立憲民主党は、2月12日午後、棚田振興WT(座長・大串博志衆院議員)・農林水産部門(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)合同会議を国会内で開催、山村振興法の一部を改正する法律案、棚田地域振興法の一部を改正する法律案についての論点・課題を整理し、「次の内閣」に議員立法の登録をすることについて、協議決定しました。

 また、食料・農業・農村基本計画骨子(案)について、農林水産省から説明を聴取し、質疑応答を行った後、新たな食料・農業・農村基本計画に盛り込むべき事項について、議員間協議を行いました。

 冒頭、近藤WT事務局長より、「本日は、棚田地域振興法改正案と山村振興法改正案の法案登録を目指して議論をお願いする。先ほど、超党派の棚田振興議員連盟の会合があり、B/C(費用便益比)にこだわっていてはいけないという議論があった。B/Cを超越して棚田地域振興の予算を獲得する裏付けとなる法律となると思う。何とか、我々の意見をまとめて法案作りをしていきたい。超党派の議連の中で、野党第一党としての力を発揮したい」とのあいさつがありました。

 続いて、金子恵美部門長より、「棚田地域振興法改正案と山村振興法改正案は議員立法であるので、我々の意見がきちんと反映されたものになっていかなければならない。単純延長ではないということから、さまざまなご意見が出てきた。今、棚田議連の中で、前進できているところとそうでないところがあるかもしれない。よりよい法案となるよう現場でそれぞれの議員に頑張っていただいている。農水省の担当とも一致団結して勝ち取っていきたいと思っている。そのあと、食料・農業・農村基本計画骨子(案)についてのご意見を賜りたい」との挨拶がありました。

■山村振興法改正案及び棚田地域振興法改正案の法案登録

 まず、渡辺創森林・林業・山村振興WT事務局長より「山村振興法改正案について、前回の会議で提出されたご意見を網羅する形で文書を取りまとめ、10日から政党間の協議に入ったところであり、今後、法案が具体化すればお示しする」との報告があり、法案登録することについて了承されました。

 続いて、近藤和也棚田振興WT事務局長より「5年前に議員立法で成立した棚田地域振興法について、我が党が取りまとめた同法をめぐる課題を超党派の議連に提出し、本日、法律案の骨子案という形である程度の答えをいただいた。我が党の意見はあらかた反映されたが、『中山間地域等直接支払制度の棚田加算の活用を更に促進するための見直しが必要ではないか』との意見が法律案の骨子案に十分反映されていないことから、その旨指摘した。各党から援軍のような形での発言があり、さらには議連会長からも、しっかりしていくべきではないかとの声が上がった。一方で、事務方などから、棚田地域の特性に即した農業の振興を図るための生産基盤の強化等についての配慮規定を追加することにより、加算措置などの予算措置が読めるのではないかとの話もあった。現在、法制局にボールを預けた状況。条文化の作業をし、来週21日くらいには出したいという日程感である」との報告があり、法案登録することについて了承されました。

■食料・農業・農村基本計画骨子(案)について質疑応答 基本計画に盛り込むべき事項につき協議

 次に、農林水産省から、食料・農業・農村基本計画骨子(案)(以下「骨子(案)という。」の概要及び食料・農業・農村基本計画における目標・KPIの検討(案)について説明がありました。

 これに対し、参加議員からは、食料自給率目標の定め方、目標・KPIにおける数値の示し方、農村維持の重要性、農業者の所得向上・補償の重要性、米価形成における流通へのコミットメントの重要性、飼料用米への支援の在り方、農家の意見聴取のスケジュール感、農業・農村の視点に立ったAI、GX、ICTの取組の必要性、事業申請手続きへの支援の必要性、物流コストの高騰への対応、雇用就農資金の見直し、予算規模のイメージなど、様々な質問、指摘がありました。

 参加議員からの質問、指摘と農林水産省の回答の概要は次のとおりです。

(食料自給率目標の定め方)

 参加議員から、「食料自給率目標は、以前の基本計画では品目ごとに消費の見通しと生産努力目標が示されて定められていたが、今回も同様に定めるのか。新たな基本法では、自給率のウェイトが弱まっているが、自給力についてどのように具体化していくのか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。

 農林水産省から「食料自給率目標については品目ごとのどれくらいの生産量を目指すのか検討している。自給力については、人、農地、技術、資材が当てはまる。それぞれどのような目標が立てられるか、検討している」との回答がありました。

(目標・KPIにおける数値の示し方)

 また、「目標の例として輸入の安定化、備蓄の確保が掲げられているが、具体的な数値が掲げられる目標はどれくらいあるのか。数値がないと政策効果の判断が難しい」(岡田華子衆院議員)との指摘があり、農林水産省から「目標で数値が入らないものもありうるが、現在検討中。KPIは数字がないと評価できないので、数値を示すことを検討している」との回答がありました。

(農村維持の重要性)

 参加議員から、「農村振興が掲げられているが、振興よりも何とか維持してほしいというのが地方の現状。維持に力を入れるべきではないか」(近藤和也衆院議員)との指摘があり、農林水産省から、「基本法においても『農村の振興』と書かれている。維持があった上での振興であり、維持発展という形になる」との回答がありました。

(農業者の所得向上・補償の重要性)

 参加議員から、「農村振興施策に『経済面の取組(所得向上と雇用創出)』とあるが、これは農業者の所得向上を念頭に入れたものか」(田名部匡代参院議員)との質問があり、農林水産省から「農村における所得については、まずは農業者の所得である。地域としてさまざまな取組をしていただき、農村における所得の確保を支援することも含む。農業者の所得、農村地域の所得の向上を支援していくという考え」との回答がありました。

 また、「食料安全保障を確保する上で、生産者の方々の所得の補償、再生産可能な環境を作っていくことは大事だと思うが、こうした考え方が盛り込まれているのか」(田名部匡代参院議員)との質問があり、農林水産省から「生産性向上、付加価値向上により所得の確保・向上を図ることが基本的な考え方。直接支払については、水田政策の見直しの中で、現在の直接支払の制度をどう見直していくのか、今後検討していく」との回答がありました。

(米価形成における流通へのコミットメントの重要性)

 参加議員から、「今回の米騒動で流通へのコミットメントが大事であることが明確になった」との指摘があり、農林水産省から「『合理的な価格形成』のところで記述する」との回答がありました。

(飼料用米への支援の在り方)

 参加議員から、「耕畜連携の事業の支援対象から飼料用米が抜けていたが、なぜか」(山田勝彦衆院議員)との質問があり、農林水産省から「できるだけ飼料をたくさん作っていただきたい。なかなか生産が進まないものを支援している。飼料用米は普及し、かなり定着してきている。一般的な飼料作物について耕畜連携が進むようにということで提案させていただいている」との回答がありました。

 また、「飼料用米を作って肉質を変えないように手数をかけて努力してきたという若手畜産農家のお話を伺った。米を使って家畜を育てるのは世界に向けて誇れる日本のブランド。頑張ってきた農家の意欲をそがないよう支援してほしい。食料安全保障を考えれば、水田で飼料用米であれ、主食用米であれ作っていただくことが大事」(田名部匡代参院議員)との指摘がありました。農林水産省から「飼料用米の給餌に工夫しながらの努力やブランド化の取組が継続できるように考えていく。湿田では青刈りとうもろこしはできず、米しかできないが、できるだけ飼料を多く収穫するということでは、青刈りとうもろこしは非常に優れたものであり、作付け可能なところでは有効。調査した上で対応したい」との回答がありました。

(農家の意見聴取のスケジュール感)

 参加議員から、「これまで、農家に十分な説明がないまま、様々な政策がすすめられている。飼料用米を見直すことについて、しっかりと現場の生産者の声を聴いているのか。どういうスケジュール感で現場の意見を聴いて基本計画を作ろうとしているのか」(山田勝彦衆院議員)との質問がありました。

 農林水産省から「水田政策の見直しについては1月31日に公表し、これからご意見を聴いていく。政策見直しの実施は令和9年度からで、7年度中に検討を進め、8年に概算要求という流れ。基本計画については、3月までに策定するが、2月17日の週に全国11ブロックで地方意見交換会を実施するとともに、2月7日から21日まで、ホームページで意見募集を行う。ご意見を賜りながら検討を深めていく」との回答がありました。

(農業・農村の視点に立ったAI、GX、ICTの取組の必要性)

 参加議員から、「AI、GX、ICTが大事なのはわかるが、機械化によって農村が栄え、農家が豊かになったとは言えない。そうした反省を踏まえて進める必要。最先端の技術に農家が従属させられてしまうようでは本末転倒」(近藤和也衆院議員)との指摘がありました。

 農林水産省から、「農業人口が減少する中でも生産を維持発展していくためには、新しい技術を現場に入れることが必要。その際、昭和時代のように機械化貧乏ということにならないよう、サービス事業体の育成・活用について記述している。過剰投資にならないことを念頭に取り組んでいく」との回答がありました。

(事業申請手続きへの支援の必要性)

 参加議員から、「事業の申請に何十枚もの書類の作成を求められるが、高齢の集落営農組織にはパソコンを使えない方がかなりおられ、自分たちでは申請できない状況。支援が届かないと離農していくことになる」(徳永エリ参院議員)との指摘がありました。

 農林水産省から「補助金申請手続きに現場の農業者にかなり労力をおかけしており、これまでeMAFF(農林水産省共通申請サービス)で対応してきたが、使いにくいとの指摘があったため、もう少しシンプルな形でできるよう、令和8年度中に見直しを行う。他方、自ら申請できない農業者へのサポートは市町村やJAが担っており、この労力を改善できないか、検討している。最前線の方々のご意見をシステムに生かしていきたい」との回答がありました。

(物流コストの高騰への対応)

 参加議員から、「物流効率化、モーダルシフトは理解するが、輸送コストが相当高くなっている」(徳永エリ参院議員)との指摘があり、農林水産省から、「モーダルシフトだけで解決するとは全く考えていない。トラックドライバー不足に対応し、1台当たりの積載量を高め、パレットを導入して荷積降し時間を短縮するなど様々な対策を合わせて実施していくことで、できるだけコストがかからない形で物流を確保していきたい」との回答がありました。

(雇用就農資金の見直し)

 参加議員から、「農業法人が就農希望者を雇用するときに1人当たり年間最大60万円まで支援する雇用就農資金について、今回の改正で、3人目以降は20万円に減額される。支援の後退であり、逆行している」(西川将人衆院議員)との指摘がありましたが、農林水産省は手元に資料の持ち合わせがないため、次回の会議において回答することとなりました。

(予算規模のイメージ)

 参加議員から、「予算規模のイメージについては、どのように示されるのか」(金子恵美衆院議員)との質問があり、農林水産省から、「基本計画は5年の施策の方向性を示すものなので、予算額について示すことは困難。基本計画では、食料自給力をしっかり確保していく、国内生産の増大を図っていくことをかなり強く意識して記載していく」との回答がありました。

 質疑応答の後、食料・農業・農村基本計画に盛り込むべき事項として、立憲民主党より農林水産大臣に申し入れる内容について、議員間協議を行いました。