衆院本会議で3月13日「大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案」が審議入りし、青山大人議員が会派を代表して質問に立ちました。予定原稿は以下の通りです。

大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案

立憲民主党 青山大人

 立憲民主党の青山大人です。ただいま議題となりました「大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案」につきまして、会派を代表して質問致します。

 質問に先立ち、高額療養費の自己負担上限額の引上げ凍結について述べさせていただきます。衆議院で予算審議中、われわれ立憲民主党が修正提案した令和7年度(2025年度)の引上げ全額凍結に対し、石破政権は2度にわたり修正を表明したものの一部凍結にとどまり、衆院通過後に参議院予算委員会で与党議員から「参院選に跳ね返ってくる」との発言を受けて全面凍結に方針転換しました。
 選挙目当てではないですか。石破政権の対応が二転三転し、迷走しています。さらに福岡厚労大臣は昨日の厚労委員会で、がん患者らの負担額が、再検討により更に増える可能性を否定しない答弁をし、患者の方々の不安が高まっています。命に関わることなのに血も涙もないと言わざるを得ません。いったい誰のための政治なのでしょうか。
 さて、私たち立憲民主党は、党の綱領で、「人への投資を重視し、過度な自己責任論に陥らず、 公正な配分により格差を解消し、一人ひとりが幸福を実感できる社会を確立します。 私たちは、社会全体ですべての子どもの育ちを支援し、希望する人が安心して子どもを産み育てることができる社会をつくります」と明記しております。昨年の衆院選においても、家計の教育負担を減らし、子どもの貧困とその連鎖を防ぐこと、教育の無償化を公約で訴え、多くの議席を獲得するに至りました。
  今回の法改正は、わが党が目指す方向性に一部合致すること、政府が今年4月実施に向けて、制度設計をしており、対象となる生徒やご家庭もいますし、大学等学校側も制度が始まる前提で準備をしているため、真っ向から否定できない法案ではあります。しかしながら、極めて法改正の目的が不明確であり、中身を精査すればするほど中途半端な改正であると言わざるを得ません。
  多子世帯の大学無償化の話は、2023年末に「子ども未来戦略」の「加速化プラン」において実施される具体的な施策として突如浮上しました。そもそも多子世帯の大学授業料を無償化することで、少子化対策、出生率向上につながるのでしょうか。支援を多子世帯に限定したことによって日本国憲法第26条、その能力に応じて、ひとしく教育をうける権利を有すると明記されている、教育機会の公平性に反するのではないか疑問が残ります。そうした疑問を予測したかのように今回の法改正では、従来の法律の目的そのものが大きく書き換えられておリ、結果として、少子化対策としても教育政策としても中途半端な制度になってしまう恐れがあります。そこでまず、今回の改正が、石破政権が目指す少子化対策に具体的にどのように繋がるのか、石破政権が目指す少子化対策の具体的な目標を示しながら、答弁を求めます。
  政府は、「理想の子ども数を諦める理由として教育費負担が大きい」からと説明していますが、それは「3人目」だけでなく「2人目の壁」にも関係する問題です。 そもそも教育費とは大学入学までの長年の教育費を念頭に置いているご家庭が多数のはずであります。また大学は義務教育ではありません。にもかかわらず、大学無償化に焦点を当て対象を多子世帯に限定するのは、少子化対策として果たして合理性があるのでしょうか。
  今回の改正では、世帯年収600万円以下であっても、3人以上の子どもがいないと新たな支援の対象になりません。 しかし、子どもが1人・2人の家庭でも経済的負担が大きいのは変わらないのではないでしょうか。 政府は、今回の新たな制度で世帯年収600万円以下の授業料減免を、多子世帯では収入に関わらず減額・免除されるところ、同じように教育費の負担が大きいのにも関わらず、子どもが3人未満の世帯を支援から排除するのは不公平ではないか。政府の見解を伺います。

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 そもそも本改正案において、現行法から目的が大きく変更されていることに違和感を覚えます。現行法第一条では、法の目的に、「この法律は、真に支援が必要な低所得者世帯の者に対し、社会で自立し、及び活躍することができる豊かな人間性を備えた創造的な人材を育成するために必要な質の高い教育を実施する大学等における修学の支援を行い、その修学に係る経済的負担を軽減することにより、子どもを安心して生み、育てることができる環境の整備を図り、もってわが国における急速な少子化の進展への対処にすることを目的とする」と明記されています。それに対し、改正案では「多数の子等の教育費を負担している家庭」などの家庭における負担軽減への支援が強調され、「人材の育成」や「質の高い教育」といった文言が全て削除されてしまっています。政府は、今回の目的条文の変更によって、従来の法の趣旨を後退させる意図があるのか。 その意図を明確に説明してください。
  次に、本制度の扶養要件 について伺います。本制度では、扶養している子どもが3人以上であることが支援の条件 となっています。しかし、第一子が就職などで扶養を外れた瞬間に、下の子の支援も打ち切られる仕組みになっています。たとえば、3人兄弟の場合でも、第一子が高校を卒業して、大学進学を選択せず、就職し扶養から外れると、第二子が大学に進学しても無償化の対象外となる という問題があります。これは、兄弟間の公平性を著しく損なう制度ではありませんか。
  また、親がこの制度の恩恵をうけたいとして、第一子を子どもの意思に反して、大学へ進学させるといった不自然な選択を迫る可能性があることも問題です。本来、大学進学や就職は各個人の自由な選択であるべきですが、この政策によって、第一子の進路が左右されることになれば、子どもの人生の選択を歪めることにつながります。このような兄弟間で支援の有無という不公平があったり、子どもが進路を決める自由を奪ったりする制度は、日本国憲法第14条「法の下の平等」や憲法第13条「幸福追求権」に違反する可能性はないのでしょうか。政府の見解を伺います。さらに今後、この不要とも思える扶養要件を見直す考えはありますか。併せて伺います。
 さらに、本制度では、国内の大学・短期大学・高等専門学校のみが対象となり、海外の大学に進学する場合は支援を受けられません。 しかし、政府は「グローバル人材の育成」を掲げ、海外留学を推奨しています。それにもかかわらず、海外の大学への進学が支援の対象外となるのは矛盾ではないでしょうか。なぜ、海外大学への進学者が除外されるのか。国内大学と海外大学で扱いに差をつけることに合理的な理由があるのか、政府の説明を求めます。さらに今後、見直す考えはあるのか併せて伺います。
 子どもが2人以下の中間所得層へ支援を拡大できないのも、多子世帯においても、不要な扶養要件を設けざるを得ないのも、結局は財源の問題があるからではないでしょうか。法附則第4条において、財源は、消費税で確保するとされており、それ以外の財源の投入を認めておらず、逆にこれが足かせになっているとしか思えません。
 消費税以外の財源を認めていないとすれば、今後、子どもが2人以下の中間所得層へ支援を拡大する際、多子世帯においても兄弟間の不公平をなくすために不要な扶養要件を撤廃する際に、その財源を補うために消費税の税率を引き上げると思えてしまいます。給付型奨学金のさらなる拡充、多子世帯の大学無償化拡充を行うためにも、附則第4条を見直すべきと考えます。答弁を求めます。
 とはいえ、財源にも限界があります。制度を微調整しながら財源を逐次投入していくべきでしょうか。あくまで私個人の考えでありますが、より公平で柔軟な支援策として、同額の予算を投じるのであれば、現金給付を行う方がまだ合理的ではないでしょうか。具体的には、多子世帯に対して、第一子が高校卒業時に、大学無償化相当額(約400万円)を世帯に支給し、その使途を教育、住宅、生活費、留学など自由に活用できるようにするものです。こうすれば、子どもの大学進学の有無に関わらず家計への支援が可能であり、兄弟の年齢差による不公平も解消できます。第一子が海外の大学へ進学しても同額の支援をうけることができます。大学授業料減免か現金給付か世帯によって選択できるようにすることも一つだと思います。
 さて、日本学生支援機構の奨学金利用者の7割が返済に不安を感じ、4割が返済の負担感に苦しんでいます。奨学金の返済は貯蓄や日常生活、結婚、子育てなどの将来設計にも影響を与えています。奨学金の返済に関する相談も後を絶ちません。奨学金という名前ではありますが、結局は社会に出る前の若者に多額の借金を背負わせているのです。奨学金返済は若者の人生に、大きすぎるハンデをもたらします。やりたいことや夢を諦めざるを得なくなった若者もいます。今こそ、親の経済力にかかわらず、将来を担う子どもの学びを社会全体で支えるという理念をしっかりと確立するべきです。立憲民主党は、貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象にすること、返還免除制度を拡充すること、返済中の有利子奨学金の利子分を免除することを政策提案していますが、政府として検討・導入するつもりはありますか、答弁を求めます。
 ここまで、立憲民主党の具体的な提案と、本改正案の改善点について質問してきました。何度も申し上げますが、この改正案は一歩前進ではありますが、余りにも中途半端で不十分であることを指摘し私の質問を終わりにします。

【衆院本会議】「大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案」趣旨説明質疑原稿案 青山大人議員(2025年3月13日).pdf