衆院予算委員会で11月10日、予算の実施状況に関する基本的質疑2日目が行われ、立憲民主党から馬淵澄夫、大串博志、重徳和彦各衆院議員が質問に立ちました。

■馬淵澄夫議員

馬淵議員.JPG

 馬淵澄夫議員は、(1)衆院議員の定数削減(2)積極財政の意義(3)皇位継承――等について取り上げ、高市総理の見解をただしました。

 自民党と日本維新の会が合意した「衆院1割定数削減」をめぐっては、馬淵議員は「自民・維新以外の賛同がなければ法案を提出しないのか、両党合意だけで提出するのか」と質問。「合意書に書いてある内容以上のものは決まっていない」「与党間で協議を進めた上で各党各会派と議論を重ね、提出を目指して議論を深めていきたい」などと答える高市総理に、馬淵議員は「提出ありきだと受け止める」と述べました。

 馬淵議員はまた、自民党の鈴木俊一幹事長がテレビ番組で「臨時国会中に全会派の合意を得るのは難しい」と発言していることに「真っ当な論」だとした上で、一方で、日本維新の会の吉村代表は「高市総裁を信じている」と発言していることから、両党間の認識について尋ねましたが、高市総理は「認識のずれがあるとは考えていない。精一杯努力していく」と強弁しました。

 馬淵議員は、維新の吉村代表が「比例を削減すべき」と繰り返していることから、比例のみの削減を行えば「小選挙区と比例代表の議席配分を300対200(比率3対2)」とすることを基本とするいう、1990年の選挙制度審議会答申および1994年「政治改革に関する3党合意」での選挙制度の基盤が崩れ、少数政党の代表性が大きく損なわれると指摘。比例を1割削減すると、比例定数が175から129へ減少し、比率は「7対3」にまで歪むとして、「現行制度は少数政党も含めて議論し積み上げてきた歴史がある。比例削減ありきでは、制度の正統性を失う」と批判しました。「どのように削減するかは各党各会派で議論すべきこと」と述べる高市総理に対し、「残り1カ月でこのような政策が出てくるとは思えない。自維合意の提出のみで合意に足ると考えていることがうかがえる」と指摘しました。

■大串博志議員

大串議員.JPG

 大串博志議員は、(1)存立危機事態への言及(2)政治とカネの問題(3)防衛費増額の財源――などについて質問しました。

 大串議員は、7日の予算委員会の質疑で「台湾有事に関して、それが、戦艦を使ってそして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりえるケースでありえる」などとした高市総理の答弁を取り上げ、「国会で初めて総理が言及した事例になる。これまでの内閣は極めて慎重に判断して発言を慎んできた。撤回や取り消しをする気はないのか」と質問しました。高市総理は、「今後は慎む」とは答弁しましたが、撤回や取り消しへの言及はありませんでした。

 大串議員は、「撤回も取り消しもしないのであれば政府としての統一見解を出して欲しい」と求めました。

 政治とカネの問題について大串議員は「裏金議員について、自民党・高市政権では幹事長代行など党の要職、政府の中でも副大臣や政務官にも登用されている」と述べた上で、「裏金問題に関して、(自民党が)しっかりとした説明責任が果たされているとは感じていない」「国民の皆さんが物価高でこれだけ苦しんでいる中で、『自民党の国会議員は裏金でか』というふうに言われた案件だ。信頼回復には最善を尽くすべきだ」と厳しく述べました。そして、企業・団体献金の禁止は30年来の課題。全く進まないよりは一歩でも前に進んだ方がいいということで、「企業・団体献金の受け取り先を、党本部と県連に限定するという案も出てきている。自民党も一緒にやるべきだ」と高市総理に促しましたが、「政治資金の在り方については各党と議論をしていく」などとした答弁に留まりました。

 大串議員は「極めて後ろ向きで残念だ。政治への信頼を取り戻していくというのは喫緊の課題だ」とあらためて指摘しました。

■重徳和彦議員

DSC_5323 20251110_102702shigetoku.JPG

 重徳議員は、(1)ガソリン・軽油の暫定税率廃止に関する与野党6党合意の遵守(2)食品消費税0%実現――等について高市総理をただしました。

 暫定税率廃止について重徳議員は「少数与党というが、野党がバラバラのままでは多数野党ではない。今回、全ての野党が結束したことで、初めて野党提出法案を与党の合意も得て成就させるモデルケースとなった」と意義を強調したのに対し、高市総理も「野党各党の皆さまのご尽力で、また与党も加わっての議論で、最終的には少しでも早く国民の皆さまに安心してほしいという決断をみんながしたことに心から敬意を表する」と評価しました。

 暫定税率廃止による1.5兆円の財源について、重徳議員は「これまでデフレ下では『減税したら必ず増税で取り戻す』という税収中立の考えに縛られていた。しかし今はインフレで、5年間で17兆円も税収が増えている。いくらかはインフレ増収を安定財源とみなして活用する余地があるのではないか」との指摘に、片山財務大臣は「総理が掲げる責任ある積極財政の方針の下、おっしゃったことを含めて考えていくということは申し上げてもいい」と答弁、高市総理も「片山大臣には私の責任ある積極財政の考え方をよくよく指示しており、共有している」と述べました。さらに重徳議員は「この暫定税率については、他のところで増税で取り返すという発想を越えて検討すべきだ」と念押ししました。

 立憲民主党が10月31日に法案提出した「食品消費税0%」について、重徳議員は「最大2年間、10兆円の財源を無駄な基金の積み過ぎや政府剰余金などの一時財源で賄う。財源に責任を持った公約だ」と説明。「われわれは財源を明記する形で責任を持って、期間限定、食料品に限定の消費税0%を打ち出している」と強調、「総理は今年5月に『国の品格として食料品の消費税率は0%にすべき』と発言され、維新との連立合意にも『2年間に限り法制化を検討』とある。どのぐらいやる気があるのか。真意を伺いたい」と迫りました。

 高市総理は「総裁選挙の前に、多くの方々が物価高でお困りの中にあっては、飲食料品の消費税減税が必要ではないかという趣旨の発言を真剣にした。残念ながら自民党税調では合意を得られず、党の結論にも至らなかった」と振り返り、「自民党・維新の会の連立合意において『2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討を行う』とされており、現在も消費税率の引き下げについて、選択肢として排除はしていない」と明言しました。

 重徳議員の「2年間食品減税は維新と一致し、検討するとおっしゃる自民党とも一致する可能性がある。公明党も近い。主要政党がこれだけ揃えば実現可能な政策に結びつけられるのでは。協議の場を設けて議論する考えはないか」との提案に、高市総理は「これは政党間の話だ。自民党の小野寺税調会長と話をしてみる」と応じ、協議に前向きな姿勢を示しました。