衆院予算委で3月2日、国会では異例の土曜日に集中審議・締めくくり質疑・討論・採決が行われ、2024年度予算案をめぐり岸田政権の姿勢をただしました。集中審議では江田憲司、逢坂誠二、湯原俊二、馬淵澄夫、おおつき紅葉各衆院議員が、締めくくり質疑では石川香織、米山隆一、早稲田ゆき、小山展弘、山岸一生各衆院議員が質疑に立ちました。討論は藤岡隆雄衆院議員が行い、2024年度予算案に立憲民主党は反対しました。

集中審議

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■江田憲司議員

 江田議員は、岸田総理らが来年度予算案の衆院通過をめぐり、その理由として能登半島地震の「震災対応について新年度早々から住宅支援など具体的な支援が期待されている」と述べていることについて、「(使途が具体的でない)予備費を積み増しただけではないか」と批判。過去の災害時と同様に、本来であれば発災直後に「被災地のニーズを積み上げた補正予算」を編成すべきだと強調しました。

 また、自民党の「裏金システム」の解明のためには、20数年前当時を知る森喜朗元首相、安倍派の事務総長経験者でありながらいまだ政治倫理審査会に出席していない下村博文元文科相が「キーパーソン」だとして、参考人招致を要求しました。

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■逢坂誠二議員

 逢坂議員は、昨年来、岸田総理が発言してきた「国民の信頼を得るために、火の玉になる。自民党の先頭に立つ」姿勢が見えないと批判しました。

 逢坂議員は、国民の信頼を回復するには、裏金の「入り」と「出」を徹底的に解明することだと指摘し、そのために総理に党として能動的に裏金議員にヒアリングをするよう求めました。しかし、岸田総理は、裏金議員の修正作業や説明等を「見守り」ながら「党として全体像を把握していく」と能動的に動く意思がないことを明らかにしました。これに対して逢坂議員は、これでは「放置主義だ。なぜ党として能動的にやらないのか。なぜ火の玉になってやらないのか」と追及しました。

 裏金と納税の関係について、解明を進めても「それでも使途不明のお金があった場合」逢坂議員は納税すべきとの立場から総理の対応を問いました。岸田総理は「法律に従って課税は考えなければならない。個人の支出に流用したとは確認できていない」と納税の必要性を認めませんでした。逢坂議員は、「総理の発言では国民の理解は全く得られない」と批判し、「せめて納税相談には行くように」と総理が裏金議員に促すよう強く求めました。 

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■湯原俊二議員

 湯原議員は、アベノミクスと新自由主義による「国づくり」が地方の疲弊を招いてると指摘し、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2050年には全市町村の4割で生産年齢人口が半減すると強調。岸田総理に対し、アベノミクスの「総括」をすべきだと迫りました。これに対し岸田総理は、「(アベノミクスは)デフレではない状況をつくり出した」として従来通りの答弁に終始しました。

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■馬淵澄夫議員

 馬淵議員は、裏金の問題に対する岸田総理の姿勢について「『火の玉になって自民党の先頭に立って取り組んでいく』と勇ましい国民に受けそうな言葉を発するが、その後は、全くの無関心で放置。リーダーシップのかけらもないような状態を続け、予算案の自然成立の時期が迫る窮地に陥ると、政倫審に総理大臣が出席するというサプライズ。しかし、政倫審の成果はゼロ」と批判し「政倫審で解明されたことはあるか」と岸田総理に問いかけました。

 馬淵議員は自民党の裏金議員の「党の処分はどうするか」確認しましたが、岸田総理は時期等について明確に答えませんでした。

 岸田総理が「政治資金パーティーを開催しない」と発言したことに関連して、「全閣僚にも同様にすべきと伝えるか」と確認しましたが、「私自身の判断」と述べるにとどまりました。

 馬淵議員は「裏金議員が多数いる中で、個々の裁量に任せている場合ではない。政治資金パーティーを全面禁止と党として決めた」と述べ、自民党も「全面禁止に踏み出すべきではないか」と訴えました。

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■おおつき紅葉議員

 おおつき議員は、出生数が過去最少75万8,631人、8年連続の減少となったことについて質問。岸田総理の言う「異次元の少子化対策」で打開できるのかただし、総理の答弁ぶりについて「異次元のわかりにくさだ」と強調。子育て中のママの声を交えながら、端的に「いくらもらえて、いくら負担するのか」と岸田総理をただしました。その上で、政府の答弁が「実質負担ゼロ」から「二転三転」していることを踏まえ実態は「子育て増税」だと強調し、世代別・世帯構成別・子どもの年齢別にシミュレーションするよう提案しました。

締めくくり質疑

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■石川香織議員

 締めくくり質疑に立った石川香織議員は、土曜日の開催となった異例の予算委員会について、「(裏金による)脱税疑惑を説明せず、予算審議も不十分なためにこのような事態となり、国会職員など多くの人を巻き込んだ。子どもがいる家庭、働く女性などのことは頭をよぎらなかったのか」とただしました。

 岸田総理は、今回の予算は震災予算を含むので、確実な年度内成立をお願いしたいと答弁しましたが、石川議員は、「能登半島地震対策に全力を尽くすことはどの党も一致しており、そもそも同予算は予備費で対応することになっている。被災現場で必要とされる予算を詰めるのが予算委員会の場だ」と述べました。その上で、「審議充実も、落ち着いた環境で議論してこそだ。こういう仕事だから(土曜出勤も)仕方がないとなると、政治を志す女性は増えない」と指摘しました。

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■米山隆一議員

 米山議員は、能登半島地震を受け、岸田総理が表明した「新たな交付金」である「能登地域6市町への交付金制度」を問題視。同制度は、高齢者等のいる世帯等に限定し、能登6市町を対象にしているため、液状化の被害などがあった内灘町や富山県、新潟県が対象でないため、「被災したすべての地域の人に交付すべき」と岸田総理に迫りましたが明確な答弁はありませんでした。

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■早稲田ゆき議員

 早稲田議員は、子どもの貧困対策について総理の姿勢をただしました。政府は児童扶養手当拡充と言っているが、実際は対象の38万世帯には増額はないこと、コロナ禍や物価高などの中、20年間金額があがらなかったこと等を指摘し「がっかりした」と述べました。立憲民主党が提案している「児童扶養手当増額法案」の審議を強く求めました。

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■小山展弘議員

 小山議員は、農家への戸別所得補償制度について質問。資材高、燃油高等のコスト高により所得が低下し、経営も生活も苦しくなっていると強調。他方で、政府の対策は短期間のものばかりだと指摘。離農者や耕作放棄地をこれ以上、増やさないためには、戸別所得補償が必要だと訴えました。また、エンゲル係数が40年ぶりの高水準になっていることは、食費の家計圧迫、生活の困窮がさらに深刻化していることを示していると指摘しました。

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■山岸一生議員

 山岸議員は、審議を通じて、「総理の孤立化と暴走」と、それと表裏一体である「自民党のガバナンスの崩壊」が明らかになったと指摘。その一例として、このたびの2024年度予算の採決をめぐる強行に言及し、「岸田総理の指示なしに一体誰が決めたのか」と迫りました。

 岸田総理は、年度内成立の重要性をひたすら強調し、自身の指示を否定。山岸議員は、「誰も(強行採決を)言っていないのに円満に運営されてきた予算委員会が最後の最後に決められてしまった。これこそが政権のガナンスの崩壊そのものだ」と断じました。

 山岸議員は「政党としてのガバナンスが機能していない与党があって、そこに独走を続ける総理が君臨している。このことが国民生活にとって非常に危ない。今ガバナンスの深刻な危機を抱えている自覚はあるか」とただしましたが、岸田総理は「問題があるとは考えていない」と答弁。山岸議員は「そのことに気が付かないことが真の危機。この政権は取り換える必要があり、立憲民主党はその先頭に立っていく」と締めくくりました。

討論

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■藤岡隆雄議員

 予算案の質疑終局後、藤岡隆雄議員が反対討論に立ちました。藤岡議員は、予算の審議時間は通例80時間のところ、69時間の段階で、予算委員長が強引に採決を決めたことについて抗議しました。野党は審議拒否をしていたわけでもなく、3月4日に予算案を参議院に送っても、参議院の審議日数は十分確保できると述べ、今回の採決の強行には、「裏金の疑惑隠しが潜んでいる」と厳しく批判しました。

 能登半島地震については、立憲民主党など野党で被災者生活再建支援法改正案を提出したことを受けて、政府も支援金の一部増額を決めたが、支給対象とならない人や地域が残っていると課題を指摘しました。

 裏金については「国民は増税、自民は脱税」、国民の疑念は高まっているとして、自民党下村議員らからもあらためて参考人招致や証人喚問の場で話を聞く必要があるとしました。

 予算案そのものについても、多くの問題があるとしました。総額が112.6兆円にも上り、今後、金利増大リスクにさらされること、子育て支援金は、実質的に子育て増税であり認められないこと、多額の予備費を積むことが常態化しており、財政民主主義の観点から問題があることなどを指摘しました。

 以上の理由から、本予算案への反対を表明しました。

 討論の後、採決が行われ、与党の賛成多数で可決しました。