立憲民主党は、2月5日午後、食料・農業・農村政策WT(座長・田名部匡代参院議員)・農林水産部門(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)合同会議を国会内で開催、食料・農業・農村基本計画の骨子(案)について、農林水産省から説明を聴取し、質疑応答を行いました。
冒頭、田名部WT座長より、「今日は、食料・農業・農村基本計画骨子についてご説明いただく。我々としてもしっかりと意見を述べていきたい。お話をお聞かせいただき、今後皆さんと協議を進め、取りまとめていきたい」とのあいさつがありました。
続いて、金子部門長より、「食料・農業・農村基本法改正はわれわれの思いとは違った形で終わってしまった。我々が提出した修正案はご理解いただけなかったが、附帯決議を付した。我々がずっと申し上げてきた意見がどのように基本計画に反映されるのか、しっかりとチェックしていかなければならない。農水省の皆さんにはぜひ取り入れていただきたい」とのあいさつがありました。
ついで、農林水産省より、食料・農業・農村基本計画骨子(案)(以下「骨子(案)」という。)の概要について説明を聴取しました。特に、先週取りまとめられた「水田政策の見直しの方向性(概要)」および「『おいしい日本のお米を世界へ!(仮称)』プロジェクト」の内容が盛り込まれた骨子(案)の部分については、詳細に聴取しました。
質疑応答では、参加議員から食料自給率、水田政策の見直し、農地の受け皿となる経営体の育成、自然災害への対応等、様々な指摘・質問がなされました。
■食料自給率
参加議員から、「基本計画で大事なのは食料自給率。具体的な数値はまだ入っていない。45%は守ってもらいたい。自給率の数値について審議会でどのような議論があったのか」(神谷裕衆院議員)、「江藤農相も石破総理も食料自給率よりも自給力と言っている。方針転換が明確化したのではないか」(近藤和也衆院議員)との発言、指摘があり、農林水産省からは、「自給率の数値について、審議会ではこれからの議論。政府でもこれから検討」との回答がありました。
また、「骨子(案)に、『農地が現在の人口1.2億人分の需要全体を賄うために必要な面積の1/3程度しかなく』と書かれているが、この需要の前提は何か。何を食べるかによって自給率は変わってくる」(小山展弘衆院議員)との発言があり、農林水産省からは、「需要は現状の食料需要を前提としている。自給率は分母、分子で変わりうるもので、消費面が大きく影響する」との発言がありました。
■水活(水田活用の直接支払交付金)をめぐる混乱
参加議員から、「水田も畑も大事にするというメッセージであると受け止めた。水活をめぐって二転三転し、農家が大変混乱した。現場に合った最終的な解決策を見出していただきたい」(神谷裕衆院議員)、「5年水張りを求めないということで喜んでいる農家もあると思う。しかし、北海道は、水活をめぐり、相当混乱してきた。元気なうちは農業を続けていきたいと思っていたが、水を張れないから畑地化促進事業に取り組み、5年間の支援が終わったら離農すると決めている農家もたくさんいる。その農地の引き受け手がいない。荒廃農地となる。ただでさえ農地が減っていく中、大変なことをしてくれたなと思っている」(徳永エリ参院議員)との指摘がありました。
農林水産省から、「畑地化に取り組んでいただいた農家に対する5年間の定着化促進支援をめぐる6年目問題であるが、今般の政策見直しは、令和9年度から麦、大豆、飼料作物は水田、畑にかかわらず支援するというもの。水準論はこれからの話。今までは、水活から卒業して畑地化促進事業に移れば、6年目以降はゲタ(畑作物の直接支払交付金)1本となるが、今後は水田、畑にかかわらずということなので、畑地化した後、受け手がいない、ゲタだけでは上がらないというところの手当てを検討、ということでご理解を」との回答がありました。
■水張り面積の把握、今後の水張り要件
参加議員から、「水活で水張りを行っている農地は交付対象農地のうちどのくらいか」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。農林水産省から「つかんでいない」との回答があり、参加議員から「実態としての水張りを把握しないまま、水張りを求める施策を続けてきた」(渡辺創衆院議員)との指摘がありました。
また、「令和9年度以降、作物ごとの生産性向上への支援へ転換するため、水張りは求めないということであった。また、令和7年、8年の対応として連作障害を回避する取組を行った場合、水張りはしなくてもいい、とも書かれている。荒廃していた水路、畦畔の整備をやらなくていいのか、という疑問が現場から出てくると思うが、どういう方向性か」、「令和9年度以降、畦畔も水路もできている中で、水活の交付金はどうなるのか」(以上、西川将人衆院議員)との質問があり、農林水産省から、「令和7年、8年は現行の水活であり、水田としての機能を有し、水張りをすることが前提。仮に、畦畔を作り直すとか水路を作り直すということであれば、不正受給となる。9年以降は、麦、大豆に湿害が出るような水張りはしなくてよいことになる」、「水活がどのような名称になるのかということもあるが、麦、大豆、飼料作物については、水田、畑にかかわらず、生産性向上に取り組む者への支援へ見直すべく検討することとしている。一切支援がなくなるというものではない」との回答がありました。
■水田維持の必要性
参加議員から、「水活の水張りについては応援していた。なぜ腰砕けになったのか。冬期湛水をすれば、ドジョウもフナもゲンゴロウも復活し、環境にやさしい農業に直結する。こちらに誘導し交付金を交付すればよい。いずれ、米をきちんと作ってもらわなければ困る時代が来る。団塊の世代がリタイアしたら、次の世代は農業をやらない。長期的に考え、水田として維持するため、水田の汎用化に投資すればよい」、「2010年に戸別所得補償を導入したときは、米が余っているが援助しなければやっていけないということで、反当り15,000円の単価を設定した。麦、大豆については単価を高くし、そちらへ転換するようにした。麦、大豆の生産性向上は大事だが、水田機能も維持しなければならない」(以上、篠原孝衆院議員)との発言がありました。
農林水産省から、「農業者が急激に減少していく構造変化への対応が求められている。人口減少により、消費が減る米だけでなく、麦、大豆、飼料作物の海外依存度を減らすため、生産性を上げていくことにより、農地が維持され、食料自給力も確保されていくという考え方」、「14年前と比べ農業従事者の年齢層が上がっている。稲作農家は高齢者層、小規模兼業が多い。農業構造が変化する中、担い手がそうした農地を引き受けていくことになる。大規模農家は麦や大豆を併せて生産しているところがかなり多い。麦大豆の生産性向上を支援していく」との発言がありました。
こうしたやり取りの後、参加議員から、総括的に「麦大豆を支援するのがいけないとは一言も言っていない。やらなければならない。今般の政策見直しに、水田機能の維持という視点が欠けている」との発言があり、これに対し、農林水産省から「水田をつぶすとは言っていない。作物に応じて生産性を上げていく取組を後押しする」との発言がありました。
■飼料用米の政策的位置付け
参加議員から、「飼料用米は生産性が課題であるとのことだが、何が課題か。なぜ、青刈りとうもろこしを推奨しようとしているのか」、「令和9年度以降は、飼料用米の交付単価を引き下げるのではなく、地域の実情に合わせて選択肢を用意するということになるのか」(以上、山田勝彦衆院議員)との質問がありました。
農林水産省から、「農業人口減少が見込まれる中、青刈りとうもろこしは省力化できるので、振興を図っていく」、「令和9年度からの予算については、これからさまざまなご意見を伺い、現場を調査しながら検討していく」との回答がありました。
これらのやり取りを受け、参加議員から「飼料用米は万一不測の事態が起こったときに、主食用米に転換できる。食料安全保障の確保という観点から飼料用米の生産を強力に支援していくべき」(山田勝彦衆院議員)、「飼料用米を推奨してきたのは、ほかならぬ農林水産省。ここにきて、突然、青刈りとうもろこしがいいという話であるが、飼料用米の生産に取り組んできた農家の努力を否定してほしくない」(神谷裕衆院議員)との発言がありました。
■麦・大豆本作化への懸念と出口対策の必要性
参加議員から、「麦・大豆の本作化というが、現在、価格が下がっている。水活の見直しで、支援がゲタ1本となれば、北海道の農家はどうなるのか、安定供給、一定の品質保持という点で外麦が使いやすいとの声もある。大丈夫か」(徳永エリ参院議員)との指摘がありました。農林水産省から、「国産大豆の特徴を生かした商品ができてきており、需要はある。生産性を高めることで農家の手取りも増えていく」との発言がありました。
これを受け、参加議員から「麦、大豆の国内生産量を高めても輸入と比べれば圧倒的に少ない。外麦と競争していくのであれば、需要の開拓、出口戦略をしっかりやらなければならない。北海道から内地に輸送するコストが上がっている」(徳永エリ参院議員)との指摘がありました。
■水田政策見直しの予算確保
参加議員から、「水田政策の見直しについて、『予算は、現行の水活の見直しや見直しに伴う既存施策の再編により得られた財源を活用』と書かれているが、この一文は不要。予算に上限を設けるという悪いメッセージになるのではないか」(近藤和也衆院議員)、「これまで畑地化を進めてきたが、今後は、水田であれ、畑地であれ、支援をしていくということであれば、単価設定、産地交付金等様々な課題が出てくる。今の予算では厳しいと思う。我々も声を上げていくところは声を上げていきたい」(神谷裕衆院議員)との発言がありました。農林水産省からは、「支援水準はこれから。必要予算はしっかり確保していく」との発言がありました。
■米の生産目標
参加議員から、「猛暑、酷暑の影響で米の収量が下がることを織り込んで、生産目標を考える必要がある。増産に舵を切り、備蓄を増やすことを考えるべき」(小山展弘衆院議員)との発言があり、農林水産省から「ご指摘の問題意識はある」との発言がありました。
■米の流通対策
参加議員から、「食料供給困難事態対策法が制定されたが、今般の米価をめぐる状況から、流通をしっかりしなければどうにもならないことが明白になった。改善の余地があると思う」(近藤和也衆院議員)との指摘がありました。
■米の輸出
参加議員から、「米について、低コストで生産できる輸出向け産地を育成するとあるが、低コストのレベルはどのくらいか」、「輸出向け産地で生産された米が国内市場に流れていく可能性はあるのか」、「米の輸出戦略としては、高品質かリーズナブルか、いずれを目指すのか」(以上、岡田華子衆院議員)との質問がありました。
農林水産省からは、「ターゲットは、為替レートにもよるが、カリフォルニア米の9,500円。集積・集約化して、多収品種を作付ければ可能」、「水活の中に、輸出を含めた新市場開拓米への支援がある。この米については用途限定がかかる」、「米の輸出に一生懸命取り組む産地は、国内マーケットにも加工業務用米に当てていくようなイメージ。お米のあらゆるところにアクセスしようとする産地が輸出産地ではないか」との回答がありました。
■農地の受け皿の育成
参加議員から、「今後、離農する経営の農地の受け皿として、経営体をどう育成していくのか」(小山展弘衆院議員)との質問がありました。農林水産省から「集約してコストを下げていくことは必要。家族経営、法人経営を等しく大事にしてきたが、現場の経営としては法人が伸びてきている。雇用して加工販売に取り組み、経営を多角化し、収益規模を上げたいという声もある。こうした経営の資金力を手当てする政策を盛り込めないか、検討していく」との回答がありました。
■自然災害への対応
参加議員から、災害の備えとしての農業保険に関連して、「自然災害により今年も来年も作付けできないというところへの支援を考える必要」(近藤和也衆院議員)との指摘がありました。