参院農林水産委員会で5月28日、岸田総理出席で食料・農業・農村基本法案等の審議が行われ、質疑に立った羽田次郎議員は(1)日中・日韓間での食品等の輸入停止措置 (2)坂本農林水産大臣の発言(3)農家の所得保障(4)立憲民主党修正案――等について総理の見解をただしました。

 羽田議員はまず、日中韓首脳会議が27日にソウルで行われたことに言及。日中首脳会談で「農産物や食品・飼料等の輸入停止措置・解除」について、日韓首脳会談で「食品等の輸入停止措置」について、それぞれに前向きな話し合いは行われたのか総理に問いました。岸田総理は、日中首脳会談では「水産物を含む日本産食品の輸入規制即時撤廃を明確に求めた。引き続き、強く求めていく」とした一方で、日韓については「東日本大震災以降、日本産食品等の輸入規制撤廃は政府の重要課題。今回の首脳会談では双方の関心事項・懸念懸案について互いに言及した。今後も議論を続けていきたい」と答弁しました。羽田議員は「この答弁だと実際に食料等の輸入停止措置について話し合われたのかが、はっきりとしない」と指摘した上で、地元の長野県では、きのこやコシアブラ、他の地域でも茶葉など幅広い品目が停止措置となっていることに触れ、総理へ首脳会談などの「話し合いの場でもっと取り上げてもらいたい」と求めました。

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 次に、羽田議員は、坂本農林水産大臣が16日の参院農水委員会の質疑で「(日本)農業の生産基盤が弱体化したとは思っていない」という答弁を繰り返し、23日に発言を撤回したことについて、「坂本大臣が全く異なる見解で(基本法改正の)議論を進めていたとすると、これまでの衆参での長い時間をかけた議論が水泡に帰してしまう」と懸念を示し、岸田総理の見解をただしました。岸田総理は、農業生産基盤が弱体化していると認識しており、強い危機感をもって対応する必要があるという見解を明らかにしました。

 羽田議員は農業生産基盤の弱体化の原因が「人と農地の減少」だとし、今回の法案においても、新たな食料システムにおける農産物の「合理的な価格」が議論となっていると指摘しました。その上で、こうした価格形成のなかで、「生産者にとって再生産可能な十分な所得が得られない場合は、国として適正な所得が確保できるよう支援してもらえるという認識でいいのか」と岸田総理に問いました。岸田総理は「合理的な価格形成の後押し」とともに、「スマート化による生産性向上」「ブランド化による付加価値向上」等の取り組みを支援していくことが重要だとし、所得補償については「過度な変動があった場合に収入補償制度等を適切に講じなければならない」と答弁するにとどめました。羽田議員は「消費する側の声の方が強い」「価格が高くなってしまうと消費者は安い海外のものを買う傾向にある」と指摘し、生産者の所得が十分獲得できるような合意形成がされなかった場合は政府の後押しをしてもらいたいと岸田総理に求めました。

 また、農村部の人口減少については、自治体が主体となった施策を講じることが可能となる支援策の拡充が必要だとし、なかでも都市部から地方や農山漁村への人口移動が重要だと主張しました。「離島の農家では祖父母が同居していたり近所に住んでいたりして子育てがしやすいため、子どもが増えているといった話も聞く。『半農半X(農業と他の仕事を組み合わせた働き方)』など、少しずつ地方に人が移り住めるような状況をつくってもらうことが人口減少の歯止めにもつながる。そういった取り組みをお願いしたい」と岸田総理に要望しました。

 最後に羽田議員は、食料・農業・農村基本法改正について、立憲民主党がさまざまな修正案を与党に提示したにもかかわらず、まったく修正に応じてもらえなかったことについて、この判断が「総理の方針」であったのかを岸田総理に問いました。「修正協議を含め、国会で決めてもらうもの」と答弁した岸田総理に対し、「政治資金規正法改正の議論も、農政に関しても、総理のリーダーシップが見えてこない。火の玉になって日本の農業を守っていく決意を伺いたい」と総理に迫りました。岸田総理は「農業に対する危機感と未来への思いを法律の中に盛り込んだ。国会で判断してもらいたい」と述べました。