立憲民主党など野党は11月22日、旧統一教会問題に関する第30回目となる国対ヒアリングを実施しました。今回は、旧統一教会2世の方から2世が抱える問題について話を聞きました。弁護士連絡会の弁護士も同席しました。その後、関係省庁と意見交換を行いました。

■老後破綻した親を扶養、介護し看取った2世の山本さん

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山本さん(プライバシー保護のため首より下のみ撮影)

 山本サエコさん(仮名)は、30代の女性。母が18歳、父が20代前半に統一教会に献身し、合同結婚式で結婚し生まれた祝福2世。両親は教団内部で働き、教団の人事で全国各地を転勤して生活をしていたと語りました。そのため、両親が全国各地の信者にしてきた加害行為について幼少期から知っていると説明しました。

 山本さん自身の被害内容として(1)幼少期からの教義の押し付けによる基本的人権の侵害(宗教虐待)(2)親の布教活動によるネグレクト(3)高額献金による貧困(4)祖父母が託してくれた進学費用を先祖解怨(霊界にいる先祖を地獄から救うため430代前まで解怨と祝福をすること)等に使われ、奨学金を借りざるを得なくなった(5)教会で働いていた両親は、「サタンにお金を流すな」「万物復帰」との教義から社会保険に加入させてもらえず、突然解雇され、年金未納で老後破綻。その親を扶養し介護し看取った(6)親によるつきまといから、住民票と戸籍の閲覧制限をかけている――ことを挙げました。

 政府の新法概要については、本丸である教会を守るためたくさんの法人が乱立していること、また婦人部長や教会長が献金要求をし、信者が勝手にやったと切り捨てるのが常套手段、さらに信者間で献金のための借金が頻発していたと語り、政府の新法概要にある対象が「法人」だけでは規制ができないと指摘しました。

 また、「取消し」ではなく「無効」を求め、取り引きの安全や利益よりも、被害者の犠牲を強く保護すべきだと訴えました。さらに扶養義務等にかかる定期債権は月数万円だとして、実際の被害金額と比べ被保全債権が少額すぎると語りました。さらに無資力要件を課す点で、親が身ぐるみ剥がされるまで指を加えて我慢しろというのは横暴だと批判。「身ぐるみ剥がされてお金が全くない親を扶養してるのが私たちの立場だ」と訴え、「(政府とは)見ている景色が違う」と指摘しました。

 教会は恐怖を煽る負のイメージもあるが、「神の国創建のために頑張ろう」といった精神状態になっている場合があると指摘。この場合は、正常な判断ができないと語りました。

 2世の多くが共通する悩みとして、1世がどのくらい献金をし、どのくらい借金があり、資産がどのくらいなのか全く知らないと語り、1世は献金額を隠したがるので領収書や帳簿の記録保持義務はマストだと指摘しました。

 山本さんは、お金を返せというような議論になっていることを危惧しており、老後が破綻した親を看取った立場から、2世にのしかかってくるのは不良債権というよりも「人の命」だと語り、社会保障から外れてしまった、見放された「人の命」がある日突然、私たちに降り掛かってくると述べ、社会保障、老後資金、生命保険などはただのお金ではなく、生きるために必要なもの、「人の命」を守るものだと訴えました。そして、必要な治療を受けさせてあげられない苦しみが強かったと語り、「お金がないというのは、いやらしいお金の話ではなく、人の命に関わっていくところだという視点を忘れずに議論をしていただきたい」と訴えました。

 山本さんは明日23日に、政府案に対する2世被害者からの要望を伝える記者会見を行うと語り話を終えました。(山本さんのツイッターアカウント @oyagacha_ToT

■生後まもなく養子となったA子さん

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養子の元2世信者の方の音声を紹介する山井議員

 録音で参加したA子さんは、祝福2世で養子になった若い女性。育ての母の話によると生まれる前から養子になることが決まっていたといい、生みの親とは距離が離れていたため、生後まもなく育ての親の養子になったとのこと。養子であることを知ったのは4、5歳のころ、生活する中で疑問に思うことあり育ての母に質問して知ったと話しました。養子だと実感したのは小学生の頃、同級生の質問などから感じることがあったと語りました。育った家庭では兄弟はおらず一人だが、生みの親の家庭は3人以上兄弟が上にいると話しました。

 現在の心境としては、「宗教2世ということだけでも辛さはあるが、養子という事実がさらに辛い思いを生み出していて、育ててもらった恩が育ての両親にはあるので、このような疑問や養子であることに対しての思いを素直に言うことができず、日頃から苦しい思い」をしていると語りました。

 旧統一教会には、養子縁組を行っている事実を隠蔽せずに認めた上で、苦しんでいる人たちに謝罪してほしいと訴えました。

 国に対しては、今後、教会により推奨されてきた養子縁組をができないようにしてほしい、同じように養子であることに辛い思いをする子どもをなくしてほしいと訴えました。

 最後に一番辛いこととして、「2世でなければ(推奨されていなければ)生まれていないかもしれず、養子として育てられていないかもしれないという、宗教上にある養子でいることが辛い」と語りました。

■事前質問への省庁からの回答

 厚労省からは、教会への質問書(養子縁組あっせん業実施の有無など)は同日午前発送し、回答期限は12月5日だと説明。回答を得られ次第、対応を検討していくと語りました。新たな養子あっせんを禁止するべく指導すべきとの質問には、回答を待っている状況であり、回答を得られ次第、検討していくと説明しました。

 文化庁からは、質問権の行使(宗教法人に基づくもの)については、同日行使し郵送で通知をすると述べ、回答は12月9日を期限としていると説明しました。今後、再質問するかなどについては「予断を持ってお答えすることは差し控えたい」と述べました。養子あっせん法違反に関する質問が含まれるかについては、既に報告徴収・質問している段階にあるため回答は差し控えたいと述べる一方で、「こうした場面でも話も伺っており、事務的にはいろいろ情報をいただいているので、そういうことにも配慮し対応していきたい」と語りました。

■阿部弁護士は「1世信者の高齢者問題」と「養子縁組あっせん」の悪質性について指摘

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 全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士は、山本さんの話を受け、「一番大事なのが、1世信者の高齢者問題」だと語り、2世が子どものころにネグレクトや貧困などの最初の被害を受け、その後成年すると、介護といった親の老後をどう見ていくのかという問題に直面すると説明。「政府の新法では、親の介護、老後破綻問題について苦しんでいる2世を救える内容にはなっていない」と指摘しました。

 文化庁による教会への質問権行使について、今回は組織の運営とお金に関する事項だと報道で聞いたが、今後再質問などをするのであれば、養子縁組あっせんの実態について質問していただきたいと語り、民間の養子縁組のあっせんを反復継続して行うには、都道府県への届け出が必要とされていることから、解散請求の要件である「悪質性」にかかわることだと指摘しました。

■養子縁組のあっせんは「組織的にやっている」と山井議員が指摘

 山井和則議員は、「【改訂版】侍義生活ハンドブック」(世界平和統一家庭連合発行)に「両家の合意がなされたら、『養子縁組申請書』と家族写真を本部家庭教育局に提出し、会長に承認をいただきます」「家庭教育局からの承認を受けるまでは、金銭の授受は行いません」「出産報告書は、子女を授かった家庭が、『養子縁組用の出産報告書』を記入し、本部家庭教育局へ提出します」と書かれていることから、「組織的にやっている」と指摘しました。