立憲民主党は、12月22日午前、畜産・酪農政策WT(座長・渡辺創衆院議員)・農林水産部門(部門長・神谷裕ネクスト農林水産大臣・衆院議員)合同会議を国会内で開催し、令和8年度畜産物価格の決定(報告)について、農林水産省よりヒアリングを行いました。(司会:西川将人畜産・酪農政策WT事務局長・衆院議員)
冒頭、渡辺創座長より「今日は、年末の忙しい中、これから1年間の畜産酪農の在り方に大きな影響のある決定に合わせて、こうした時間をいただいたことに感謝申し上げる。国会も閉会しているが、オンラインを含めて参加しているので、対応をお願いする」との挨拶がありました。
■農林水産省の説明
農林水産省より、令和8年度畜産物価格等について、概略、以下の説明がありました。畜産物価格については、本日22日午後にかけて食料・農業・農村政策審議会畜産部会に諮問が行われ、了承が得られれば決定されるもので、説明は正式決定に先立って行われました。
<令和8年度の加工原料乳生産者補給金及び集送乳調整金の単価、総交付対象数量並びに関連対策について>
(1)単価 加工原料乳生産者補給金 9.11円/㎏(対令和7年度差+0.02円/㎏)
集送乳調整金 2.73円/㎏(対令和7年度差+0.10円/㎏)
ALIC事業(集送乳調整金相当)0.09円/㎏(対令和7年度差+0.01円/㎏)
合計 12.03円/㎏(対令和7年度差+0.13円/㎏)
(2)総交付対象数量 総交付対象数量 325万トン(対令和7年度差±0)
ALIC事業 25万トン(対令和7年度差+7万トン)
合計 350万トン(対令和7年度差+7万トン)
(3)総額 409.0億円(対令和7年度差+8.6億円)
令和7年度対応も含めると413.2億円(+12.8億円)
<令和8年度の肉用子牛の保証基準価格等について>
(1)肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格
(保証基準価格)
黒毛和種 600,000円/頭(令和7年度差+2.6万円)
褐毛和種 547,000円/頭(令和7年度差+2.4万円)
その他肉専用種 348,000円/頭(令和7年度差+1.4万円)
乳用種 174,000円/頭(令和7年度差+1.0万円)
交雑種 274,000円/頭(令和7年度差±0)
(合理化目標価格)
黒毛和種 457,000円/頭(令和7年度差+1.1万円)
褐毛和種 417,000円/頭(令和7年度差+1.1万円)
その他肉専用種 265,000円/頭(令和7年度差+0.6万円)
乳用種 119,000円/頭(令和7年度差+0.9万円)
交雑種 216,000円/頭(令和7年度差±0)
(2)鶏卵生産者経営安定対策事業の基準価格
補塡基準価格 240円/㎏(令和7年度差+10円)
安定基準価格 218円/㎏(令和7年度差+11円)
<令和8年度のALIC事業によるその他対策及び緊急対策の概要>
(1)酪農生産基盤強化のための総合対策 47.7億円(45.7億円)
①中小酪農生産基盤・飼養環境の改善対策
②地域の生産体制の強化対策
③酪農ヘルパー対策
④生乳の流通合理化対策等
⑤乳用牛の能力向上対策
(2)肉用牛経営安定対策の補完事業 42.1億円(38.3億円)
(3)養豚経営安定対策の補完事業 3.2億円(2.2億円)
(4)畜産環境対策 3.3億円(3.3億円)
【リース貸付枠 22億円】
(5)負債整理や家畜伝染病発生農家等の資金対策 11.4億円(9.1億円)
(6)食肉流通の改善・合理化の支援対策 33.8億円(26.7億円)
(7)肉骨粉などの適正処理対策 55.9億円(56.7億円)
(8)配合飼料価格低減に向けた取組の推進 1.5億円(1.5億円)
(1)~(8)まで その他対策 計 198.9億円(198.9億円)
上記のほか、緊急対策として、
①バター・脱脂粉乳不均衡及び生乳流通改善緊急事業
②優良和子牛生産推進緊急支援事業及び和子牛生産地基盤強化対策事業
等を実施。
■参加議員からの質問と農林水産省の回答等
<加工原料乳生産者補給金等の単価は物価上昇分を反映して設定すべき>
参加議員から「加工原料乳生産者補給金等は3年間のデータを使用してコストの変動等に基づく一定のルールにより算定するとされているが、飼料代等物価上昇率を考えれば、補給金単価はもう少し上がってもいいのではないか。少なくとも物価上昇分くらいは保証されるべきではないか。物価上昇率と比べ今回の単価は十分上がっているという認識なのか」(小山展弘衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「基本的には、運賃の上昇率よりも今回の集送乳調整金の上がり率の方が大きいと思っている。特に、直近3か月のデータを算定に使うことになっているが、適切に物価は反映されていると考えている。乳価は乳業メーカーとの相対の交渉の中で反映していくことが基本だと思っている。コロナの前くらいから配合飼料価格、燃料費が上がり、生産コストが非常に高くなった。この3年間の中で乳業メーカーと生産者団体が交渉いただき、6回乳価引き上げられた。年間で見ると2,600億円程度の上昇効果がある。全体の乳価は上がっていると思っている。我々としても乳価交渉に適切に反映できるよう、需給の改善を通じて環境を整備していきたい」との回答がありました。
<畜産物輸送に当たる人材不足への対応>
参加議員から「委員会決議の中に、輸送について言及があった。畜産の生体輸送については本日のテーマではないが、原料乳の輸送については特殊性がある中、運転手の高齢化、人手不足が進む中、人材確保が大変という話を聞いている。農水省としての今後の方針を伺いたい」(小山展弘衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「生体輸送について、ALIC事業により対策を講じており、家畜輸送における効率化、フェリー等における暑熱対策、今回新たに措置したものとして、係留施設の整備、運転手への家畜の取扱い等に関する研修等がある。係留施設の整備への支援は、家畜市場へは農家が自分のトラックで家畜を運ぶが、農家も高齢化により輸送が難しくなることから、広い地域では係留施設を置くことにより、農家が運ぶ距離を短くしようというもの。また、家畜の取扱いは特殊であるため、運送会社の運転手が定着しないことも聞いているので、運転手への家畜の取扱い等に関する研修等を支援することにより、ドライバー不足に対応しようと考えている」との回答がありました。
<肉用子牛の交雑種の需給状況>
参加議員から「肉用子牛の交雑種の価格が据え置かれている。北海道で交雑種が増えているが、需給の現状はどうなっているのか」(西川将人事務局長・衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「性選別精液が普及しているが、黒毛和種よりも交雑種の方が簡単であるため、交雑種が増えて、価格が弱含みとなっている。肉用子牛生産者補給金は、交雑種を酪農家から買ってきて子牛まで育てて肥育農家に売る方を対象とした補給金。交雑種の需給が緩和し、育成農家のコストが安くなったことから、今回、据え置いた」との回答がありました。
最後に、神谷裕部門長より「一年大変お世話になった。農林水産部門は本日で閉じる。今年の議論に改めて感謝申し上げ、来る年、皆さんと議論を深められたらと思う。どうぞ良いお年をお迎えください」との挨拶がありました。
