参院本会議で4月16日、「情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案が審議入りし、古賀之士議員が会派を代表して質問に立ちました。予定原稿は以下のとおりです。
「情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」に対する趣旨説明質疑
立憲民主・社民・無所属 古賀之士
立憲民主・社民・無所属の古賀之士です。私は会派を代表してただいま議題となりました「情報処理の促進に関する法律及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」について質問いたします。
1<官房長官>
冒頭米国トランプ政権による関税政策について林官房長官にお尋ねいたします。 4 月 9 日に発動される予定だった 米国トランプ政権による相互関税は、一旦 90 日延期されました。今、この瞬間も、世界各国は対応に追われております。最新の日本の交渉状況、また今後の見通しについて官房長官にお尋ねします。
2<経産大臣>
この法案は今お尋ねをした 米国と密接な関係を築き、前へ進むことが前提条件となります。米国の現政権の政策において、科学や技術の進歩によって社会課題を解決する革新的な技術、いわゆる deep テックに資する半導体産業は大きな柱であり、安全保障上も重要です。
日米双方の安全保障上の観点から、武藤経済産業大臣はどのように日本と米国の半導体産業を考えているかお答えください。
半導体産業は、ますます世界に欠かすことができない時代になりました。スマートフォン、その情報を扱うデータセンター、 自動車や家電製品など、ありとあらゆる生活シーンで、もはや誰もがその影響や恩恵を受けています。
恩恵と言えば、実は今、国民の皆様、議場の皆様方にお伝えしている質問原稿も、私のしゃべる言葉をスマートフォンが聞き取って瞬時に文字起こしをしたものです。ありがとう半導体、質問原稿作成になくてはならない存在になりました。口述筆記をしてくれた、そのスマートフォンですが、一昨年発売されたもので、半導体は海外製です。今回取り上げるのは、私のスマートフォンに搭載されている半導体、現在は3ナノですが、それをさらに上回る2ナノの次世代半導体の国内産業支援に向けた法律の改正案です。
3<経産大臣>
2 ナノを目指す次世代半導体を国内で生産する意義はなんでしょうか?経済産業大臣に伺います。(注)2 ナノは、クラウドコンピュータや AI、ロボット、自動運転などの最先端の機器や製品に搭載される予定。アイフォンは 2026 年に搭載予定とされる。
4<経産大臣>
半導体の製造に関しては、TSMC が米国に投資し、工場建設の計画があるなど、激しく厳しいグローバルな競争にさらされることが予想されています。
その際、我が国の次世代半導体を、買ってもらえるのは どんな国やエリアを想定されていますか? 経済産業大臣に伺います。
かつての我が国の半導体産業について、栄光と、残念ながら凋落の歴史に触れておかねばなりません。かつては「日の丸半導体」と言われ飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
1979 年に出版された、米国エズラ・ヴォーゲル氏の著書「JAPAN AS No1」の象徴的な産業でして、
1988 年には、世界シェアの実に 50%以上を占めていました。
しかし昨年 2024 年のシェアは 7%台に落ち込んでいます。主な凋落要因として、「日米貿易摩擦」「設計と製造の水平分業の失敗」「デジタル産業化の遅れ」「国内企業の投資縮小と韓国・台湾・中国の国家的事業育成」などが挙げられます。
5<経産大臣>
このような過去の半導体政策の反省を踏まえたうえで、今後の半導体政策については、どう臨もうとしているのでしょうか。経済産業大臣にお聞きします。
6 <経産大臣>
すでに有力とされている北海道の企業に対し、昨年度までに上限 9200 億円の公的支援が決定しています。その有力企業では、2027 年量産開始に向けて、最先端半導体の技術開発では、IBM との共同研究を行っているとされています。その進捗状況はいかがでしょうか?経済産業大臣に伺います。政府や経済産業省に報告を受けていると思われる最新のエビデンスをデータ含めお示しください。
7 <経産大臣>
さらに北海道の有力企業は、この 4 月からパイロットラインの立ち上げが開始されており、試作品ができたとしても、量産開始に向けては歩留まりを向上させていくことが重要と考えますが、どのように歩留まりを上げていくのか経済産業大臣、答弁願います。
8<経産大臣>
さらに経産大臣に伺います。
量産に数兆円、さらに中長期的に総額 8 兆円規模と、空前の産業支援となる見込みです。成功してもらいたいのは山々ですが、もし、さまざまな要因で不幸にも中断や別の道を進まざるをえなくなった時に、その状況をとらえ、また支援について決断するのはどの組織、だれの責任になるのでしょうか?
9<経産大臣>
少なくとも、政府がしっかりと進捗を管理すべきではないでしょうか?その際、どのような指標をもって、どのように進捗管理を行っていくのか?経産大臣お答えください。
10<財務大臣>
また、財務大臣に伺います。このような大型の産業支援に関して、現状今回のやり方を今後も踏襲されるお考えなのか?問題課題はないのでしょうか?お尋ねします。

11<経産大臣>
半導体への投資は地域への波及効果をもたらすことが期待されています。
北海道の有力企業の周辺地域では、関連企業の進出をあてこんだオフィスビルやマンション・アパート、また、ショッピングセンターなどの建設ラッシュも始まっています。雇用、賃金、投資、中小企業を含めた地域の企業について、政府として、この半導体投資によりどのような効果があると考えていますか?経産大臣、答弁願います。
12<経産大臣>
一方で、例えば TSMC が立地した九州・熊本では、渋滞等による生活環境の悪化や、地下水の枯渇等を危惧する声も当初多く聞こえました。そのため、TSMC が時差出勤や通勤バスの導入を積極的にはかったり、地下水は75パーセント再利用することを約束し、熊本県も地下水の枯渇や汚染を常時監視するリアルタイムモニタリングを導入したりするなど地域に配慮した対策がとられています。
こうした半導体投資に伴って発生しかねない地域社会の歪み、環境的なネガティブな側面にもしっかり対応していくべきではないでしょうか?
経産大臣、お答えください。
13<経産大臣>
半導体産業の復活に向けては、何より人材育成が不可欠です。一般社団法人電子情報技術産業協会によれば、全国で今後 10 年間に、4 万人以上の半導体人材が不足するとも言われています。半導体人材の育成に向けて、どのように取組を進めま すか?経産大臣に伺います。
14<経産大臣>
次は提案、問題提起を含めた質問です、
経産大臣は 2 ナノの国産最先端半導体で、何をしたいですか?それこそが、我が国の古くて新しい課題です。
日の丸半導体が絶頂期の半導体は 40 ナノでした。それ以上の最先端の半導体の需要は、国内にありませんでした。設計を得意とする米国は日本以外の国々へ製造を依頼して、米国内で 40 ナノを上回る半導体を使った商品を開発していきました。それが、パソコンや携帯、のちのスマホへ繋がっていきます。
半導体産業の栄枯盛衰はわずか 4 年のサイクルとも言われています。
今年の 1 月から 3 月までのわずか 3 ヶ月で、速報値ではありますが、TSMC は過去最高の 3 兆 8000 億円の売り上げを記録しました。
しかし、このように、我が世の春の TSMC ですが、2年後には反動が襲ってくるかもしれません。
世界一とされる TSMC でさえ、将来が保証されているとは言い難いのが、今の半導体市場です。冒頭お尋ねした、最近の関税問題を考えると、1日先でさえわかりませんよね。
となると、量産開始が予定される 2027 年から世界に最先端半導体を輸出することが事業の主なミッションでは心配です。
そこで、お伺いしたいのは、国内での最先端半導体の活用です。
15<経産大臣>
経産大臣、2027 年以降、最先端半導体を使って、何が国内で作れますか?
そして、最先端半導体を使った日本製の製品やサービスの何が、我々をワクワクさせてくれますか?
最先端の半導体で何を作って、世界の皆様に何を提供できてどんな貢献ができるのでしょうか?
ひとつは、人間の代わりになるヒューマノイド ロボットです。
私たちは、「鉄腕アトム」や「ドラえもん」ようなアイデアだけでなく、アシモのような実 在するロボットなど、人間のような動きをするヒューマノイド ロボットをすでに誕生させています。
しかし、それを使った具体的な需要が、日本の経済社会になかったため、その先に進めなかった日本。
ちょうど、今月 13 日に大阪・関西万博が開幕しましたが、振り返ってみると、1970 年の大阪万博には、数多くのヒューマノイド ロボットが登場していましたが、今、日本でヒューマノイドロボットの存在感は際立っていると強くは、感じられません。
国があまり支えてこなかったのが、ヒューマノイドロボット産業の凋落の一因ではないでしょうか?
一方、2025 年 1 月、ラスベガスでの最先端デジタル産業見本市 CES では、米国や中国を中心にヒューマノイドロボットの展示が多数あり、人に代わって工場で働いたり、人に代わって家事を担ったりすることが想定されています。
鉄腕アトムやドラえもんのように、一家に一台の時代も遠くないかもしれません。
16<経産大臣>
ヒューマノイドロボット産業のような、最先端半導体を使う国内産業の育成が喫緊の課題ではありませんか? 経産大臣に伺います。
17<経産大臣>
ところで、今世界を席巻しているGAFAM と呼ばれる企業は、製造業ですか?Google は?アップルは?Amazon?マイクロソフトは? おそらくサービス業が答えではないでしょうか?
経産大臣に伺います。
大量生産大量消費のための製造業の効率化、日本が最も得意としてきた分野ですが、世界ではサービス業と製造業の融合が進み、サービスで儲ける仕組みを着々と構築しています。
先ほど取り上げたヒューマノイドロボットも人の代わりをする、いわば「サービス」の担い手です。
日本を豊かにしてくれる日本製のロボット。世界の後追いではなく、独創性に満ち、我々をワクワクさせてくれるようなものであって欲しいものです。
18<経産大臣>
技術に裏打ちされた有力な製造業が、製品を製造するだけでも、多くの努力が必要ですが、今後望まれるのは、サービス業との融合であり、そこに楽しさ、憩い、癒し、エンターテイメントなど芸術文化などまで、バージョンアップしたり、アフターケアとして、さらなる楽しさも提案してくれたりする、そんな複合、総合企業を後押しする最先端半導体であって欲しいものです。
が、そんな動きが期待できますよね?経産大臣?「社運」ならぬ「国運」をかけた力強い責任と覚悟をご答弁願います。
日本の将来と未来がかかる極めて重要な法案であることを広く理解していただき、闊達な審議が行われることを期待して質問を結びます。
ご清聴ありがとうございました。
