立憲民主党は、2月28日午前、農林水産部門会議(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)を国会内で開催、山村振興法の一部を改正する法律案、棚田地域振興法の一部を改正する法律案の法案審査を行いました。

 続いて、農業用植物の優良な品種を確保するための公的新品種育成の促進に関する法律案、地域在来品種等の種苗の保存及び利用等の促進に関する法律案、食料供給困難事態対策法の一部を改正する法律案の法案登録を行いました。

 さらに、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案の概要について農林水産省より説明を聴取、漁業災害補償法の一部を改正する法律案の条文について水産庁より説明を聴取、森林経営管理法及び森林法の一部を改正する法律案の条文について林野庁より説明を聴取し、質疑応答を行いました。(司会:渡辺創農林水産副部門長・衆院議員)。

 冒頭、金子部門長より、「大船渡市の山林火災において、大変な被害となっている。改めてお見舞い申し上げる。横沢議員も現地におられた。党復興本部は、週末、岩手にお伺いする予定であったが、山林火災対応ということで、全てキャンセルした。党として一丸となって対応していきたい。議員立法については、私たちの力を見せる場。法制局にお力添えいただいたことを御礼申し上げる」とのあいさつがありました。

■山村振興法改正案、棚田地域振興法改正案の法案審査

 まず、山村振興法の一部を改正する法律案について、衆議院法制局より、背景と改正の概要について説明がありました。

 山村振興法は、1965(昭和40)年に議員立法により10年間の時限立法として制定され、その後、5度にわたって期限が延長され、本年3月31日に失効期限を迎えますが、山村の振興を引き続き図るため、法期限を延長するとともに、現状の課題に合わせた改正が必要ということで議論されています。

 改正の概要は、総論的事項等を改正するとともに、交通通信、産業振興、災害防除等、住民福祉の安定・向上、移住・定住・二地域居住の促進等に係る配慮規定を充実し、法期限を2034(令和16)年度末まで10年間延長するというものです。

 同法案は、部門会議において了承され、次の内閣の法案審査にかけることとなりました。

続いて、棚田地域振興法の一部を改正する法律案について、衆議院法制局より、超党派の棚田振興議員連盟において改正案の骨子、条文案が取りまとめられた経緯と改正の概要について説明がありました。

 棚田地域振興法は、貴重な国民的財産である棚田を保全し、棚田地域の多面的機能の維持増進を図ることを目的として、令和元年に議員立法により時限立法として成立し、本年3月31日に失効することとされています。そのため、棚田地域の振興を引き続き図るため、法期限を延長するとともに、現状の課題に合わせた改正が必要という背景があります。改正の概要は、まず、法期限を2030(令和12)年3月31日まで5年間延長することとし、農地法による処分の迅速化に係る規定の追加、指定棚田地域の振興に資する事業に関する努力義務の追加、農業の振興、移住、定住及び二地域居住の促進など各種配慮規定の追加等を行うものです。

 同法案は、部門会議において了承され、次の内閣の法案審査にかけることとなりました。

■公的新品種育成促進法案、ローカルフード法案、食料供給困難事態法改正案の法案登録

 次に、農業用植物の優良な品種を確保するための公的新品種育成の促進に関する法律案(公的新品種育成促進法案)について、衆議院法制局より、経緯と概要について説明がありました。

 同法案は、徳永エリ参院議員が中心となってとりまとめられ、2024(令和6)年6月、第213回国会に立憲民主党と国民民主党の共同で、参議院に提出されたもので、今回、全く同じ内容の法案を衆議院に提出することを検討しているものです。

 同法案は、地域における農業の基盤である農業用植物の優良な品種を確保する上で農業用植物の新品種の育成が継続的かつ安定的に行われることが重要であることから、公的新品種育成(公的試験研究機関における農業用植物の新品種の育成)の促

進、公的育成品種(公的試験研究機関において育成された農業用植物の品種)の有効かつ適正な利用の確保に関し、基本方針、施策を定め、地域における農業の持続的な発展を図り、国民政策の安定向上に寄与することを目的としています。施策として、公的新品種育成の促進に必要な財政上の措置等を講ずるものとするほか、公的育成品種の有効かつ適正な利用の確保、公的育成品種の種苗の生産に係る技術を有する人材の育成に係る措置を講ずるよう努めるものとしています。

 衆議院法制局の説明に続き、徳永エリ参院議員から、「主要農作物種子法が廃止となった。同法廃止法案が衆議院から送られた参議院において、非常に重要な法案であることが与野党ともに認識された。附帯決議もつけ、反対討論も行った。主要農作物種子法に代わる法律が必要ではないか、対象をもっと広げなければならないということもあり、国民民主党と一緒に、シンプルな法案であるが、時間をかけて作った。当時は田名部匡代参院議員が農林水産部会長であった。自民党農林部会の幹部議員にこの法案を持ち込み、通してほしいとお願いしたが、当時は、三位一体の改革に逆行するとして受け入れてもらえなかった。現在、国会の状況がずいぶん変わった。種(たね)の法律が必要であることが改めて認識されている。今回は衆議院からこの法案を提出し、通したいと思っている。よろしくお願い申し上げたい」との発言がありました。

 次に、地域在来品種等の種苗の保存及び利用等の促進に関する法律案(ローカルフード法案)について、衆議院法制局より、経緯と概要について説明がありました。同法案は、川田龍平参院議員が中心となって取りまとめられたもので、公的新品種育成促進法案と同様、2024(令和6)年6月、第213回国会に立憲民主党と国民民主党の共同で、参議院に提出されたものです。今回、全く同じ内容の法案を衆議院に提出することを検討しているものです。

 同法案の目的は、地域在来品種等の種苗の保存及び利用等が、農業用植物の品種の多様性の確保及び地域の農業の振興を図る上で重要であることから、地域在来品種等の種苗の保存・利用、地域在来農産物・その加工品の利用の促進に関し、必要な事項を定め、施策を総合的・効果的に推進し、農業の持続的かつ健全な発展・農村その他の地域の活性化に資するとともに、食料の安定供給の確保・国民の豊かな食生活の実現に寄与するというものです。

 同法案は、基本理念を定め、農林水産大臣は基本方針を定め、都道府県・市町村は、計画を定めることができるとし、施策として、地域在来品種等の種苗の収集及び保存並びに提供等、技術の開発・普及、人材の育成・確保、連携の強化、農業者等に対する支援、国民の理解の関心の増進について規定し、農業者の意見を反映させるための措置を講ずることとしています。

 衆議院法制局の説明に続き、川田龍平参院議員から、「種苗法がカバーしている種は1割で、新品種のみ。在来品種、種の9割を守るための法律であり、種の基本法と考えている。当時、金子原二郎農林水産大臣からも応援したいとの答弁ももらっている。ジーンバンク、シードバンクが国の事業として行われているが、法律で規定されていないので、農水省としてもいい法律だと言っていただいている。当時、基金で運営されていた広島県農業ジーンバンクがなくなるかもしれないということで成立を急いだが、与党の反対にあい、通らなかった。これから働きかけ、この法案を通して、消えていってしまっている品種を何とか守りたいと思っている。衆議院から通していただきたい」との発言がありました。

 次に、食料供給困難事態対策法改正案について、衆議院法制局から説明がありました。同法案は、昨年の通常国会において、内閣が提出した食料供給困難事態対策法案の審議中に、食料供給困難事態において大臣の指示に従わなかった場合、刑事罰が設けられていることがクローズアップされ、立憲民主党及び有志の会の共同で、修正案を提出された経緯があります。修正案は成立しませんでしたが、今回、修正案と同じ内容の改正法案を提出したいというものです。

 内容としては、(1)食料供給困難事態において、主務大臣の指示に違反して、出荷販売業者、輸入業者、農林水産物生産業者等又は加工品等製造業者が計画を届け出なかったとき等の罰則は、刑事罰として20万円以下の罰金とされているところ、行政罰の20万円以下の過料に改めるもの、(2)備蓄に関する制度について法施行後3年を目途として検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする検討条項を追加するものです。

 以上3法案説明後に一括して質疑が行われ、ローカルフード法案に関し「大事な法案であり、ぜひ本国会で審議されるよう努めるべき」(小山展弘衆院議員)との意見がありました。

 食料供給困難事態対策法改正案については、「米の年間消費量700万トンに対し備蓄は100万トンしかない。これでは足りない。備蓄法の検討を早めに進めてはどうか」(川田龍平参院議員)との意見がありました。

 同法案において、主務大臣の指示に違反して計画を届け出なかった場合の罰則を刑事罰から行政罰に改めることとしたことについて、「昨年、農家に対して罰則を科すなんてとんでもないと、農家だけでなく一般の国民の方からも否定的な声が上がっていた。当時は、罰則規定を外すのは難しいということで、修正案では過料となった。罰則規定を外してしまうということもあるのではないか。行政罰に改めることとした理由は何か」(徳永エリ参院議員)との質問がありました。

 これに対し、金子部門長より、「修正案を作ったとき、コロナ対策法案で刑事罰を行政罰に修正したという成功事例があったことから、通る可能性が極めて高いということでこのようにさせていただいた。刑事罰を全てなくすというご意見がある一方で、刑事罰は問題で、農業者を犯罪者にしてしまうことはあってはならないが、ルールをなくしていくことはどうだろうかという意見が多く、このような形となった。今回、役員会の協議により、この修正案と同じ内容で改正案として出させていただいた。今日は法案登録であり、これから議論をしていく」との説明がありました。

 参加議員から、刑事罰を行政罰とすることに対して否定的な意見が出されましたが(福田昭夫衆院議員、川田龍平参院議員、小山展弘衆院議員)、3法案全て法案登録とすることについて了承されました。

■食品等流通法・卸売市場法改正案、漁業災害補償法改正案、森林経営管理法・森林法改正案についてヒアリング

 続いて、政府提出3法案について説明を聴取しました。

 まず、食品等流通法・卸売市場法改正案について、農林水産省より説明を聴取しました。同法案は、昨年改正された食料・農業・農村基本法において、食料の価格形成に当たり、食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう必要な施策を講ずること等が明記されたこと、食料の持続的な供給ができる食料システムの確立を図るため、持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した価格形成と、農業と食品産業の連携強化等食品産業の持続的な発展に向けた施策を一体として推進することが必要ということから、食品等事業者等による事業活動に関する計画の認定制度を設け、食品等の取引の適正化のための努力義務等を定めるものです。

 次に、漁業災害補償法改正案について、水産庁より説明を聴取しました。同法案は、海洋環境の変化等による漁業経営に不安定性の増加を踏まえた複合的な漁業や需要に応じた養殖生産に取り組む漁業者のニーズに対応し、複数の漁業種類をまとめて締結できる契約方式の創設や養殖共済の支払要件を緩和する特例の追加等の措置を講ずるものです。

 また、森林経営管理法・森林法改正案について、林野庁より説明を聴取しました。同法案は、森林経営管理制度について、森林の集積・集約化を進める新たな仕組みを創設し、市町村の事務負担を軽減するとともに、太陽光発電に係る不適正事案を背景とした林地開発許可制度の実効性の強化等の措置を講じようとするものです。

 漁業災害補償法改正案及び森林経営管理法・森林法改正案の概要については、2月7日の森林・林業・山村振興WT・農林水産部門合同会議において説明を聴取したところですが、今回は法律案の条文について説明を聴取しました。

 参加議員から、「食品等流通法及び卸売市場法改正案に、企業に農研機構による研究開発設備の供用等の措置を講ずるとされていることについて、農研機構の設備が限られている中、企業に利用させることにより、公的な研究機関として行わなければならない研究ができなくなるのではないか。どこまで供用するのか、規定を設けるべき」(川田龍平参院議員)との指摘がありました。