参院政治倫理審査会は3月14日、自民党の裏金問題について世耕弘成前参院自民党幹事長、西田昌司参院議員、橋本聖子元オリンピック・パラリンピック担当大臣から弁明を聴取し、蓮舫、吉川沙織両議員が質疑を行い、その責任を問いました。参院政倫審で弁明と質疑が行われるのは史上初めてです。

20240314_105021renho.JPG


■世耕弘成前参院自民党幹事長の弁明に対する蓮舫議員の質疑

 蓮舫議員はまず、世耕議員に「正直に話してもらいたい」と求めた上で、 (1)安部派のキックバック継続が決まったのはいつか(2)キックバックに代わる提案をしたのは誰か(3)参院議員のみパーティー券全額キャッシュバックを決定したのは誰か――等について質問しました。

 安部派の参院組織「清風会」元会長である世耕議員は、2022年4月の派閥幹部の会合で、安部元総理から派閥のキックバックを辞めるとした決定が伝達されたことを述べました。誰がキックバックの継続を決めたのかについては、「8月の会合で、パーティー券のノルマをオーバーした議員が多数おり、政治活動の資金として当てにしている面もあるので、代替案のような話が出た。企業団体に(派閥のパーティー券購入分を)返金し、各議員のパーティーを代わりに購入してもらい収支報告書に載せるといった案が出たので、『その案なら反対しない』と述べた記憶がある。いずれにしてもこの時、何か確定的なことが決まったとは認識していない。派閥の全ての会合案内が来ているわけではないが、参院の連絡役である自分が呼ばれた会議では(キックバック継続の決定の話は)少なくともなかった」と回答しました。キックバックに代わる提案をしたのは誰かについては、「賛同したことだけは明確に覚えている。でも誰が言ったかは分からない」と答えました。

 世耕議員は、2022年の参院選挙の年に、参院議員のみが派閥のパーティー券のノルマなしで全額キックバックが行われたことについて、誰が指示したのかの問いに「参院議員に関わることだが私には何の相談も報告もないまま決まっていた。各人のノルマ販売についても何の相談も受けていない。派閥で決めて各人に通知が行ったというふうに思う」と述べました。

 蓮舫議員は、「肝心なことは『記憶がない、分からない、知らない』あるいは『事務局が、事務所が』と言い逃れしか聞けない」「弁明に来られたのに結局『分からない』では政倫審の限界を感じた」と発言しました。

20240314_103246_01seko.JPG


■西田昌司参院議員の弁明に対する吉川沙織議員の質疑

 吉川議員は、政治資金規正法は政治資金の動きを国民の前に明らかにする、公開することが趣旨だと説明し、派閥幹部以外で初めての政倫審での弁明となる西田昌司議員に質問をしました。

20240314_134210_01_re_rez.JPG

 吉川議員は、派閥パーティー券の販売にノルマが設定されていたこと、その基準を知っていたか確認しました。西田議員は「承知していたが、パーティー券の販売についてタッチしたことがなく、具体的な額は知らない」と答えました。

 西田議員が自身の弁明の際に「担当者が一人で悩みぬき・・・還付金に充てた」と発言していたことから、吉川議員は「ノルマの額を把握していないというのは無理がある」と指摘しました。

 続いて「改選時にノルマの設定の免除があったことを知っていたのか」確認しましたが、西田議員は「知らない」と答えました。1月21日の地方紙で、「ノルマの免除」について書かれていること等から、吉川議員は「知っている人は確実にいる。知らないのは無理がある」と指摘しました。

 西田議員は、還流の仕組みについて把握した時期は「報道で初めて知った。ノルマも秘書には派閥から連絡があったが、自分は知らなかった」、還付金の不記載が違法であると認識していると述べ、そのことを知った時期は「新聞で報道された頃」と答えました。また、現金還付の仕組みを止めないと決めた人物については「全くわからない」と答えました。

 吉川議員は、一連の自民党の裏金問題を「慣行、構造的な問題」と指摘し「派閥としてどこに責任があるのか」と問いました。

 西田議員は「誰が決めて誰が続けると言ったのか。安倍元総理が亡くなっている。細田元衆院議長も亡くなっている。派閥の幹部が知らないというのは納得できない」と疑問視しました。

 西田議員は「このようなことが起きたことに衝撃を受けている」「監督者として私に責任がある」と述べました。

 吉川議員は「道義的責任は招かれない。事実関係を解明しない限り再発防止策は打てない」と訴えました。

20240314_130446_rez.JPG

■橋本聖子元オリンピック・パラリンピック担当大臣の弁明に対する吉川沙織議員の質疑

 橋本議員は、10年以上前から派閥からの還付金の存在を認識していたと弁明。2019年の自身の参院選挙の際には、ノルマを全額免除されて還付金が多かったことを秘書から報告を受けたと説明し、還付金を全て政治活動として使用していたと話しました。吉川議員は、使った還付金をどの政治団体の収支報告書に記載していたのかを質問。自由民主党北海道比例区83支部とジャパニーズドリームだと答える橋本議員に対し、吉川議員はジャパニーズドリームが代表者と会計責任者の両方とも橋本議員本人であることを指摘。3月1日に政治資金収支報告書の訂正を行っているという橋本議員に対し、「だいぶ訂正が出ている。額も大きく(政党支部で5650万円を3593万円、ジャパニーズドリームで6300万円を4243万円に訂正)事実と異なる記入であり虚偽記入となる」と述べました。

20240314_151736_01_re_rez.JPG

 政治資金規正法第25条第1項には虚偽記入をした場合に記載をした者つまり会計責任者は罰則の対象となること、第2項には会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠った場合に罰則の対象となると規定されていることをあげ、代表者と会計責任者を兼ねている橋本議員について「説明責任は重い」と訂正の内容について詳しい説明を求めました。しかし、橋本議員は「手元に資料がないので報告できない」と回答を避けました。
 最後に吉川議員は、参院政倫審で32人を審査対象とする議決をしたにも関わらず、3人のみの出席となっていることから、橋本議員はじめ当選回数の多い幹部経験者らが他の議員に出席を促してほしいと求めました。橋本議員は、「政治家それぞれの中での判断だと思うので、個々の思いに任せなければいけない」と答えました。

20240314_150156_rez.JPG