い有識者から意見を伺い、国葬儀について論点と意見を整理することから始めます。できる限り早期にその整理を示したうえで、今後総理大臣経験者の国葬儀の実施については、国会との関係などどのような手順を経るべきか一定のルールを設けることを目指していく」と答弁しました。

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■旧統一教会問題
 マインドコントロールによる深刻な被害が指摘されている旧統一教会への解散命令請求の指示を出すつもりなのか、岸田総理に質問をしました。岸田総理は、「社会的に問題が指摘されている団体に対して、政府としては関係法令とのかかわりを確認しながら厳正に対応する」と答えました。また、田名部議員は、山際担当大臣が旧統一教会関連団体との関わりについて報告をしていなかったことについて、岸田総理に見解をただしました。岸田総理は、「今後はいっさい関係を持たないと述べていると承知している。利害が得られていないというのであるならば、引き続き政治家として自らの責任において丁寧に説明を尽くす必要がある」と述べました。

■山際担当大臣の参院選での発言
 田名部議員は、山際担当大臣が今年7月の参議院選挙期間中に「野党の人から来る話は、われわれ政府は何一つ聞かない。本当に生活を良くしたいと思うなら、自民党、与党の政治家を議員にしなくてはいけない」と発言したことを取り上げました。山際担当大臣がのちに、「誤解を招くような発言になった」と弁明していることについて田名部議員は、「あくまでも聞いた側の誤解とお考えなのですか」と質問しました。また、岸田総理に更迭する考えはないかをただしました。山際担当大臣は、「地域の候補者の方がその地域の方々からしっかり意見を賜りながら国政に反映させていただきたい。その思いを強調する文脈で趣旨を誤解する発言をした。趣旨が明確に伝わらず、また地元の田名部議員をはじめ野党の議員の方々に不快な思いさせるような表現になったことについてお詫びする」と謝罪しました。また、岸田総理は山際担当大臣を更迭する考えは示しませんでした。

田名部議員本会議代表質問全文221006.pdf