参院予算委員会で3月5日、基本的質疑が行われ、立憲民主党から田名部匡代、吉川沙織、野田国義、塩村あやか、羽田次郎各議員が質問に立ちました。
■田名部匡代議員

冒頭、田名部議員は、昨日衆議院を通過した予算に対して「納得できない。本気の歳出削減をして、国民の生活を豊かにし、負担を減らしてく。そうした考え方を政府にも受け止めていただけるように真摯に議論したい」と訴えました。
高額療養費の自己負担額の上限引き上げについて田名部議員は「何度も一旦立ち止まって全面凍結をしてほしいと訴えてきた。石破総理は、なぜ頑なに受け入れなかったのか」と批判しました。
石破総理は「物価上昇分、賃金上昇分はきちんとみていないかといけない」と述べました。
田名部議員は「これだけ物価があがって賃金が追いつかない。国民の生活が苦しいのに、総理は、どのように認識しているのか」と問いかけました。
全国がん患者団体連合会理事・希望の会理事長の轟参考人は、寄せられた当事者の声を紹介しました。「スキルスがんの患者です。小さな子どもがおり、この子を残して死ねません。高額を使っているが苦しいです。家族に申し訳ないです。引上げを知った時、泣きました」。そして、轟参考人は「集めた3万6千の当事者の声を石破総理に直に受け取ってほしい」「自己負担額の上限引き上げで治療を諦める人が出るのは確実。一旦止めてほしいと切に願っている」と強く訴えました。
田名部議員が石破総理に当事者の声を受け取るように再々求め、石破総理は「承ります」と約束しました。
■吉川沙織議員

吉川議員は、初当選した2007年11月20日の国会初質問時から一貫して取り組んできた立場から就職氷河期世代を取り巻く課題を中心に、高額療養費をめぐる課題や参院政治倫理審査会と政治への信頼回復等について取り上げました。
就職氷河期世代を取り巻く課題についてはまず、内閣府が実施する生活満足度調査で年齢階層別の推移について尋ね、いわゆる就職氷河期世代が含まれる40歳から64歳までのミドル層では低い傾向で推移していることを確認しました。その上で、「就職氷河期世代に対して政策を講じるための議論を行う上で必要不可欠だ」として、正規雇用者と非正規雇用者との間の1人当たりの所得税と個人住民税への影響について質問。加藤財務大臣、村上総務大臣は、留意点等を示した上でそれぞれ「マイナス156億円程度」「約250億円程度の減収」と答弁しました。
また、長期間自宅に閉じこもっているひきこもり状態にある人については、40歳から64歳で2.02%と約50人に1人であること(2022年度調査)、全世帯に占める単独世帯の割合は2020年の38.0%に対し2050年には44.3%に、特に65歳以上の単独世帯の割合は2020年の13.2%に対し2050年には20.6%に、それぞれ上昇する見通しであること、さらに1993年と2023年で比較すると就職氷河期世代が含まれる40歳から59歳についてのみ持ち家率が非常に大きく低下していることなどを確認し、「今40代であってもあと20年経てば高齢者世帯に移行する。実態を正しく把握して対応する必要がある」と強調。就職氷河期世代が年金受給者世代になったときの生活保護の試算についても、「さまざまな要素の影響を受けることか推計は困難」だと答弁する福岡厚労大臣に対し、「困難なのは分かるが、正しくはかって将来に備えることが大事。悪い数字であってもそこから対策を講じていくのが政治に求められる役割だ」と訴えました。
高額療養制度をめぐっては、就職氷河期世代全体としては50歳代を迎えつつあるなか、50歳代が5割弱と最も高く、現役世代の利用者としても大きく関わる問題だと指摘。高額療養費制度の見直しは、その発端である新経済財政計画改革工程表では「2028年度までに実施について検討する取り組み」として位置づけられていたにもかかわらず、議題になかった2024年11月15日の全世代型社会保障構築会議で突如として有識者から5、6人が続いて見直しの意見が出たことを受けて厚生労働省が議論されていることを質疑で確認し、「(制度の)制持続可能性は大事だが、プロセスに瑕疵(かし)があり、十分な検討がなされたようには見えない。今一度立ち戻るべきはないか」と迫りました。
■野田国義議員

野田議員は、政治とカネについて(1)自民党旧安部派の政治資金問題(2)企業・団体献金の禁止(3)自民党議員への献金報道(4)政治家の世襲制限――等を質問しました。
2月27日に衆院予算委員会で行われた旧安倍派の会計責任者の参考人聴取について、野田議員は、参考人と安部派幹部とでは発言に食い違いがあると指摘。石破総理に参院でも参考人聴取を行うよう求めました。総理は「国会が決めること」と答弁。これに野田議員は「総理が決めることではなくても参考人聴取の指示をしてほしい」と求めました。
また、与野党で3月末までに結論を得るとした企業・団体献金の禁止を巡る問題について、野田議員は「企業献金の在り方が政治の信頼を回復する上で一番重要な問題だ」と主張。総理に見解を問いました。総理は「企業団体献金を続けていきながら、いかに透明性を確保し、公開度を上げていくかを図っていきたいと提案している。それを判断するのは国民」だと答弁しました。野田議員は企業団体献金により政策が歪められているのが現状だと強調し、総理に献金の禁止を決断するよう迫りました。
■塩村あやか議員

塩村議員は被害総額の推移2千億を超えている特殊詐欺に対する政府の姿勢を質問しました。
警察庁が「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)対策に日本警察の総力を挙げる」と発言したことを指摘し、警視庁保安課で30年ぶりの特別捜査本部を設置した意義を問いました。警察庁は「悪質事業の解散を目指している」と述べました。
関連して塩村議員は、今国会で改正を検討している風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律風営法)に言及し、その効果を問いました。
警察庁は「これだけでトクリュウ対策ができるとは思わないが、卑劣なビジネスモデルの解体に向けて対応していく」と述べました。石破総理も「政府も全力をあげて撲滅を目指して取り組んでいく」と述べました。
■羽田次郎議員

羽田議員は、米国トランプ政権が他国への追加関税や通貨安を問題視する発言をしていることについて、政府の認識を質問しました。対米投資を進めるとしている石破総理に対し、「米国の国益は守られるが、日本の国益は守られるのか」と述べ、「日本の国益を最前線に出して交渉すべき」だと求めました。
また、第3回核兵器禁止条約締約国会議において、広島県選出で立憲民主党の森本真治参院議員が「日本の国会議員で初めて発言」したことに言及し、「唯一の被爆国」として、政府に対しせめてオブザーバー参加するよう求めました。