立憲民主党は、2月7日午前、森林・林業・山村振興WT(座長・近藤和也衆院議員)・農林水産部門(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)合同会議を国会内で開催、土地改良法等の一部を改正する法律案について農林水産省より説明を聴取、漁業災害補償法の一部を改正する法律案について水産庁より説明を聴取し、質疑応答を行いました。次いで、山村振興法改正に向けた論点(案)について、協議を行いました。
冒頭、近藤WT座長より、「山村振興法の改正は今回で8回目となる。同法は昭和40年制定であり、生まれていない方もおられると思う。地域の実情について詳しい議員の皆様からお話を伺ってわれわれの考えをしっかりと取りまとめていきたい」とのあいさつがありました。
続いて、野間健部門長代理より、「金子部門長は予算委員会の準備のため、遅れて出席する。山村振興法の他、土地改良法改正案、漁業災害補償法改正案について、ヒアリングを行う」とのあいさつがありました。
■土地改良法改正案、漁業災害補償法改正案について
まず、農林水産省より、土地改良法等の一部を改正する法律案の概要について、説明を聴取しました。同法案は、農村人口及び農業者の減少が進む中、土地改良施設の老朽化並びに自然災害の激甚化・頻発化に対応して、土地改良施設の保全等を図るため、申請によらない国等による基幹的な農業用用排水施設の更新事業の創設等の措置を講ずるものです。
続いて、水産庁より、漁業災害補償法の一部を改正する法律案について、説明を聴取しました。同法案は、海洋環境の変化等による漁業経営に不安定性の増加を踏まえた複合的な漁業や需要に応じた養殖生産に取り組む漁業者のニーズに対応し、複数の漁業種類をまとめて締結できる契約方式の創設や養殖共済の支払要件を緩和する特例の追加等の措置を講ずるものです。
参加議員からは、「漁業共済の規模、年間の支払、近年の傾向はどうなっているのか。掛け金に対する国からの補助の規模はどのくらいか」(渡辺創副部門長・衆院議員)との質問があり、水産庁から「令和5年度の引受件数は5万4千件ほど。支払共済金の額は270億円ほど。近年の共済金の支払の推移は、コロナの時は需要が滞ったこともあり、支払が増えたが、おおむね200億円から250億円の間で推移してきている。共済掛金に対して国庫から補助をしており、規模が小さい漁業者ほど補助率が高い体系となっている。年間100億円ほどの予算措置をしている」との回答がありました。
また、「漁業者にとって選択肢が増えるので良い改正だと思う。別の観点だが、農水省の特別会計は全体的には約1,000億円毎年繰り越しが行われている。こちらの漁業共済の特別会計では、どれくらい繰り越しをしているのか、その理由は何か」(山田勝彦衆院議員)との質問がありました。
水産庁から「特別会計との関係であるが、各県の共済組合が引受をし、その上で、全国連(全国漁業共済組合連合会)が再共済することで危険分散を実施、さらに、異常災害による巨額の損失に対応するため、国が再保険を実施し、特別会計で経理を行っている。保険金をどのくらい支払わなければならないのか、その年の状況に応じて、保険料と合わせて国の特別会計でどれだけの額を置けるかという観点から管理をしている。具体的な数値は手元にないので、後ほど、ご説明に伺う」との回答がありました。
■山村振興法改正に向けた論点(案)について
続いて、3月末に法律の有効期限を迎える山村振興法の改正に向けた論点(案)について、協議を行いました。
まず、近藤座長から「冒頭、申し上げたとおり、山村振興法はかなり歴史のある法律。同法に該当しない地域は沖縄、長崎、大阪。この地域はどう考えても山村だろうというところが入っていないこともあるが、その地域の方から声が上がってこないのも実情。せっかくの振興法である。本当にその地域のためになる法律にしていかなければならない。昨日、ほぼ全ての政党が参加した同法に関する超党派の会合が行われた。再来週にも超党派の会議が開かれる。何か要望があれば来週に提出することとされた。改正に盛り込むべきこと、地元の方から言われたということなど、ぜひ、ご意見をいただきたい」との発言がありました。
続いて、渡辺創副部門長より「昨年末、山村振興法について、我が党でもWTに加えるという方針を決定し、進めてきた。同法は10年間の時限立法であり、この3月末で期限を迎える。他の同様の法律と違って、山村振興法については政党間で議論する議連がない。一部の国会議員や各自治体の首長やオブザーバーの都道府県により構成されている山村振興連盟という団体の要望、意見書をもとに、自民党の関係議員が作成した「山村振興大綱(案)」が、昨日、臨時の会議体で示された、という状況である。今後、進め方について、昨日の協議会では、来週の10日までにご意見をいただきたいと。いただいた意見を追加で検討して、条文化の作業を進め、2月17日から24日の週にもう一度超党派の実務者による会議を開催して、最終的な詰めを行い、日切れなので、3月中に各党で機関決定の手続きをとり、成立させるという運びである」との説明がありました。
さらに、渡辺副部門長から、超党派の会議で示された「山村振興法大綱(案)」には、法の期限を10年間延長し、目的規定、基本理念及び目標規定の見直し、配慮規定の拡充・追加が掲げられている、昨日の会議には、山村振興連盟から岩手県の葛巻町長や群馬県の嬬恋村長が来られ、『東京や首都圏の一極集中をどう改善するのか、人口が増えない状況で山村地域においてどう対処するのか、考えていただきたい。森林環境譲与税はありがたいが、配分がおかしいのではないか、考えていただきたい』という要望、『山村の環境が厳しくなっている。国土の半分を2.5%の人口でフォローしているので、しっかりと対応いただきたい』という思いが強く示されたことの紹介がありました。
その上で、「今般、WTとして、事前に、山村振興法の改正に向けていろいろ研究をしておられる林野労組とお話をさせていただき、強く打ち出していいのではないかという事項を『山村振興法改正に向けた論点(案)』としてにとりまとめた。条文化の作業もあるので、ご意見をいただきたい」との発言がありました。
続いて、参加議員から様々な意見が提出されました。
参加議員から「山村振興法に基づき、農業や林業を支えるためどのような政策が実行されているのか」(山田勝彦衆院議員)との質問があり、同席していた農林水産省より「他の地域振興立法と同じであるが、補助率を通例50%のところ55%に嵩上げする、採択要件を緩和するという優遇措置を講じている。山村振興に特化したものとしては、10年前の改正により、地域資源を使った商品開発をするソフト事業が同法の特別事業として施されている」との回答がありました。
さらに、参加議員から「具体的な支援が山村に届いていない。半島振興WTの事務局長を務めており、昨日第1回の与野党の会合があり、我々として、一次産業を支えるため、ハンディキャップのある物流コストを支援すべきではないかと提言させてもらっている。半島振興と山村振興は、同じ地域振興法として連動できるのではないかと思っている。もう一点、医療に関して、半島地域で僻地診療所として国から特別の支援を受けるには無医地区の指定が必要となるが、厚労省とよく議論すると、準無医地区であっても国からの支援が受けられることがわかった。半島振興法でも、『無医地区』というところを『無医地区に限らず』、医師の確保、医療サービスの維持ができる法改正を、という議論をした。山村振興法でも連動できると思う」(山田勝彦衆院議員)との発言がありました。
参加議員から、「人材不足の中、山村への人材の呼び込みが非常に重要。将来的には、外国人が増えてくるのではないか。現時点でも、技能実習から就労育成という形になってくる。各地域で、外国人材とうまく交流できているところもあれば、交流がとれておらず、もともとの地域住民が不安、不満を抱えておられる事例もある。山村振興法になじむかどうかわからないが、外国人との交流促進の観点が盛り込まれたらいいのかなと思う」(梅谷守衆院議員)との発言がありました。
参加議員から、「森林環境譲与税について、譲与基準となる森林面積と人口の割合を変えて、面積の割合を少し高くしてもらっているが、地方からは、まだまだ面積の割合を高くしてほしいとの要望がかなり上がっている。今回の改正の中で引き続き検討していただきたい。太陽光パネルには鉛やカドミウムといった有毒物資が含まれており、今後、大量に太陽光パネルが廃棄される時期に差し掛かっていく。償還時期を迎えた太陽光パネルが放置されてしまうことに、危機感をもっている住民が増えている。責任の明確化、確実な廃棄処分を担保すること等の措置が必要」(西川将人衆院議員)との発言がありました。
農林水産省から「森林環境譲与税については、林野庁に要望を伝える。太陽光パネルについては、農林水産省の所管外」との発言があったので、関係議員から「太陽光パネルについて、配慮規定に入れるよう我々としても要望したい」(近藤和也座長・衆院議員、西川将人衆院議員)との発言がありました。
参加議員から、「かつて、岸田前総理が花粉症対策として、スギの伐採を進め、製材工場をどんどん作っていくという発言をされていた。林野庁に聞くと、製材工場は増えるどころかどんどん減っているという状況。北海道で、釧路に大きな製材工場ができるが、各地で伐採されている丸太が大きな製材工場に全部持っていかれるのではないかという地方の懸念がある。雇用の創出、付加価値を付けるという観点から、木材工場を積極的に作ることが重要。CLT工場を作りたいという話があっても、莫大な初期投資が必要で、結局作れないという状況。このことに、踏み込んだ方がいいのではないか。環境やCO2削減は、森林、山村の大きな役割であり、もっと強調した方がいい。論点ペーパーに、再造林に関する公的補助の拡充、苗木の安定供給、鳥獣対策など、重要な施策が1つの項目にまとめて書かれているが、項目を立てた方がよい。」との発言がありました。
最後に、渡辺副部門長より、「今、いただいたご意見をもませていただく。日切れ法案でもあり、時間がない中、どのくらい条文に盛り込めるか、交渉し、ご報告しながら進めてまいることでよろしいか」との提案があり、了承しました。