くらし・いのちを守り、賃上げを加速する

緊急経済対策

2025(令和7)年11月14日

立憲民主党

<はじめに>

 ことし10月、およそ3000品目以上の食料品が値上がりになりました。国民のくらしの厳しさは、日増しに大きくなっています。さらには私たちの生活を支える医療施設、子どもたちの未来をつくる教育施設など、社会基盤となる全国の施設の経営はひっ迫し、事業の継続が困難にもなりつつあります。こうした社会の混迷の共通の原因には異次元のスピードで進む『物価高騰』にあり、過去10年以上にわたって続いた財政金融政策「アベノミクス」の失敗のしわ寄せは今、国民のくらしを直撃しています。

 また、加えて、全国ではクマの出没が相次いでおり、過去最悪の人的被害が発生しています。また過去に例がないような集中豪雨も頻発するなど、自然環境の大きな変化の中で国民生活が大きく脅かされる状況となっています。

 折しも、トランプ政権による新たな関税措置の影響が広がり、地域経済の見通しにも深い影を落としている中、今こそ政治の役割が大きく求められているにもかかわらず、政権を担う自民党は、総裁選挙という内輪の権力闘争に明け暮れ、国民生活の厳しさに目を向けず、3か月もの政治空白を作り出しました。国民生活の逼迫は一刻の猶予も許されない状況であることを踏まえれば、早期の補正予算の編成が不可欠であり、自民党の危機感の乏しさは誠に残念でなりません。

 立憲民主党は、政治の停滞を打ち破り、閉塞した経済状況を根本から転換するため、「くらし」「いのち」「賃上げ加速」を柱とする実効性ある経済対策をここに提起します。生活必需品である食料品の消費税ゼロ%こそ、国民の期待に応える本気の物価高対策であり、つなぎ支援を含め、本対策の第一に掲げ、物価高対策に本気で取り組もうという熱量を感じない高市政権に対峙します。そして、緊急度に応じ、可能な限り早く実行する即効性のある措置に重点を置き、財源の確保にあたっては、無責任なバラマキに陥らず、歳出改革、税外収入の活用、税収の上振れなどを的確に見極め、『責任ある財政運営』を堅持します。

 的確な経済対策と堅実な財政、その両立が市場の信認に応える道でもあり、国民のくらしに寄り添い、地域を支え、働く人の手に希望を取り戻す新しい経済の道筋をここに明らかにします。

1.「くらし」を守る .兆円

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〇食料品消費税ゼロ

 ・・・ 令和8年10月1日から飲食料品にかかる消費税率を時限的にゼロ%に

〇「物価高・食卓緊急支援金」
 ・・・ 食料品消費税ゼロ実施までのつなぎ措置として実施

対象者 : 中低所得者世帯1人当たり3万円

+子ども1人当たり2万円(所得制限無し) を給付

〇地域の実情に応じた生活支援(「重点支援地方交付金」の拡充)

 ・・・ 灯油・LPガス等の価格高騰による負担の軽減、最低賃金引上げに対応した中小企業等への支援など、地域の実情に応じて、来年度実施分も視野に、 地方公共団体が行う物価高対策・生活支援対策を財政的に支援

   具体的には、政府の掲げる「推奨事業メニュー」に

「幼児教育・保育への支援」

「児童扶養手当・障害福祉手当の拡充」

「学生・低所得者世帯・子育て世帯・高齢者世帯への家賃補助」

などを加え、メニューの拡充を図る

〇ガソリン・軽油の暫定税率廃止、関連支援策の実施

 ・・・ ガソリン・軽油の暫定税率廃止による1.5兆円の減税(財源は別途措置)、

ガソリンスタンドに対するタンク修繕補助金等の支給、

当分の間、重油・灯油・航空機燃料への補助金を継続

〇住宅の長寿命化・省エネ化支援

 ・・・ 住宅の断熱改修・省エネ化を進め、家計における光熱費負担を軽減

〇農業など一次産業における生産コスト高騰対策

 ・・・ 畜産用の配合飼料・乳用牛飼料、農業用肥料・燃油の高騰分等の補償金支給

〇介護休業中の賃金補償の拡充

 ・・・ 介護休業中の賃金補償水準を実質100%に拡充


2.「いのち」を守る .兆円

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〇経営困難な医療機関、介護・障がい福祉施設等に対する支援

 ・・・ 公立・公的、国立大学病院、民間など病院に対する支援(病床単位)、同様に診療所に対する支援(レセプト単位)、医療機関従事者の処遇改善(月額1万円)、訪問看護ステーションに対する支援(施設単位)、全ての介護・障がい福祉施設に対する支援(施設単位)、介護・障がい福祉事業所の職員の処遇改善(月額1.5万円)

〇訪問介護の緊急支援

 ・・・ 令和6年度基本報酬切り下げ分の回復・上積み

〇障がい児童福祉に係る所得制限撤廃

 ・・・ 特別児童扶養手当、障害児福祉手当などの所得制限撤廃

〇公立学校老朽化対策、学校設備対策

 ・・・ 公立高校学校老朽化対策、公立小中学校の老朽化対策・バリアフリー化、

体育館等への空調等整備

〇いのちを守る、くらしを支えるNPOに対する支援

 ・・・ 自死防止、低所得者や困難を抱える人々への支援などを行うNPOを財政支援

〇職場の安全・熱中症・寒さ対策

 ・・・ 熱中症の危険度を示すWBGT計、防寒着、休憩室などを整備

〇クマ被害対策の強化・拡充

 ・・・ クマ捕獲活動費拡充、ガバメントハンターの人材確保・育成支援、通学の安全確保等


3.「賃上げ」を加速する .兆円

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〇トランプ関税の影響を直接的・間接的に受ける中小企業の資金繰り支援

 ・・・ セーフティネット保証の活用

〇中小企業等の価格転嫁等の適切な実施を進めるための予算措置

 ・・・ 公正取引委員会、「優越Gメン」等の拡充・強化

〇中小企業が負担をする社会保険料の軽減

 ・・・ 新たに雇い入れた正規社員に係る社会保険料の事業主分を軽減

〇インボイス制度に係る中小企業の負担軽減措置の継続

 ・・・ インボイス制度廃止を前提としつつ、

それまでの間、インボイスに係る「2割特例・8割控除」等の負担軽減措置を継続

〇保育士等の処遇改善

 ・・・ 保育士・幼稚園教員・学童保育指導員・児童養護施設職員等の処遇改善(月額1.5万円)

〇医療機関従事者、介護・障がい福祉従事者等の処遇改善

 ・・・ 医療機関従事者の処遇改善(月額1万円) *再掲

介護・障がい福祉事業所の職員の処遇改善(月額1.5万円) *再掲

〇「130万円のガケ」対策

 ・・・ 年収が130万円を超えた際に発生する社会保険料によって手取りが減少する「130万円のガケ」を給付金で補填し、手取りが減らないようにすることで、「就業調整(働き控え)」を解消

〇緊要で効果的な国内投資の推進

 ・・・ 電動車への買替支援・充電設備の普及支援、

ペロブスカイト太陽電池の普及支援、系統整備、蓄電池開発・普及支援等

〇大学研究力強化によるイノベーション促進

 ・・・ 物価高騰に対応するため、国立大学運営費交付金、私立大学等助成金、科研費の増額等

〇奨学金返済負担軽減

 ・・・ 従業員の奨学金の代理返還を行っている中小企業に補助金支給

〇大阪万博・未払いパビリオン問題のための緊急金融支援等

 ・・・ 日本政策金融公庫の「セーフティネット保証」の対象に指定

 

総額 : .兆円

<財源について>

 くらし・いのちを守り、賃上げを加速するために十分な政策を実行しつつ、金利上昇や財政によるインフレ加速を生じさせないよう、経済対策の規模は約8.9兆円とする。ただし、ガソリン・軽油の暫定税率廃止の財源は、与野党合意に則り、 別途確保するため、本経済対策の実施に必要な財源は7.4兆円程度となる。

 これについては、政府・与党が見込む今年度税収の上振れ、外為特会剰余金、 政府自身が定めたルールを逸脱した基金の積み過ぎ分などを活用することで、 赤字国債を発行せずに「財政規律ある経済対策」を実現する。 

以 上

【立憲民主党】 「くらし・いのちを守り、賃上げを加速する緊急経済対策」.pdf