衆院原子力問題調査特別委員会が11月10日開かれ、原子力規制委員会の山中伸介委員から同委員会の活動状況等について説明を聴取。菅直人、逢坂誠二両議員が質問に立ち、原子炉等規制法(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)の運転期間の認識等をただしました。原子力規制委員会は2日、原発の運転期間を「原則40年、最長60年」とする現行制度を撤廃する政府方針を踏まえ、長期運転の安全を確保する規制見直し案を示しました。

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 菅議員はまず、ウクライナ情勢を踏まえ、原発への武力攻撃のリスクをどう考えるかを質問。山中委員長は「武力攻撃は原子炉等規制法の範疇外であり、原子力規制委員会として事業者に対して施設、設備で対応することは求めていない。ただし、武力攻撃のような事態になったと政府が判断された場合には、国民保護法の下で原子力規制委員会が事業者に原子炉の停止命令をかけることができると考える」と答えました。菅議員は「範疇外とはびっくりした。では誰が議論するのか」と尋ね、自身が掲げる営農型太陽光発電の推進への見解を求めましたが、山中委員長は「安全規制に関わる規制を推進する機関であり、エネルギー利用政策について何か物申す機関ではない」と、これを拒否。菅議員は「日本の将来について、本当に原発をこれ以上使っていくのか、他のやり方でいくのかの議論はやるべきで、委員長のところでやらないのであれば他でやるしかない」と述べました。

 菅議員はまた原子炉等規制法第43条の3の32で定める運転期間の「原則40年」について、「原子停止中は『運転期間外』 経産省、『60年超』案最終調整」といった報道が一部あったことを踏まえ、「定期点検など原子炉の停止期間を含む」とする更田(ふけた)前委員長の認識と同じかどうか、委員会として認識が変わっていないかどうかを確認。これに対し山中委員長は、「令和4年10月5日第42回規制員会で見解を変える必要はないと確認している。法に規定する40年は、原子炉の停止期間等を含めた暦年で数える更田前委員長と同じ認識」だと答えました。

 菅議員は、「私は原子力からの卒業を、専門家である皆さん考えていただきたい。私も、大学で多少は原子力のことを学んだ。そして福島原発事故にも当たった。今のウクライナ情勢も見ている。例えば発電に関して、どうしても原発でなければ他に代替物がないのであれば原発を注意深く使うことはあり得るかもしれない。しかし、今や、営農型太陽光発電は現実に農林水産省が積極的に進め、広がっている」と提起しました。

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 逢坂議員は最初に、「原則40年」とする原子炉等規制法第43条の3の3について、山中委員長から原子力規制委員会の所管であり、国会で議員立法として定められたものだとの答弁を確認。原子力規制委員会は、山中委員長の判断で10月5日に運転期間延長について資源エネルギー庁からヒアリングを行い、その結果エネ庁から「運転期間について、利用政策側の法体系の中で検討する」との方針が示されており、これを受け山中委員長は「原子炉等規制法の関係条文の中で運転期間について、利用政策の判断によるものであって、規制委員会は意見を申すところではないという規制委員会の結論を得ている」と発言しています。逢坂議員は、「原則40年」は、利用期間の規制を政治の判断として立法政策として定めたものであり原子力委員会が意見を述べる事柄ではないこと、これまで原子力規制委員会において「利用政策側が判断する」という議論はなかったことに言及し、「規制委員会の所管である法律にエネ庁があれやこれやいうことは独立性に反するのではないか」「見直しに当たってはエネ庁でやるとは決まっていない」と述べました。

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 山中委員長は、「原子力規制委員会においては、運転期間に関する定めには、意見を申し上げる立場にない考えは維持している。利用政策側でご判断いただくべき事柄だと考えている」などと矛盾した答弁を繰り返したため、逢坂議員は、「どこで政策判断するかは議論されていない」「今回、運転期間に関する定めを所管する法律から抜くことを容認したのはおかしいのではないか」「原発を推進する経産省で議論し、経産省が所管する法律で規定する方針を規制委員会が容認することはあってはならない」と指摘。山中委員長は「高経年化した原子力発電所の安全規制に抜けが出ないような制度設計をすること。そのための検討を進めてきているところ」「最終的には国会の決議でお決めいただくことになろうかと思う」と述べましたが、逢坂議員は「なぜ政策の推進側だけでしか議論できないのか。推進側で議論してくださいというのは暴挙だ」と断じ、11月2日に示された規制見直し案を撤回するよう要請しました。